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トム・クルーズ、配送業者のフリをして街の酒屋に荷物を届けたが誰にも気づかれなかった

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稀代の映画スター、トム・クルーズ出演作は数多いが、『コラテラル』(2004)は渋くて魅力ある映画だ。『ヒート』(1995)のマイケル・マン監督が手がけたハードボイルド的な作品で、トム・クルーズが初めて本格的な悪人の役を演じているということで話題を集めた。

物語の舞台は夜のロサンゼルス。主人公はジェイミー・フォックス演じるうだつの上がらないタクシードライバーのマックス。『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)で彼が演じた役と同名でキャラも似ているのは偶然だ。

マックスは、いつか独立して自分のビジネスをやるんだという夢だけは立派だが、「いつか、やる」とばかり言って、結局いつまで経っても平凡な日常を抜け出せない。ただこのドライバー、運転の腕は確かで、複雑なロサンゼルスの抜け道も完全に頭の中に入っている。

そこに乗客として乗り込んだのが、トム・クルーズが演じるヴィンセント。シルバーヘアにグレーのスーツを着込んだこのビジネスマン風の男は、クールで人当たりもいい。生真面目なマックスを面白がって、とある“賭けごと”を持ちかける。ついに断りきれなかったマックスだが、これが彼の悲劇の一夜の始まりとなる。ヴィンセントの正体はプロの殺し屋で、これから彼は殺しの現場に次々と同行させられることになるのだ!

冷酷無残な殺し屋ヴィンセントを演じるにあたって、トム・クルーズは格闘や武器の訓練をこなしているが、役作りはそれだけではなかった。日常に溶け込み、標的に気づかれることなく接近する熟練の殺し屋としての空気感を身に纏えるようになるため、撮影の助監督を尾行していたのだという。マイケル・マン監督が英Empireにて新たに語っている。

話によれば、クルーズは助監督が週に3回朝のジムに通い、7時半には現場に来るという行動パターンを掴み、尾行していたという。助監督が現場に通う際は「入口は一方通行で、出口が3つある」という「スパイ活動には格好の」駐車場に車を停めるため、クルーズも後をつけやすかったのだそうだ。

またある時には、クルーズが変装してロサンゼルスのダウンタウンにある酒屋に配達仕事をこなすこともあったという。彼はFedEx(アメリカで最も有名な配送業者)の帽子を被り、酒屋で3人と会話したのだが、誰も配送業者の正体があのトム・クルーズだとは気付かなかったというのだ。

こうして培われたクルーズの空気感は、映画『コラテラル』で存分に味わうことができる。『ミッション:インポッシブル』や『トップガン』でのクールな印象とは全く異なる、闇に溶け込んだ怪しい雰囲気は、舞台裏での地道な実地訓練の賜物だろう。

ところでトム・クルーズ、どうやら映画スターとしてのオーラの出力を自在に調整できるらしい。『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023)の撮影時には、野球帽を被って通勤ラッシュ時のロンドンの地下鉄に乗っていても、大人たちは誰にも彼に気づかなかったという。

Source:Empire(via )

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