「星座になれたら」での“ボトルネック奏法”の再現も! 『ぼっち・ざ・ろっく!』結束バンド TOUR “We will B”ライブレポート|キャスト4人による演奏、そして“さらなるサプライズ”に会場が揺れる
2022年にTVアニメが放送され、昨年、劇場総集編が前後編で公開された『ぼっち・ざ・ろっく!』。
劇中に登場する後藤ひとり(CV:青山吉能)、伊地知虹夏(CV:鈴代紗弓)、山田リョウ(CV:水野朔)、喜多郁代(CV:長谷川育美)による「結束バンド」は、リアルバンドとしても大活躍。昨年も大型フェスへの出演や、「結束バンド ZEPP TOUR 2024 “We will”」(2024.09.08〜12.22)の開催などで大きな話題を呼びました。
そのツアーの追加公演となる「結束バンド TOUR “We will B”」を、2025年2月15日(土)に武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナで開催。これまでの集大成とも言える熱いパフォーマンスの連続、そしてアンコールでのサプライズで、観客を魅了しました。
本稿では、そんな大きな盛り上がりを見せた、結束バンド初のアリーナ単独公演の模様をお届けします。
【写真】『ぼっち・ざ・ろっく!』結束バンドによる演奏、“さらなるサプライズ”に会場が揺れる
ファンの大歓声を受け、序盤からエンジン全開
2022年の10月、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の放送がスタートすると、瞬く間にアニメファンを虜にし、人気アニメとなった。劇中で流れた楽曲もアニメを飛び越え、多くのロックファンを巻き込み、大きなうねりとなっていく。
劇中に登場する「結束バンド」は、リアルバンドとして2023年の5月に初のワンマンライブを行い、その後も活躍の場をどんどん広げ、「JAPAN JAM 2024」「ROCK IN JAPAN FES. 2024」といったロックフェスへの出演も果たす。下北沢のとあるライブハウスを舞台にしたアニメが、短期間でここまでのロック旋風を巻き起こすとは、誰も予想していなかったことだろう。
結束バンドのライブは、バックバンドに、キャストがボーカルを担当するという編成で行われている。そのバンドメンバーは、結束バンドの音源のレコーディングメンバーである、三井律郎(Gt)、比田井 修(Dr)、高間有一(Ba)、akkin(Gt)がベースとなる。そしてバンマスを務める三井は、結束バンドの楽曲の大半をアレンジしているギタリストで、もはや「後藤ひとりのギターはこの人!」とも言える存在になっている。
昨年は6月と8月に、『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』と『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』が公開され、9月からは全国5都市を回る「結束バンド ZEPP TOUR 2024 “We will”」が開催された。そのツアーの東京公演で発表されたのが、今回の追加公演「結束バンド TOUR “We will B”」だ。会場となる武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナは、ワンマンライブとしては最大規模。配信やライブビューイングもあったので、より多くの人が結束バンドのライブを目撃することができたはずだ。
会場に入ると、「ROCK IN JAPAN FES. 2024」の景色を思い出すかのような人の数。花道や大きな通路がないので、人で埋め尽くされているような印象だ。そんな会場で流れていたのは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやフジファブリック、きのこ帝国、Saucy Dog、ACIDMAN、the pillowsなどのロックミュージック。これが最高に気分を上げてくれた。その最後にクイーンの「We Will Rock You」が流れると、バンドメンバーがステージに登場する。
そして、おもむろに演奏し始めたのは、アニメ第1話のアバンで流れていた劇伴楽曲(「私なんか」)。大きなステージの背後に広がる、巨大なLEDスクリーンには、アニメでの印象的なシーンが流れていく。その最後に三井がテクニカルなギターソロを披露、弾き終わると同時に、ライブロゴがスクリーンにドンと表示され、観客が一気に沸いた。
そのまま、TVアニメのオープニングテーマ「青春コンプレックス」のイントロが流れると、ステージに登場した長谷川育美(喜多郁代役)が、その真っすぐな歌声を轟かせる。観客の大歓声、そして〈かき鳴らせ〉の大合唱に、長谷川のボーカルの熱量も一層高くなる。お立ち台に立ってのロングトーンも完璧に決め、曲の最後に打ち上がった花火とともに「結束バンドです」と挨拶すると、続く「ギターと孤独と蒼い惑星」では、炎が立ち上がる中、エモーショナルなボーカルをぶちかましていく。観客のものすごい熱気に押されて、オーバーペース気味に入ったと思うのだが、そこは結束バンドとして、何度もライブを乗り越え、経験値が爆上がりしていることが感じられた。ファンの歓声に圧倒されずに、逆に圧倒し返すボーカリストとしての凄みがあった。
「ひとりぼっち東京」は、天井から地面へと真っ直ぐに伸びる光の柱がいくつもあって、アリーナならではの照明のスケールの大きさを感じる。それにしても、最初の3曲で、これでもかというほど、結束バンドの演奏力の高さと安定感を見せつけられた。ハコが大きくなっても、音の分厚さや迫力、ロックバンド感は何ら変わらなかった。
トリッキーな変拍子のイントロが鳴り響くと、ボーカルが入れ替わり、ステージの真ん中に水野朔(山田リョウ役)が登場する。「カラカラ」は出だしから難解な曲なのだが、爆音が鳴り響く中、どんどんエモーショナルになっていくボーカルがたまらない。
「“We will B”へようこそ! 下北沢から来ました結束バンドです」と挨拶をし、このステージに立てた喜びや感謝を伝える。「ベース・高間有一!」という水野の言葉から、高間の凄まじいベースが轟くと、そこから音が重なり、「惑う星」へ。ベースが活躍する楽曲なので、当然のようにベースソロがカッコ良かったし、ヘヴィで激しいサウンドの中で、キャッチーなサビのメロディが胸に響いた。
「星座になれたら」では、劇中の“ボトルネック奏法”の再現も
下北沢の景色を映す幕間映像が流れ、長谷川が水野から再びバトンを受け取ると、軽快なロックナンバー「Distortion!!」へ。明快なボーカルが、轟音を突き抜けて聴こえてくるのが心地よい。
MCで、1曲目からかかりすぎてしまったので、落ち着かなきゃと思っていたと正直に打ち明ける長谷川。アリーナなので演出や映像を楽しんでほしいと告げると、「僕と三原色」では、シャボン玉演出で爽やかな歌声を響かせ、「milky way」では星空をスクリーンいっぱいに映し出し、ロマンチックに歌っていく。曲のラストのロングトーンと三井のタッピング奏法の絡みも絶妙だった。
続いて登場した青山吉能(後藤ひとり役)は、後藤ひとりとしては、初のオリジナル歌唱曲となる「夢を束ねて」をしっとりと歌っていく。バラードだが歌い上げずに、言葉を押し出して、ぽつぽつと歌う感じが“ひとりっぽかった”し、切ないギターソロも、スクリーンに映し出された茜空に合っていた。
再び長谷川が登場し、切ない空気を引き継いだまま「秒針少女」を歌う。akkinのアコギを始め、4人の楽器が奏でる音色と長谷川の歌声が美しく、光とスモークによる幻想的な演出も感動を誘う。
静寂を引き裂き、「あのバンド」のギターソロが炸裂すると、会場が一気に熱狂に包まれる。レコーディングメンバーだけに、「アニメで聴いたあの音だ!」という感動がすごかったし、長谷川も、ギアを一気に上げてロックを叩きつける。アウトロのバンドの演奏も、本当に“結束バンドみ”があった。
さらに『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』のオープニングテーマ「ドッペルゲンガー」を投下し、会場のボルテージを上げていく。
熱狂冷めやらぬ中、比田井のドラムを合図に、元気に登場した鈴代紗弓(伊地知虹夏役)が「なにが悪い」を披露。彼女の笑顔と陽な声色は、いつだって観客を笑顔にしてきたし、サビで手を左右に振るところは、いつもより大きな一体感が生まれていた。
MCでは「1クールのアニメが、こんなことになるなんて思っていなかった」と、会場に集まった多くの観客を見渡しながら話す。そして、コール&レスポンスでテンションを高めていき、「行くぞ! 武蔵野!」と叫んで、「UNITE」を熱唱。わかりやすくメロコア全開の曲なので、拳を突き上げ、パンキッシュな歌をぶつけると、長谷川にバトンタッチする。
青春ロック「忘れてやらない」を歌い始めると、TVアニメ最終話の秀華祭のターンへ突入する。疾走感のあるギターやバンドの一体感を感じるアレンジで、長谷川も笑顔で楽しそうに歌い切ると、続く「星座になれたら」は、アニメの印象的なシーンを映し出しながら、ちょっぴり切なく歌いつつ、サビでは手を左右に振って、観客の気持ちをひとつにする。
この曲のギターソロは、弦が切れて動揺するひとりを見て、喜多がギターソロをつなぎ、復活したひとりが瓶をスライドバーにし、ボトルネック奏法を決める名シーンがある。それを、akkinと三井で再現すると大きな歓声が上がる。これは作品ライブならではの反応だろう。ファンが期待していることをしっかりやってくれる結束バンドの素晴らしさ、楽曲の難易度の高さを微塵も感じさせず、さらっと演奏してしまうメンバーのカッコよさが特に感じられた2曲だった。
「あっという間に、16曲も披露させていただきました」と言って、アリーナの景色を見せてくれたことを感謝する長谷川。結束バンドの活動を振り返り、「1歩1歩地道に歩いてきたというよりかは、飛び級に近い感じがしていて。すべてのことがわからないことだらけだったから、なんとかならないときもあったりして、自分の力不足だったり、この作品のためになれているのかな?と考えることがあった」と吐露する。
そして「本来はこんなところに立てるような人間ではないと思っているんですけど、そんな私でも自分は特別な人間だと思っていたときがありました。でも、そうでなかったことにも気づいて……。ただ、諦められずにいたら、運良く、こんな奇跡のような出会いに恵まれて、応援してくださる皆様に出会えて、それでやっとここに立つことができたので、皆さんいなくならないでね!」と伝え、最後の曲『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』オープニングテーマ「月並みに輝け」へと繋げる。
独りでギターテクニックを磨き続けていたひとりが、1人ではどうしても殻を破れなくて、人前でギターを演奏することもできなかった……。でもバンドを夢見続けて、ギターを担いで登校していたら、偶然にも最高の仲間と出会い、少しずつ、その天才性を発揮できるようになる。アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』で描かれたことが歌詞に凝縮されている1曲を、長谷川が共感も込めながら前向きに歌い切り、感動的にライブ本編を終えた。
キャスト4人による演奏、そして“さらなるサプライズ”に会場が揺れる
楽器の残響が消えていくと、「BTR!(BOCCHI THE ROCK!)」コールと大きな拍手が巻き起こる。そして登場したのは、黒いレスポールを手にした青山吉能とバンドメンバー。イントロが鳴り響くと、すぐに「Re:Re:」と理解した観客の、ものすごい歓声が会場を揺らす。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのぶち上がる名曲のカバーで観客を踊らせると、「皆さん、ここまで連れてきてくれて、私をギターヒーローにしてくれてありがとう! 心を込めて歌わせていただきます」と伝えて、TVアニメの最終話に流れた「転がる岩、君に朝が降る」を5人で演奏する。アニメの最終話で流れた映像や、実際の街の景色などをバックに演奏していたこともあり、アニメを思い出してグッとくる観客も多かったはずだ。青山もしっかり最後のギターソロを決め、ギタリストとしての成長もちゃんと見せつけて、1度目のアンコールを終える。
暗転し、2度目の「BTR!」コールが起こりしばらくすると、ロッカールームにいるキャスト4人の映像が映し出される。4人で円陣を組み、ステージに向かう、無音の映像。この時点で何かを察した観客もいただろう。ステージ前でもう一度円陣を組み、鈴代の掛け声でそのまま登場し、4人が楽器を手にする。どよめく会場と、スクリーンに映し出された結束バンドのロゴ。そして鈴代のカウントから「フラッシュバッカー」を演奏していく。努力の成果が感じられる最高の演奏に心を揺さぶられる。
途中、楽器をかき鳴らすところでは、4人が顔を見合わせながら、笑顔になっていたのもとても印象的だった。曲が終わり「結束バンドです!」と青山が叫ぶと、重圧から解き放たれたのか、そのまま涙を流してしまう。すぐに寄り添う3人に、結束バンドの結束力の強さを感じる。「この日のために、1年以上練習してきました!」と青山が言うと、「最高でした」(鈴代)、「一生の思い出です」(水野)、「本当に楽しかった」(長谷川)と続ける。最後に青山が「またやろう!」と言うと、観客も大きな拍手で応えた。
そんな大きなサプライズのあとに、もう一つ、さらなるサプライズが用意されていた。アニメの映像と下北沢の景色がスクリーンに映し出される。そしてライブハウスにある出演アーティストを書くボードに記された「We will Be back!」の文字。その後、「ぼっち・ざ・ろっく! 2期制作決定」と発表されると、会場からはこの日一番の歓声が上がる。
これだけの人気になりながら、どこか2期はないのかもしれないと思わせていただけに、その衝撃も大きかったのだが、合わせて、監督が斎藤圭一郎から、1期で副監督を務めていた山本ゆうすけに引き継がれることも発表された。会場でコメントの代読もされたが、なぜ変更になったかは、ぜひラジオ(【緊急】「ぼっち・ざ・らじお!」【特別編】)を聞いてほしい。愛ゆえの決断であったことが感じられるはずだ。
そして新たにメインキャラクターデザインとなる、小田景門からの2期制作決定のイラストも公開。「これからも結束バンド、そして『ぼっち・ざ・ろっく!』についてきてください!」と青山が言い放つと、「会場全員、行くぞ!」と長谷川が煽り、『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』のエンディングテーマ「今、僕、アンダーグラウンドから」、最後は「みんなの気持ち全部ぶつけてきてください!」と伝えて「光の中へ」を歌う。曲の終盤は音源同様、水野、鈴代、青山がコーラスで曲に加わり、結束バンドの“8人”で、初のアリーナ公演を締めくくった。
これまでの集大成とも言えるライブを最高の形で見せてくれた結束バンド。アニメの映像、下北沢の風景、さまざまな特効、ライティング……アリーナのスケールを活かした演出で、作品の素晴らしさを表現してくれた「結束バンド TOUR “We will B”」。今年のフェスへの出演もすでに決まっているが、さらにその先も『ぼっち・ざ・ろっく!』と結束バンドが続いていくことを約束してくれたのが何よりも尊い。そんなことを、最後にスクリーンに映し出された「We will Be back!」の文字を見ながら感じた。
[文・塚越淳一]