生き物の造形に触れて 東広島市立美術館で特別展「冨田伊織 新世界『透明標本』展」 作家・冨田伊織さんが500点展示
特別展「冨田伊織 新世界『透明標本』展」が東広島市立美術館(同市西条栄町、松田弘館長)で7月10日から始まった。(文・撮影 猪上)
透明骨格標本とは、タンパク質を酵素で分解して肉質を透明化、硬骨を赤紫、軟骨を青に染色する骨格研究の手法をもとにした標本。冨田さんはこれまでに5ミリほどのメジナの子どもから20~30センチ程度のネコザメの標本を作製。透明感があり、鮮やかに染色できるよう標本作りを行っている。
ライトアップし幻想的な空間へ
会場では、魚類を中心に約500点の透明骨格標本を展示。学術的に解説したパネル付きの標本展示エリアや、標本をライトアップし幻想的な映像演出によるアートエリアがあり、終盤には、音・映像・光の共演が織りなす約4分間の「ライティングショー」を展開。
多彩な光に照らされた標本が神秘的な音楽とともに浮かび上がる展示手法に、来館者の一人は「生き物の体の構造が目に見てよく分かり、生物の触覚なども染まっていて面白く、印象的だった」と話していた。
さらに、今回はタッチパネルを使ってライティングを操作する体験型の「光ラボ」が登場。同展示会、東広島市立美術館でも「光ラボ」は初の試み。光ラボを体験した来館者の一人は「(標本が)いろんな色に染まって面白い」と話していた。
7月10日に行われた開会式で、冨田さんは「標本の上からと横から鑑賞がおすすめ。多くの人に生き物の造形を感じていただき、生き物ってすごいと思っていただけるとうれしい」と目を細めていた。
冨田さんは、北里大学在学中に研究用の透明骨格標本に魅了され、制作を開始。卒業後も仕事をしながら作品制作を続け、2008年から透明標本作家としての活動を本格化させた。これまでで印象に残っている標本は、腹にカエルが残ったままだったヘビの標本。「標本を通じて生き物の生きざまに衝撃を受けた」と話していた。
展示会情報
会期は10月5日まで。開館時間は9時~17時。月曜日休館(月曜日が祝休日の場合は翌平日)。観覧料は一般1000円、大学生700円、高校生以下無料。同館ロビーでは冨田さんが手がける透明骨格標本グッズも販売。
特別展に合わせ、7月27日には、スティーンパンコンサート、8月9日には広島大学両生類研究センターの田澤一朗助教授による講演会を同美術館で開催。東広島芸術文化ホールくららやゆめタウン東広島店など全7カ所でサテライト展示を実施される。
プレスネット編集部