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【静岡音楽館AOIの第28回「静岡の名手たち」】 衝撃波、つむじ風、格闘

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は9月14日に静岡市葵区の静岡音楽館AOIで開かれた第28回「静岡の名手たち オーディション合格者によるコンサート」から。
1995年の静岡音楽館AOI開館時から行われる、新進音楽家発掘を目的としたオーディションとコンサートの企画「静岡の名手たち」。今年は邦楽、鍵盤楽器、管楽器の3部門から7組が出演した。個人的に印象に残った3組を挙げる。

鈴木紀惠子さん、三浦円香さんの十七絃箏二重奏による沢井忠夫作曲「めぐりめぐる」は心地良い「衝撃波」を食らった気分だった。伴奏と主旋律を巧みに入れ替えながらのアンサンブルで、しばしば弦を打楽器のようにたたく場面があり、切れのいいミュートが楽曲をエッジーに仕上げていた。一番低い音の弦を「バチン」とはじく奏法には驚かされた。

鈴木香帆さんのピアノは一陣の「つむじ風」のようだった。確かな技巧を凝らしたショパンのワルツで客席を手中に収めた後に、アーロン・コープランド作曲「滑稽なスケルツォ(猫とねずみ)」。先の読めない不協和音と、テンポ変更が満載の曲。かなりの難曲だが、とっちらかったように聴こえない。中学生とは思えない構成力を感じた。

藤井駿さんのアルトサックスは、川岸麻理さんの伴奏で。吉松隆作曲「ファジーバード・ソナタ」はクラシック、ジャズ、現代音楽などさまざまな要素が織り込まれた楽曲で、藤井さんの演奏は「格闘」という言葉が似合うスリリングなものだった。一つの楽器から出ているとは思えないほど、バリエーション豊かな音が聞こえた。楽章が進むにつれ、管楽器の音というより「管を通じた声」とも言うべき音に変化していくのも興味深かった。(は)

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