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「関東1都6県で二拠点LIFE!」山里のカフェ&プライベートキャンプ場。週末起業が導いた家族との心地よい距離感【東京都練馬区⇔埼玉県秩父市】

田舎暮らしの本

「関東1都6県で二拠点LIFE!」山里のカフェ&プライベートキャンプ場。週末起業が導いた家族との心地よい距離感【東京都練馬区⇔埼玉県秩父市】

観光客でにぎわう秩父の街中を離れ、小さな峠を越えた山里に、土日のみ営業するカフェとプライベートキャンプ場がある。起業&二拠点居住を実現したオーナーの今山さんは、週末になるとこの地に通い、夫や子ども、そして実家の両親との程よい関係を構築している。

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掲載:2025年1月号

埼玉県秩父市 ちちぶし 
埼玉県北西部の山間に位置し、秩父夜祭や芝桜で有名な観光地。都内からのアクセスもよく、行楽シーズンは多くの行楽客や登山者でにぎわう。人口は約6万人。関越自動車道花園IC経由で練馬から約2時間。西武鉄道の特急ラビューで池袋駅から西武秩父駅まで約80分。

家族や友人に囲まれた東京と自然あふれる秩父での暮らし

今山実穂さん
秩父市の山里にカフェ「Yotte KEiNA」とキャンプ場「Nete KEiNA」の複合施設「KEiNA CHICHIBU」を開業。カフェの営業は毎週土・日曜の11:30~15:00。キャンプ場は1日1組限定。カフェの建物は一級建築士の夫、貴之さんと2人で設計。「地元の人たちとのつながりを大切にしたい」との思いから、建築の施工は秩父の工務店に依頼した。

 秩父出身の今山実穂さんが、カフェとプライベートキャンプ場の複合施設「KEiNA CHICHIBU(ケイナチチブ)」を開いたのは、2022年春のこと。

 高校卒業と同時に東京の大学に進学し、卒業後は国家公務員として忙しい日々を送っていた実穂さん。その後、夫の貴之さんと結婚し、娘の紗綾さんが生まれる。

 「娘が保育園に入れなかったことがきっかけで退職し、そこから自分の生き方や働き方を模索する日々が始まりました」

 そんなある日、両親から先祖伝来の農地の管理に困っていると話を聞き、「秩父の畑を有効活用しつつ、東京で家族と生活する二拠点居住をしよう」とひらめいた。

 もともと料理とキャンプが趣味だった実穂さんは、「自家栽培の無農薬野菜が食べられるカフェ」と「収穫体験ができるプライベートキャンプ場」を開業することを目標に定めた。

 「両親は『やりたいようにやってみろ』と応援してくれましたが、夫は半信半疑でした。飲食業の経験がまったくなかったので当然ですね」

 しかし、渋谷のハンバーガーショップで修業を始め、運転免許も取得するなど、その本気度が夫にも伝わり、全面協力を得られることに。カフェやキャンプ場の建物は、一級建築士である貴之さんが設計を担当し、地元の工務店に躯体工事を依頼。内装は可能な限り、家族でセルフビルドした。

内装やテーブルなどは家族でDIY。木材が多用された店内は、森の中にいるような心地よい空間。

コーヒーには峠を1つ越えた隣町・小鹿野(おがの)の「毘沙門水(びしゃもんすい)」を使う。こだわりの銘水で淹れたコーヒーは苦味と酸味のバランスが絶妙。

山の緑に囲まれた気分のよいキャンプサイト。区画分けして貸すことも可能な広さだが1日1組限定がこだわり。「友達とグルキャンを楽しんでほしいです」。

 キャンプ場は完全予約制、カフェは土日のみの営業で、毎週金曜日に秩父に来て調理と接客を行い、日曜の夜には家族の待つ東京に戻る日々。

 「家族も最初は手伝ってくれていましたが、夫は本業で忙しく、娘も予定があるので、今は来られないことが多いんです」と笑う実穂さんだが、その距離感がちょうどよいそうだ。

 「家族や友人に囲まれた東京での生活と、自然のなかで働く秩父での時間。二拠点だからこそ、いいとこ取りができるんです。それに、両親に老後の張り合いを提供できたのもうれしい」

 広大な畑を持て余していた父の操さんと母のとみ代さんも、今はキャンプ場の維持管理や、食事で提供する野菜の栽培、農業体験の参加者対応に忙しい日々を送る。

 「農業体験会の先生役は母や近所の人たちが楽しんでやってくれています」と語る実穂さん。体験会には多くの応募があり、秩父で暮らしたい人や農業を学びたい人にとって貴重な機会となっている。

 「秩父も人口減少が進んでいますが、これから秩父で暮らしたい人や農業を目指す人たちの助けになれればうれしいですね」

カフェの一番人気は、江古田で修業した絶品ハンバーガーと、穫れたて無農薬野菜のサラダを盛り込んだハンバーガープレート。

ウッディな内側とは対照的にシャープな見た目の「KEiNA CHICHIBU」の外観。トンネルのような入り口をくぐった先は緑あふれる空間。

先祖から伝わる畑で父の操さんと母のとみ代さんと。「両親にはカフェで出す野菜の栽培を助けてもらうだけでなく、収穫体験会では講師もやってもらっています」。

今山さんの二拠点LIFE!

◆滞在頻度と滞在期間
毎週金曜日に来て、金・土・日曜と働き日曜の夜に東京へ戻る。「娘が大きくなったので、営業日の前に来て事前の準備や畑仕事ができるようになりました」。

◆移動手段
東京・練馬の自宅からは西武鉄道で秩父まで「特急ラビューを使っています」。西武秩父駅からは父母に車で迎えに来てもらう。せっかく運転免許を取得したので、秩父で車を購入するかは悩み中。

◆二拠点LIFEへのアドバイス
「 田舎暮らしが自分に合うかどうかは、始めてみないとわからない。いつでもやめられるのが二拠点のメリットだと思っています。私もこれが最終形だとは考えておらず、これからも自分の人生に合った形で生活を変えていくつもり。二拠点居住が目的ではなく、自分の人生を楽しむための手段の一つと考えるとよいかなと思います」

山々に囲まれた盆地のため、雲海が出やすい秩父市。雲海の撮影スポットも多い。

無料のお試し住宅を設置するほか、多彩な移住イベントの開催など、移住者を呼び込む活動にも意欲的に取り組む。

文・写真/阪口 克 写真提供/今山実穂さん、秩父市

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