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<タカベの大群>を追っていたら深場に……残り空気もあとわずか! ダイビング中に起きたハプニング

サカナト

タカベの大群(撮影:みのり)

ダイビングのベストシーズンは夏〜秋。まだまだ残暑が厳しく、海水温はピークを迎えているこの時期、筆者は約1年ぶりにダイビングに行きました。

しかし、そこで思いもよらぬハプニングに遭遇したのです。

ダイビングで見られた光景のほか、ハプニングの内容や対処法などを記していきます。

1年ぶりのダイビング

ダイビングのベストシーズンは海水温が上がる夏頃になります。

冬でも潜ることはできますが、防寒用のドライスーツなどを用意しなければなりません。それでも極寒であることに変わりはないので、最も人々が盛んにダイビングをする季節は夏~秋でしょう。

私はドライスーツを持っていないため、多くのダイバーと同じく、夏~秋にダイビングをします。ということは、シーズンはじめのダイビングは、前回からどうしても1年近く空いてしまうのです。

先日、計2本のダイビングを行うことになり、1本目は1年のブランクを取り戻す肩慣らし、そして2本目はもう少し本格的に深場へ行くことになりました。

魚の群れを追っていたら……

ブランクを取り戻すべく、なんとか1本目のダイビングを終え、2本目のダイビングを行うことになりました。

「2本目はもう大丈夫でしょ」という軽い気持ちで潜水し、まず目に飛び込んできたのはタカベの大群です。

タカベの大群(撮影:みのり)

背中から尾にかけてかかる黄色が美しいタカベが、私たちの真横を気持ちよさそうに通り抜けます。この光景を写真や動画に収めたいと思い、GoProを構えてタカベの群れに接近しました。

以前にダイビングでタカベの群れを見た時は、カンパチに追いかけられており、ひとつの“玉”になって逃げていました。

しかし今回は、人間を敵と認識していないためか、タカベたちはあまり逃げる素振りもなく、悠々と泳いでいました。

タカベ(撮影:みのり)

これは絶好の撮影チャンス。夢中でタカベの群れを撮影し、ホクホク気分になりました。

いつの間にか流される

しかし、そのときあることに気がつきました。いつの間にか私は、最初にタカベと遭遇した位置より数メートル沈んでおり、流されていたのです。

元々タカベの群れがダイビングの目的ではなく、そのさらに先にあるポイントへ行くことが狙いでした。

背負っている空気タンクは、水深が深くなると中の空気が圧縮されるため、深場でタンク内の空気を吸うとより多くの空気を消費してしまいます。

そのため、ポイントに行くまでは表層から中層付近を泳ぎ、なるべく空気の消費量を減らそうと、ダイビングの前に行われるミーティングで言われていたのでした。

気づきにくい水深と激流、そして水温低下

空気の消費量についてはもちろん頭に入れていましたが、思いのほか水流が強く、タカベに気を取られているうちにかなり流されていたのです。

そして水も少し濁っていたため、自分が今いる水深がわかりにくい状況でした。ほんの数秒油断しただけで、大きく水深が変わっています。

途中でこれに気づき、タカベの撮影をやめて、泳ぐことに専念。なんとか目標ポイントに辿り着き、より深場の探索を開始しました。しかし、そこでまた予想外の事態が……。

真夏なのに水温15度 奪われる体温

真夏にもかかわらず、そのポイントは水温が15℃しかなかったのです。

水中は陸上より体温を奪われるため、空気の消費量はますます増加します。さらに、先ほどよりも強い激流が発生し、その流れはより深場の方へと流れ続けているのです。

インストラクターの友人が「ここに魚がいるから撮っていいよ」と合図し、私もそちらへ向かってその魚を撮影していましたが、後々彼の話を聞くと、「(筆者が)その魚と共にどんどん深場へ流されていた」そうです。

確かに写真をよく見ると、魚たちも流れに逆らうようにして泳ぎ続けています。

流れに逆らうキンギョハナダイの群れ(撮影:みのり)

あのまま油断していたら、より深い闇の世界へと誘われていたことでしょう。

インストラクターの友人はこれ以上進むのは危険と判断。来た道を戻ることになりました。

キンギョハナダイたちと共に流れに逆らって泳ぎ続け、水深が比較的浅い場所まで戻ってくると、一気に水温が15℃から25℃前後まで上昇し、全身が温められていくのを感じました。

「ふう、助かった」。そう思ったのも束の間、またまた大問題が起こりました。

空気がなくなる タンク圧はわずか約40気圧

私は、背負っている空気タンク内の空気をほとんど使い切ってしまっていたのです。ここに来るまでの過程や水温低下、激流などで思いのほかタンクの空気を使ってしまったようです。

ダイビング開始時のタンク圧は約200気圧ありました。これは、空気がたっぷり入っているほぼ満タンの数値です。

しかし、このときのタンク圧はわずか約40気圧まで減っていました。あのタカベの群れを見たポイントもまだまだ先。これでは陸にたどり着くまでにタンク内の空気を使い切ってしまいます。

友人の空気を分けてもらう

そこで私は、共に潜っていた友人の空気を分けてもらうことになりました。

タンク内の圧縮された空気を吸うためには減圧する必要があります。それを人間が吸うレベルまでに減圧し、呼吸を可能にするための道具がこの「レギュレーター」です。

レギュレーター。黄色の部分が「オクトパス」(撮影:みのり)

万が一、このレギュレーターが破損してしまった場合に使うのが、予備の「オクトパス」。また自身のレギュレーターの破損に限らず、仲間のダイバーのタンクやレギュレーターに異常が生じた場合にも使用することができます。

私は友人からオクトパスを通じて、友人のタンクの空気を分けてもらいました。オクトパス自体は友人のタンクに接続されているため、私は友人の傍にピッタリとくっついて泳ぎました。

とにかく無事に陸に帰ることを最優先とするため、無駄な動きを減らし、空気を消費しないことに専念。インストラクターや友人の助けもあり、なんとか陸地まで戻れました。

陸上で確認すると、タンクの残圧(中の空気)は、ほとんど残っていない状態でした。

水深に注意 無駄な動きを減らすことも大事

空気の消費を減らす方法として、水深に気を付けるほか、無駄な動きを減らすことも大事になるそうです。また頭で考えすぎても空気を消費してしまうため、頭を空っぽにすることも大切だと聞きます。

無駄な動きを減らし、水深や水温に注意し、でも考えすぎないこと──今まで約60本ダイビングをしましたが、まだまだ経験が足りないなと感じました。

唯一良かったことは、“溺れかけている状況”にも関わらず、冷静に対処できたことです。ダイビングライセンス講習の際も、「冷静でいること」は口酸っぱく言われました。ここで冷静さを欠いて呼吸を忘れたり、バタバタ焦ってしまうことが水難事故につながります。

そういった意味では、言葉を話せない水中であるにもかかわらず、状況判断して空気を分けてもらえたのは良い対応だったと思います。

ダイビングは楽しいですが、気を抜くと一瞬にして命を奪う危険性も含みます。今後も冷静さを欠くことなく、でも楽しみながら、魚たちの世界に行きたいと思いました。

(サカナトライター:みのり)

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