俺みたいになるな!投資のしくじり事例4選
失敗は成功のもとといいますが、立ち直るのがなかなか難しいのが投資における資産運用の失敗です。何ごとも勉強と前向きに考えられるとよいのですが、場合によっては実生活に支障が出てしまったり、借金や破産という事態を招くこともあります。
今回は、筆者の対応した相談事例をもとに、投資の失敗談をお伝えしたいと思います。投資に興味があり、これから始めようとする方も、どういう失敗やどんなリスクがあるのか情報を得てから始めることをおすすめします。
1. 株式投資の失敗談/30代サラリーマンAさん
Aさんは30代で資産運用に興味が出てきて株式投資をスタートしました。資金は貯金から準備した100万円です。銘柄の研究はそれほどできていなかったので、誰でも知っている大企業の株式を買い付けました。株式での儲けも狙っていましたが、その企業の株主優待制度がとても魅力的だったので、そちらも楽しみにしていました。
購入時、会社の業績は少し悪化しており、購入後も回復は厳しい状況でしたが、大企業であり長い目で見て業績が持ち直すことを期待したこと、株主優待への期待があったことからそのまま保有をしていました。しかし残念ながら投資先の企業は倒産。Aさんが100万円で購入していた株式の価値はゼロとなり、今は電子株券なので紙クズにもなりませんでした。ちなみに、この会社が再建されて再上場しても全く違う株として上場されますので、Aさんの株に価値が戻ることはありません。
【FPが考える、こうすればよかったかも?】
株式投資はリスクの高い投資です。まずは投資先をしっかり調べることが重要です。また一つの銘柄に集中投資するのではなく、投資先を3つ~4つぐらいに分散すると投資金額の全額がゼロになる可能性は低くなります。
2. 不動産投資の失敗談/40代サラリーマンBさん
サラリーマンのBさんは、これから先の年金は期待できないため、毎月の家賃収入を老後資金にしたいと考え、不動産投資をスタートしました。投資の対象は新築のワンルームマンション。金融機関から借り入れをし、家賃から返済をしていくプランです。
毎月の家賃収入を投資用ローンの返済や管理代行手数料や建物管理会社に支払う管理費・修繕積立金にあてる計画だったのですが、実際は思ったほど家賃の設定を高くすることができませんでした。
そのうち固定資産税などの出費もあり、家賃収入だけでランニングコストが賄えず、毎月の収支が赤字となりました。給与所得と合算しても確定申告をしても節税分以上の出費が続き、売却を考えました。ところが購入価格どころかローンの残債分の価格でも売れず塩漬け状態になり、赤字が毎月続く状態になってしまいました。
【FPが考える、こうすればよかったかも?】
区分所有のワンルームマンションやアパートで賃貸契約するには、立地と初期投資をどれぐらい抑えるかが重要です。新築物件でスタートしても、後からどんどん新築物件が供給されますから競争力が落ちてきます。価格の落ち着いている中古物件での投資がおすすめです。また借入金の返済+ランニングコストは必ず発生するのでその点もご注意ください。
3. FX投資の失敗談/20代共働き女性Cさん
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インターネットやテレビで盛んにCMをしていたFX(外国為替証拠金取引)に興味をもったCさんは、共働きということもあり、自分のお小遣いと結婚前に貯めていた200万円を使って取引をスタートしました。
FX取引は簡単にいうと二つの通貨で取引を行い、通貨が上がるか下がるかを予想するものです。株式で投資をスタートするにはまとまった資金が必要ですが、FXでは4~5000円程度の少額でスタートできます。スマートフォンのアプリで、平日なら24時間の取引ができるのでゲーム感覚で取引ができます。そしてFXの大きな特徴の一つに自分の資金以上の取引ができるレバレッジ機能があります。レバレッジ取引とは、簡単にいうとFX会社にお金を借りて取引を行うことです。
レバレッジを使うと手持ち資金以上に取引を行えるため、大きな利益を目指すことができます。一方で損失が出た場合もレバレッジに合わせて損失額が大きくなります。Cさんの場合は200万円を使い切っただけではなく、レバレッジで大きく膨らんだFX会社への損失も支払うことになってしまいました。
【FPが考える、こうすればよかったかも?】
FXは値上がり・値下がりを予測するというゲーム的要素があり、ついつい夢中になりがちです。また信用取引で手持ち資金以上の取引が簡単にできますので、レバレッジは低め、急激な値動きがあった時に取引をストップさせるロスカットをちゃんと設定しましょう。
4. 投資信託の失敗談/60代リタイア男性Dさん
Dさんは40年近く会社員として働き退職金を受け取りました。2000万円近くのお金が一気に銀行口座に振り込まれるのは人生で初めての経験です。とても気持ちが豊かになりましたが、年金だけでは老後の十分な資金にならないと考え、資産運用を考えました。退職金を資金として使えば大丈夫と考え、金融機関の窓口に出向いて相談して決めることに。
それまでDさんの投資経験といえば生命保険の養老保険のみで、投資の知識はないのと同じでした。そのような状態で、窓口では退職金用特別金利の定期預金と投資信託のセットを勧められました。「金利も高いし退職金で手持ち資金は今のところ十分なので、じゃあ、おすすめのソレを」のような流れで、勧められるままの商品でDさんの退職金運用が始まりました。
実際に始まってみると、金利の高い定期預金は短期間しか有効ではなく、購入している投資信託は毎月分配型でした。分配金の金額も高く、スタート時には定期に分配金が出て安心していていましたが、ある日、金融機関からの書類を見ると投資に回している元本が大きく減っていました。
【FPが考える、こうすればよかったかも?】
退職金はまとめて受け取ることが多いと思いますが「何か運用をしなければ」と焦る必要はありません。ゆっくりと考えても大丈夫です。退職金を運用しながら何年をかけて取り崩しをするのか?を考えることが重要です。
毎月分配型の投資信託は大部分の商品が元本を取り崩して、分配金という名前で契約者に配分されています。そのため、いわゆる元本割れ状態になっていることが多い商品です。大事な退職金は減らさない運用が重要です。
5. 失敗から学ぶこと/投資のリスクと自分の許容度を知る
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そもそも論になりますが、投資にはリスクがあります。「絶対に資産が殖える」「必ず成功する」という投資方法はありません。この場合のリスクは値段のブレ幅のこといいます。
このリスクをどれぐらい許容できるかが投資判断では重要です。例えば、ある投資商品で資産運用し、10万円損失が出たら自分の生活にどれぐらいの影響があるかを考えてみましょう。
10万円の損失が出たら生活ができないのか、1回の損失なら大丈夫なのか、3回出たらダメなのか?個人によってリスクの許容度はさまざまですが、自分の中でどれぐらいの損失が発生すると投資の継続をストップするのかをキチンと考えてスタートしましょう。
また、個人投資家の心理としてよく見られるのが下記の例です。思い当たる方も多いのではないでしょうか?
(1)儲けが出ているものは、儲けが出ているうちに売却して利益を確保しよう
(2)値下がりして、今売るのは損だから値上がりするまで待とう
上の(1)と(2)を繰り返すと、手元には利益が出ていない金融商品しかなく、投資の意味がなくなっていることが多いのです。この場合、投資する分野や金額などを見直しすることが、それ以上の損失を避ける意味でも重要です。
一攫千金は夢がありますが、投資をゲーム感覚で行うと失敗する可能性が大きくなります。投資の目的は利益を出すことですが、そのためには損失を最小限にして、資金を必要以上に失わないように分散・長期・積立で投資をすることと、いくらまでであれば損失を受け入れることができるか決めておくことが大事ですね。