生活支援員とは?仕事内容や給料事情、なり方について解説!
執筆者
ささえるラボ編集部
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生活支援員とは、障害者福祉施設で働く職員のことで、入所・通所している利用者の生活をさまざまな形でサポートし、自立支援を行う職種です。職場にもよりますが、無資格・未経験でも採用してもらえるケースが多く、他業界から福祉業界に転職したい人にも適した職種といえます。
しかし、福祉・介護業界について詳しくない方にとっては、生活支援員がどんな仕事をしているかをイメージしにくい方もいるのではないでしょうか。そこで、この記事では、主な仕事内容、平均給与や仕事につく方法、勤務先など、生活支援員に関する基礎知識を解説します。
生活支援員の主な仕事内容
まずは生活支援員の主な仕事内容を確認しましょう。
1.利用者さんの生活サポート
2.事務手続きや関係各所との連絡調整
3.生活に関する相談対応
4.自立に向けた就労支援や職業訓練
1.利用者さんの生活サポート
食事や着替え、排泄、入浴などの介助を行って、利用者さんの日常生活をサポートします。
また、利用者さんが生活習慣を身につけて自立した生活を送れるように、金銭管理や家事に関する支援や助言も行います。
2.事務手続きや関係各所との連絡調整
利用者さんの入・退所に関わる事務手続きに加え、利用者さんが通院している医療機関や行政機関などとの連絡・調整を行います。
また、支援に関する書類作成や手続きも重要な業務の一つです。支援計画の作成や進捗管理、報告書の作成などを通じて、利用者さんの支援が適切に行われるようにします。
3.生活に関する相談対応
利用者さんからの相談に対応することも、生活支援員の重要な仕事の一つです。
日常生活に関する課題のほか、施設内の人間関係の悩み、将来の就労への不安など、さまざまな相談に応じることで、精神面でもサポートしていきます。
相談業務を通じて、利用者さんのニーズや悩みを把握し、適切な支援を提供するための基盤を築きます。
4.自立に向けた就労支援や職業訓練
障害者福祉施設では、利用者さんの就職や職場定着に向けた就労支援のほか、働くうえで必要となる技術や知識を身につけるための職業訓練も実施しています。一般的には、就労支援は就労支援員、職業訓練は職業指導員の仕事ですが、施設によっては、生活支援員が就労支援や職業訓練を担当することもあります。
具体的な就労支援の業務内容は、実習先や就職先の開拓、就職活動の支援、就職後の定着のための職場訪問や相談対応などです。職業訓練では、データ入力、清掃、調理、食品加工、農業、工芸といった作業や生産活動における技術指導を行います。
生活支援員の1日のスケジュール
続いて、生活支援員の1日のスケジュールの一例を紹介します。
【例あり】日勤の生活支援員のスケジュール
生活支援員になるには?
生活支援員になるために必要な資格や要件は、特にありません。
未経験・無資格でも応募できる求人募集も多く、未経験から福祉業界にチャレンジしたい人にはおすすめの職種です。
ただし、自治体(市町村)が運営する施設で働くには、社会福祉主事任用資格を取得したうえで公務員試験に合格することが条件となる場合があります。
生活支援員におすすめの資格
さらに、生活支援員に必須の資格はありませんが、持っていると職場で歓迎される資格はあります。
生活支援員は利用者の介助にあたる機会が多いため、初任者研修以上の介護の資格を持っていると役立つでしょう。初任者研修以外にもおすすめの資格があるので紹介します。
1.介護福祉士
2.社会福祉士
3.精神保健福祉士
4.社会福祉主事任用資格
●1.介護福祉士
介護福祉士は、高齢者や障害者の日常生活を支援する専門職で、唯一の介護に関する国家資格です。
そのため、資格を取得することで介護に関する知識や技術の専門性を証明することができます。資格取得には、指定の養成施設を卒業するか、実務経験を積んだうえで国家試験に合格する必要があります。
●2.社会福祉士
社会福祉士は、福祉に関する包括的な知識を持ち、利用者さんやそのご家族の相談に応じ、適切な福祉サービスを提供する専門職です。
ソーシャルワーカーには無資格でもなることができますが、社会福祉士を取得することで専門性の高さを証明することができます。資格取得には、福祉系大学や養成施設での学習と実習を経て、国家試験に合格する必要があります。
●3.精神保健福祉士
精神保健福祉士は、精神的な障害を持つ方の相談支援を行う専門職です。業務には、精神障害者の社会復帰支援、メンタルヘルスケア、関係機関との連携などが含まれるため、生活支援員の仕事内容にも活かすことができます。
資格取得には、保健福祉系の大学や養成施設での学習と実習を経て、国家試験に合格する必要があります。
●4.社会福祉主事任用資格
社会福祉主事任用資格は、都道府県や市区町村などの公的施設で働く際に必要な資格です。社会福祉主事は、福祉事務所や福祉施設での相談業務や支援計画の作成を行います。生活支援員も支援計画にあわせてサポートしていくため、取得することで専門性をもって業務に臨むことができます。
また、資格取得を目指す場合は、大学や短期大学で指定科目を履修するか、指定の養成機関を修了する必要があります。
生活支援員の平均給与
次に、生活支援員の給与事情を見ていきましょう。
厚生労働省の調査によると、生活支援員の平均給与は31万5,040円です。これは、同じく障害福祉サービスで勤める世話人の24万8,710円と比較すると約7万円も高い給与となっていて、同じ無資格であっても、世話人より対応する業務の幅が広いことなどが理由としては考えられます。※1
一方、介護サービス施設で働く介護職の平均給与額は、31万7,540円で生活支援員の給与は、介護職とほぼ同等であるということがわかります。※2
しかし、福祉・介護業界の給与については、全産業平均と比較して低いことを問題視する声もあがっています。現在も進んでいますが、処遇改善などで業界全体の給与を底上げしていく必要があるでしょう。
※1:厚生労働省令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果
※2:厚生労働省令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果
生活支援員の勤務先
生活支援員の活躍の場は、障害のある方を対象とした福祉施設(障害者福祉施設)ですが、障害者福祉施設にもいくつか種類があります。ここでは、生活支援員の主な勤務先を紹介します。
・障害者グループホーム(共同生活援助)
・就労継続支援(A型・B型)事業所
・就労移行支援事業所
・障害者支援施設
障害者グループホーム(共同生活援助)
障害者グループホームは、障害のある方たちが必要な支援を受けながら共同生活を送る入居型施設です。障害者総合支援法に定められた障害者福祉サービスの一つで、「共同生活援助」が正式なサービス名です。
グループホームでは、生活支援員が、利用者さんの日常生活をサポートします。具体的には、食事の準備や介助、入浴や排泄の介助、服薬管理などを行います。また、利用者さんの健康状態を把握し、必要に応じて医療機関との連携を図ります。さらに、日常生活の相談に応じ、利用者さんが安心して生活できる環境も整えます。
就労継続支援(A型・B型)事業所
就労継続支援事業所は、就労を希望する障害のある方を支援するための施設です。具体的には、仕事や生産活動の機会を提供したり、就労に向けた職業訓練を実施したりしています。生活支援員は、利用者さんの健康管理面の指導、日常生活に関する相談対応、作業のサポートなどを行います。
A型、B型の違いは、利用者が事業所と雇用契約を結ぶか結ばないかの違いです。就労継続支援A型の利用者は、事業所と雇用契約を結んだうえで働きます。一方、就労継続支援B型では、雇用契約を結ばずに、心身の状態に合わせて生産活動を行います。利用者さんに支払われる給与(工賃)は、A型は最低賃金以上と定められていますが、B型については雇用契約を結んでいないため実施した作業量に応じて工賃が発生します。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所も障害のある方の就労を支援する施設ですが、就労継続支援事業所よりも幅広いサービスを提供し、一般企業への就職を目指すための支援を行っています。
具体的には、生産活動の機会の提供や職業訓練に加えて、就職活動のサポート、利用者の適性に応じた就職先の開拓、就職後の職場定着のための支援や相談対応なども行います。就労移行支援事業所における生活支援員の業務内容は、就労継続支援事業所と同様に、健康管理の指導、生活に関する相談対応などです。
障害者支援施設
障害のある方に、居住の場や食事のほか、日常生活を送るうえで必要な介助、創作・生産活動の機会、就労や自立のための訓練などを提供する多機能型の施設です。
障害者総合支援法では、日中のケアは日中活動を支援する「生活介護」として提供され、夜間を中心としたそれ以外の支援は「施設入所支援」として提供されることになっています。生活支援員は、利用者さんの介護や相談対応、関係各所との連絡調整といった業務を担当します。
福祉業界の他職種との違い
福祉・介護業界では、生活支援員とよく似た複数の職種が活躍しています。それぞれの職種について、仕事内容や生活支援員との違いを解説します。
介護職
介護職は、主に、特別養護老人ホーム(特養)、有料老人ホーム、通所介護施設(デイサービス)といった高齢者介護施設で介護サービスを提供します。利用者さんの自宅を訪問して介護サービスを提供するホームヘルパーも介護職の一種です。
主な仕事内容は、食事介助や入浴介助、車椅子からベッドへの移乗介助といった身体介護、洗濯や掃除などの生活援助です。ホームヘルパーは、調理や買い物代行、通院の付き添いを行うこともあります。
生活支援員が障害のある方を対象に生活全般を支えるサービスを提供するのに対し、介護職は、身体介護などがメインで高齢者など介護が必要な人のサポートを行います。また、介護職は生活支援員のように相談対応や関係各所との連絡・調整は行わず、介護業務のみに専念するのが一般的です。
世話人
世話人は、障害者グループホームで利用者を支援する職種の一つです。障害者総合支援法では、障害者グループホームの配置基準として世話人を置くことが定められています。業務の範囲は職場によって異なりますが、家事を中心とした生活援助や服薬管理、相談対応など、利用者さんの身の回りの世話をするのが主な仕事です。
世話人が、利用者さんの生活のサポートや相談援助を主に行っているのに対し、生活支援員は自立に向けた指導や管理もおこなっています。
生活相談員
生活相談員は、介護施設や福祉施設で利用者さんやその家族の相談に応じ、適切なサービスを提供するための調整を行います。
主な業務には、入退所手続き、利用者さんの相談対応、関係機関との連絡調整などがあります。生活支援員は直接的な生活支援を行うのに対し、生活相談員は相談業務や調整業務が主な役割です。
支援相談員
支援相談員は、介護老人保健施設(老健)で入所者やその家族の相談に応じ、在宅復帰を支援する職種です。入退所手続きのサポートや事務作業、関係機関との連絡調整などが主な業務です。
生活支援員は障害がある方の生活全般を支援するのに対し、支援相談員は介護老人保健施設での在宅復帰を目指した支援が主な役割です。
職業指導員
就労継続支援事業所や就労移行支援事業所では、利用者さんに、自立のために必要とされる技術や知識を身につけてもらうために、職業訓練を実施しています。
ここで、職業訓練の指導やサポートをする職種が職業指導員です。職業訓練で行う作業内容は、農業、食品加工、清掃、データ入力、梱包など、事業所によってさまざまです。
就労支援員
就労継続支援事業所や就労移行支援事業所で、障害のある利用者さんを対象に、実習先や就職先の開拓、就職活動のサポート、就職後の職場訪問や相談対応など、幅広く就労支援を行います。ハローワークや実習・就職先の企業との連絡・調整も欠かせない業務の一つです。
障害者福祉施設のほか、福祉事務所やハローワーク、児童福祉施設で働く就労支援員もいます。その場合、障害のある方だけでなく、生活保護者やひとり親家庭の保護者なども支援の対象です。このように、生活支援員は日常生活の支援が中心ですが、職業指導員は就労に特化した支援を行っています。
地域生活支援員
障害者支援施設やグループホーム、精神科病院などから退所して地域で一人暮らしを始めた障害のある方の生活をサポートする職種です。2018年に新たな障害福祉サービスとして創設された「自立生活援助」サービスの事業所が主な活躍の場です。
具体的な業務内容は、利用者からの相談への対応、関係各所との連絡・調整、自宅への定期訪問などです。必要に応じて、医療機関や買い物に付き添うこともあります。生活支援員は施設内での支援が中心ですが、地域生活支援員は地域全体での支援を行います。
家庭生活支援員
ひとり親や配偶者を亡くした妻(夫)の生活と子育てを支援するために、都道府県または市町村が主体となって実施している「ひとり親家庭等日常生活支援事業」という取り組みがあります。
この事業において、自治体や委託団体から要請があったときに、乳幼児の保育や食事の世話などの子育て支援、掃除や生活必需品の買物といった生活援助を行うのが家庭生活支援員です。生活支援員は障害のある方の生活支援が中心ですが、家庭生活支援員は家庭全体の生活支援を行っています。
生活支援員のキャリアパス
生活支援員としてのキャリアパスには、経験を活かせるものや、新たに資格を取得してスキルアップするものなど様々な選択肢があります。
・主任やリーダーになる
・サービス管理責任者を目指す
・施設管理者(施設長)
主任やリーダーになる
生活支援員として実務経験を積むと、主任やリーダーの役職に就ける場合があります。主任やリーダーは、チームをまとめるだけでなく、利用者さんやそのご家族との調整役も果たします。責任感だけでなく、高いコミュニケーション能力も求められる役職です。
業務の一環として、他のスタッフへの指導やサポートも行うため、介護福祉士や社会福祉士などの資格を取得していると、選考や昇進において有利になる場合があります。
サービス管理責任者を目指す
サービス管理責任者は、生活支援員としてのキャリアアップの一つの選択肢です。サービス管理責任者は、支援計画の策定やスタッフの指導・育成を担当する重要な役割を担います。この職種に就くには、一定の実務経験と講習を修了する必要があります。
サービス管理責任者は、利用者さんに対する個別支援計画の作成や、職員の指導・育成、関係機関との連携、相談援助などをおこなっており、生活支援員の業務内容とも少し似ています。ただし、サービス管理責任者は更新研修なども伴うため、無資格から始められる生活支援員以上に責任感や専門性をもって働くことができるでしょう。
施設管理者(施設長)
施設管理者は、介護施設や福祉施設の運営全般を担当します。施設の運営管理はもちろんのこと、職員の教育や利用者さんのケア方針の策定、収支管理、行政との連携など施設に関する全体的な管理業務を行っています。
障害者施設において施設長になるためには、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準」第七十二条で、「管理者は、社会福祉法第十九条各号のいずれかに該当する者若しくは社会福祉事業に二年以上従事した者又は企業を経営した経験を有する者又はこれらと同等以上の能力を有すると認められる者でなければならない。」と定められています。
つまり、「社会福祉主事任用資格を取得している者」もしくは、「社会福祉事業に2年以上従事した者」が施設長になることができるのです。
生活支援員のやりがい
最後に、生活支援員のやりがいを紹介します。生活支援員はその業務の幅の広さもあり、多くのやりがいを感じられる職種です。
1.利用者さんの成長に寄り添える
2.感謝の言葉や笑顔をもらえる
3.社会貢献ができる
4.自己成長を感じられる
5.多様な経験を積むことができる
1.利用者さんの成長に寄り添える
生活支援員として働く中で、利用者さんの成長を間近で見守ることができます。例えば、日常生活のスキルが向上したり、自立した生活ができるようになったりする姿を見ることは、大きな喜びです。
利用者さんが目標を達成する過程をサポートし、その成長に寄り添うことで、深い満足感ややりがいを得ることができます。
2.感謝の言葉や笑顔をもらえる
利用者さんやそのご家族から感謝の言葉や笑顔をもらえることは、生活支援員の大きなやりがいの一つです。
日々の支援活動を通じて、利用者さんの生活が少しでも楽になったり、喜びを感じてもらえたりすることは、支援員としての励みになります。また、感謝の気持ちを直接感じることは、仕事へのモチベーションにも繋がります。
3.社会貢献ができる
生活支援員の仕事は、社会全体に貢献する重要な役割を果たしています。障害を持つ方々が自立して生活できるよう支援することで、地域社会の一員としての役割を果たし、社会の一体感を高めることができます。
自分の仕事が社会にとって価値のあるものであると実感できることは、大きなやりがいです。
4.自己成長を感じられる
生活支援員として働く中で、様々なスキルや知識を身につけることができます。利用者さんとのコミュニケーションを通じて、対人スキルや問題解決能力が向上します。
また、福祉に関する専門知識を深めることで、自己成長を実感できます。新しい挑戦や学びを通じて、自分自身の成長を感じることができるのは、大きな魅力です。
5.多様な経験を積むことができる
生活支援員の仕事は、多岐にわたる業務を経験することができます。例えば、日常生活の支援だけでなく、レクリエーション活動の企画や実施、関係機関との連携など、様々な場面で活躍する機会があります。
多様な経験を積むことで、幅広い視野を持ち、柔軟な対応力を身につけることができます。また、これらの経験を活かして福祉・介護業界で活躍の場を広げることもできるでしょう。
まとめ:生活支援員は、今後ニーズが高まる将来性のある職種
近年、障害者の生きる権利に対する社会全体の意識は、高まりつつあります。障害のある方が積極的に社会に参加・貢献できる社会を目指す「共生社会」という考え方が注目され、国や自治体は、この考え方に基づいて、障害の有無にかかわらず誰もがともに生活できる環境づくりを進めています。
そのような背景もあり、障害者の生活や就労を支援する福祉職のニーズも大きく高まっていて、今後も生活支援員の活躍の場はどんどん広がっていくでしょう。 生活支援員は、介護職と同様に社会にとってなくてはならない職種であり、それゆえに安定した就労が見込めます。
未経験・無資格でもチャレンジできるうえ、人の役に立てるやりがいのある仕事であることも大きな魅力です。福祉・介護業界に興味がある人は、選択肢の一つとして生活支援員を視野に入れてみましょう。
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