エギング最中に目撃した「波間に浮かぶ得体の知れない物」の正体とは?
夜釣りに出かけた先で、海面にぽっかりと浮かぶ不穏な何か。波に揺れるそれは、だんだんと距離を詰めてくる。「まさか、今日はそういう日なのか?」静まり返った夜の海に、妙な気配とじわじわとにじり寄る影。果たしてその“それ”の正体とは……。
エギング最中の出来事
これは5年ほど前のエギング釣行中の出来事です。アオリイカを狙って、いつものように釣りに出かけました。そこは、一人しか入れない細い堤防。誰にも邪魔されず、黙々と釣りができるお気に入りの場所です。
その日は生暖かい風の中に突然ヒヤッとする風が吹いていて、どこか落ち着かない空気がありました。釣り人の感覚というのでしょうか、何かに見られているような気配を感じる——それは人間ではなく、もっと動物的な人では無い何か。
実際、昔その堤防へ向かう道中で鹿2頭にバッタリ遭遇し、一触即発のような場面になったこともあります。だから、今回も鹿かもしれない。(その当時は今程 熊に対して危機感がなかった時代です)そう自分に言い聞かせながら、少し不安な気持ちを抱えつつ釣りを続けていました。
波間に漂う影
何時間か釣りをしているうちに、ふと、自分のエギが落ちた少し右側、波間に何かが浮かんでいるのが見えました。最初は「ゴミだよな」と思いましたが、風下に立っているためゴミが溜まりやすい場所ではあるものの、それにしては違和感がある。
「あれ、ゴミのサイズじゃない……」「あの国の工作員の方?とかはないよな?」「なんか他のゴミと比べて存在感がある」そう気づいたときには、もうその何かが気になって釣りに集中できなくなっていました。
“見ないふり”をしながら、その方向にはキャストしないようにしていたものの、時間が経つにつれ、その物体は徐々に ゆっくりとですが確実に近づいてきます。色はオレンジ。形は平たい長方形のようで、サイズは50cmほど。
ちょうど、膨らんだライフジャケットくらいの大きさに見えます。心のどこかで「あーこれはたまに釣り人が発見するやつ?」とか「ついに来たのかもしれない」と思いながらも、「どうかブイであってくれ……でも、もし本物なら……手の届く距離まで近づいたら警察に連絡しよう」と、釣りを続けながらも状況を注視していました。
アオリイカ手中も……
そんな中、ようやくこの日のファーストヒット。6時間粘って釣り上げた1杯目のアオリイカに安堵しつつ、ギャフを準備していると、あの“ライジャケらしき物体”が、気づけば10mほどまで接近してきていました。
「イカを上げたら、次はコチラをギャフで引っ掛けて確保してあげよう」そう腹をくくり、警察に連絡する為スマホも確認し、釣りは一時中断。
正体はブイ
ライトを手にして、その“それ”に光を当ててみると、オレンジ色のフロート(ブイ) でした。(笑)
ライジャケの必要性
「なんだよ、またブイかよ……」と数年前の似た事案を思い出し、思わず苦笑い。でも、同時に「ブイでよかった」と心底思いました。夜の海。誰もいない堤防。見えない何かに見られているような気配。そして静かに寄ってくる、妙な物体——。
こんな条件が揃えば、誰だって少しは“怖気”てしまうだけど今回も、ただのブイ。(笑)怖かったけど、無事に終わって本当によかった。
たしかに、ライジャケを着けていても駄目なときは駄目ですし、「どこでも着けろ」というのは、少し過剰すぎるのかもしれません。それでも 着けていれば助かる可能性は、確実に、そして劇的に高まります。
これから釣りのハイシーズン。楽しむためにも、“備え”と“無事に帰る意識”を、どうか忘れずに。
<刀根秀行/TSURINEWSライター>