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【コラム】第5回「スモールM&Aと事業承継対策」 勝島一真(税理士・行政書士)

にいがた経済新聞

ビジネスカツシマの勝島一真です。降り積もった雪も溶けはじめ3月に入ると春のおとずれを感じてきます。仕事柄2月15日から3月15日までの確定申告期間はワープをしたかのように時間の経過をはやく感じます。確定申告期間がおわるとホッとすると同時に、どこかからか桜の便りも耳にはいり、春の訪れを実感するとともに何かワクワクしてきます。年齢を重ねるごとにこの小さな幸せが膨らんできております。

雪がしっかり積もることで、スキー場には賑わいがでて、また雪解けの水が新潟の美味しいお米をつくっているなど、雪国はその時期にしっかり雪がふることによって経済がまわり、美味しい作物の生育にもつながっていきます。

雪はどこの県にも降るものではなく、日本の中でも新潟県をはじめ雪の降る県やエリアは限られています。雪は降らせたくても降らせることができないものであり、他にはマネできない圧倒的な『強み』ととらえることもできます。

M&Aの重要なキーワード

第5回目となる今回はM&A(エムアンドエー)をテーマにお話しをしたいと思います。M&Aでとても重要なキーワードは『強み』です。

M&Aとは企業の合併や買収を指す言葉で英語の「Mergers and Acquisitions(マージャーズ・アンド・アクイジション)の頭文字をとったものです。

ひと昔前まではM&Aは大企業同士がおこなうもので大企業以外はあまり縁のないもの
だと思っていました。しかしここ数年は中小企業をはじめ個人事業者もM&Aを戦略の選択肢として検討し、販路の拡大や事業承継対策として活用するケースがかなり増えています。

1990年代では年間のM&A件数が500件から1000件程度であったのに対し、2000年に入るとその数は増加し2000件をこえ、ここ最近では年間4000件をこえるM&Aがおこなわれています。大企業だけでなく中小零細企業がM&Aを活用していることが増加の要因です。

中小零細企業とM&A

中小零細企業がM&Aを活用することになった要因としては、なんといっても「後継者不足」があげられます。事業承継者はいないが雇用を守りたい、顧客を守りたいといった場合にM&Aを活用し親族ではない第三者に会社を売却し、事業を承継してもらい、雇用と顧客を守るという活用方法が圧倒的に増えています。また中小零細企業のM&Aはひと昔前までイメージしていた、いわゆる「敵対的買収」ではなく、M&Aをした後も周りの人たちからはその変化にあまり気が付かれない「友好的買収」のケースがほとんどであります。友好的買収の特徴は、すぐに会社名がかわることがないことや、その会社やお店にいる従業員や社長といったメンバーが変わることがないことなどが特徴としてあります。

このように中小零細企業のおこなうM&Aはいわゆる「スモールM&A」と呼ばれており、会社を買収する側は売却側の会社の気持ちを十分に汲んでM&Aをおこなっていくことが重要でありスモールM&Aの成功の秘訣となります。

スモールM&Aはその大事な部分をまちがってしまうと、ボタンの掛け違いがおき、その後の運営もなかなかうまくいかないケースや、最悪の場合は取り返しのつかないようなことになってしまいます。

中小零細企業の場合、特にトップである社長がその会社の看板的存在となっていることが多く、突然トップが変わり見たことがない人がトップとなった場合、今まで取引していた会社やその会社で働く従業員さんたちが離れていく可能性が出てきてしまいます。

したがってスモールM&Aをおこない企業を買収する(引き継ぐ)場合は、相手の会社の顧客と従業員の気持ち的なところをしっかりとフォローをしていくことがとても重要なポイントとなります。

M&Aのシナジー効果

冒頭M&Aでとても重要なキーワードは『強み』と書きました。

後継者不在などでM&Aを検討している企業にとっては、まずは会社を引き継いでくれる相手(買い手側企業)をさがすところからスタートします。財務状況があまりよくない状況や、企業規模が小さくなるにつれてなかなか買い手企業が現れにくい傾向がありますが、しかし財務状況があまり芳しくなくても、また企業規模がいくら小さくても会社に『強み』をもっている会社は買い手候補がしっかり現れます。買い手としては、1+1=2というM&Aよりも、1+1=3になるM&Aを求めるからです。

M&Aで統合することで売上や利益が2社分の合算したものだけではないプラスアルファの価値を創出ことや相乗効果がうまれることが理想のM&Aであり、M&Aの業界では「M&Aのシナジー効果」と言われています。

例えば、ここ上越市のように海に近い立地、港が近くにあるというだけでも十分な「強み」とすることができます。海のない県からすると何兆円だしても海はつくれないからです。したがって海や港がない県の企業からするとその企業と統合することで、海や港のある立地を共有し、流通面でのメリットを感じることができます。また漁業関係であれば経験と知識が不可欠な業界であることから、熟練スタッフの雇用やノウハウ取得のスピードを効率よくあげることができます。

このように他にはマネできない圧倒的な自社の『強み』を再確認すること、そしてその強みをさらに磨きあげていくことはM&Aにかぎらず会社の価値を上げ魅力ある会社づくりにつながっていきます。

勝島一真

【プロフィール】
1976年生まれ。高校からアメリカンフットボールを始め、日本大学、株式会社オンワード樫山でアメフト選手として在籍。2002年税理士である父の急逝にともないアメリカンフットボールを引退し、株式会社勝島経営研究所に入社。その後、税理士法人ビジネスカツシマを設立し代表税理士に就任。税務・会計顧問業務のほか、開業支援や海外進出・M&A支援など様々な角度からのサポートを行う。

ビジネスカツシマグループサイト

過去の勝島一真(税理士・行政書士)連載コラム

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