クリスマスの恒例行事に…札幌発、親子で観に行ける“生の舞台”バレエ「くるみ割り人形」の魅力
もうすぐクリスマス!
少しおめかしをして、親子で手をつないで「くるみ割り人形」のバレエ公演を観に行く…。
海外ではクリスマスの文化のひとつとしてそんな風景が根付いているんだそうです。
北海道・札幌でもこの文化を風物詩にしたい…。
そんな思いで活動を続けているWe Love Ballet 実行委員会の公演、「Farewell 2024『くるみ割り人形』」(12月4日・5日上演 ※4日上演のチケットはすでに完売しています)に注目します。
「バレエを鑑賞する」って、なかなか機会がなく、ちょっと敷居が高い…。
子どもがいるから観るのは難しそう…。
そんな人にこそ、この冬訪れてほしいイベントです。
クリスマスにピッタリ!「くるみ割り人形」ってどんなお話?
くるみ割り人形は、チャイコフスキーが作曲したバレエ音楽作品。
クラシックバレエを代表する作品であり、「白鳥の湖」「眠れる森の美女」と並んで「3大バレエ」のひとつです。
あらすじは「クリスマスイブにくるみ割り人形をもらった主人公のクララが不思議な旅をするお話」。
主人公の少女「クララ」はドロッセルマイヤーおじさんからクリスマスイブにくるみ割り人形をもらいます。
そしてその夜…クララが眠りにつくと、クララの体はどんどん小さくなり、ねずみと兵隊が戦争を始めます。
兵隊を率いるのはくるみ割り人形。
クララの手助けもあり、兵隊たちが戦いに勝つと…そこには王子様の姿が。
実は、王子様はねずみの呪いで人形に姿を変えられていたのです。
クララと王子様は一緒にお菓子の国へと向かいます。
そして成長したクララは「金平糖の精」となり、お菓子の国での盛大なパーティーを楽しみます。
クリスマスにちなんだお話であり、シンプルでわかりやすいストーリーは初めてのバレエ鑑賞にぴったり!
かわいくて華やかな衣装、そして踊りと一体となったオーケストラの演奏や合唱…。
まさに「総合芸術」をたのしく体感できます。
今回のバレエ公演の魅力から、「親子鑑賞っていっても子どもが声をあげたりしたらやっぱり迷惑なんじゃない…?」なんていう直球の質問まで…
総合芸術監督の桝谷博子さん、クララ・金平糖の精を演じる桝谷まい子さん、くるみ割り王子を演じる清水健太さんにお話を伺うことができました。
「Farewell 2024『くるみ割り人形』」の魅力は?
桝谷まい子さん)
子どもたちが観て、やはり目を惹きやすいのは衣装だと思います。
クララは着替えがたくさんあるので、楽しみにしてほしいです。
かわいらしいドレスからネグリジェ、金平糖の精になったときの華やかな衣装も必見です。
清水健太さん)
男性のダンサーは、力強さやダイナミックさと同時に、やはり「パートナーリング」に注目してほしいです。
いかに女性に気持ちよく踊ってもらうかというのを常に意識しています。
桝谷博子さん)
親子鑑賞では、もう会場に来たときからわくわくしてもらえるように、入口からキャストやスタッフが皆さんをお出迎えします。
舞台でも、場面転換を完全に暗転するのではなくて、わざとしかけをみせたり…そんな変化を観てもらうことで一段と楽しめるのではないかという演出です。
終了後には、キャストと写真撮影ができる時間も設けます。
楽しみにしていてくださいね。
親子鑑賞って実際どうなの?子どもが騒いで迷惑にならない…?
「親子で一緒に参加できる」
今回の「くるみ割り人形」の大きな魅力でもありますが、実際、バレエの舞台で子どもが声をあげたりしたら、迷惑なのでは…?そのあたりのホンネも聞いてみました!すると…
清水健太さん)
バレエはもっと身近であってほしいと僕は思っていて。
小さい子が泣いたり声を出すのはみんなが通る道ですし。
そもそも、ぼくはどの舞台であってもモチベーションは何もかわりません。舞台に出る、というそのことに集中しているので多分子どもたちが声をあげても、そんなに気にならないと思う。
だったらやっぱりその分、初めてでもちっちゃい子でも来てもらって楽しんでほしいです。
桝谷まい子さん)
私は基本的に舞台のときすごく緊張するんですよ。
音楽がかかると結構子どもたちも集中しているなと思います。何かびっくりするような声を出したりとかっていうのは今までいなかったですよ。
かえって、開演前に、「すごいと思ったら拍手してね」と話すと、大人よりもずっと素直にすごいところはすごいって言って拍手してくれたり、ちょっと歓声が聞こえたり…そのおかげですごく心が和むというか、リラックスできたりもしています。
ダンサーからそういってもらえたら安心!
くるみ割り人形親子鑑賞をはじめたきっかけ、思い
We Love Ballet 実行委員会では2011年からクリスマスシーズンの「くるみ割り人形」の親子鑑賞を続けてきました。
初回から、演出や振付に携わり、今回も芸術監督を務めるのが桝谷博子さん。
かつては東京でバレエ団に入団し、世界の舞台にも上がりましたが、いつも気にかけていることがあったといいます。
桝谷博子さん)
生の舞台を観られる機会というのはやっぱり限られているなと感じていました。特に、これから育っていく子どもたちに、このバレエという「総合芸術」に触れてほしいなと。
美しいものをみて、美しいと感じる。心を豊かにする体験をしてほしいと常々思っていました。
「いつか北海道に戻ったら、バレエを観たことがない子どもたちが来られる舞台を作りたい」
そうして青少年向けに無料でバレエの観劇の機会を設けるなどの活動を続けてきました。
動画を検索すれば、なんでも見ることのできる今の時代。
それでも「生の舞台」に小さいときから触れることのすばらしさを桝谷さんはアピールします。
桝谷博子さん)
舞台に上がっているダンサーの息遣いもわかる距離感というのはやはり「生」だからこそです。もちろんダンサーも、お客さんの息遣いを感じながら、その日そのときだけの舞台を作り上げるんです。
「きれいだな」というのは、動画を見るだけでもわかるかもしれませんが、生で観ることはそれ以上のものを「一緒に語れる」すばらしさがあります。
桝谷さんの娘であり、今回の「くるみ割り人形」で主人公のクララ/金平糖の精を演じる桝谷まい子さんも、子どもたちへの思いを話してくれました。
桝谷まい子さん)
私たちも大好きなバレエ、大好きな芸術だから、子どもたちには、観ないうちに大人にならないで欲しいって思っています。
今は映像やネットで見られる機会はあるのかもしれないけど、小さいうちに素敵だなとか、かっこいいなとかきれいだなっていうのを、間近で、舞台の臨場感を味わってぜひみてほしいです。
例えば、そうして舞台にふれた子がそれを覚えていていつかお母さんになったときに、「私もこの子に見せてあげたい」っていうふうに繋がっていったらいいな。
ほかの舞台にはない、バレエの魅力
「総合芸術」だというバレエは、しなやかさや繊細さ、ダイナミックさにあふれたダンスはもちろんのこと、オーケストラなどの生演奏や合唱など、音楽と一体となって鑑賞することができるのが大きな特徴。
桝谷博子さんも「音楽あってのバレエです」とその重要性を語ります。
今回、くるみ割り王子の役を務める清水健太さんも音楽との一体感に注目してほしいと話します。
清水健太さん)
オーケストラとの共演となると、スピーカーからの音ではない音が聞こえるので、もう本当に劇場内でしか味わえない体験です。
スピーカーから聞いてると「何の音だろう」ってわからないけど、目の前で演奏してくれるわけだから、「こういう楽器の音なんだ」とかそういう部分もすごく楽しんでもらえると思いますよ。
また、大勢が一度に舞台に上がるという面でも魅力があると桝谷まい子さんは話します。
桝谷まい子さん)
バレエの魅力はやっぱり1人でやるものではないということ。
ソロで踊ることはあるけれども、絶対周りに人がいて、いろんな人の力で舞台が成り立っている。いろんな人に出会って、いろんな作品をやらせてもらう…本当に出会いに感謝することばかりです。
観る側だけではない、出る側のためにも…
2011年から続く、「くるみ割り人形」の舞台。
バレエを観る人の裾野を広げるという意味も大きいのですが、実はもうひとつ、大切にしていることがあります。
それが、「ダンサーの活躍する場を作る」こと。
今回の舞台では下は10歳、上は50代まで総勢100人以上が躍動します。
桝谷博子さん)
やっぱり舞台という目標があるというのはとても大切です。そういう輝く場所を目指して頑張れる。
その機会をダンサーに作りたい、北海道で作りたいという思いがあります。
今回舞台に立つメンバーの多くは北海道で暮らすダンサー。
子どもたちの中には、かつてこのクリスマス公演の「くるみ割り人形」を観劇したことをきっかけにバレエを始めて、この舞台に上がることを夢見て練習に励む子も少なくありません。
今回、親子鑑賞の回でクララの役を務める齋藤楓さんもその一人。
5歳のとき、初めてバレエの世界に触れたのが、この「Farewellのくるみ割り人形」でした。
齋藤楓さん)
きれいな衣装を着て、舞台でキラキラと輝いているダンサーの方々の姿を観て、「私もこんな風に踊りたい!」と思ったのを今でも覚えています。
終わったあとには「金平糖の精」を踊っていた、桝谷まい子先生と写真を撮っていただいたこともとても嬉しかったです。
そんな桝谷まい子さんと、今回同じ舞台に、同じ役でバトンを渡すこととなる齋藤さん。
齋藤楓さん)
すごく光栄だし、 小さいころから何度も観ていたFarewellの舞台に、ずっと憧れていたクララ役で出演することができ、本当に夢のようでうれしいです。
お客様に舞台を楽しんでいただけるよう、日々の練習を頑張ります。
清水健太さんは、こうして、バレエを習う子どもたちが頑張る姿にプロとしても刺激を受けているといいます。
清水健太さん)
舞台にあがるダンサーも下は10歳から参加しているのでそういう舞台は一体感があります。これがとてもうれしいです。
プロばっかりだったら当たり前のことだけど、子どもたちもそれぞれ責任を持ってやっているというのを感じると、僕らも頑張らないとと力をもらえます。
桝谷まい子さん)
実は北海道出身のバレエダンサーは少なくないけれど、バレエ団もない、活躍する場がどうしても少なくて外に出ていってしまうんですよね。
ほかの仕事をしながら、子どもたちに教えながらやっぱりバレエが大好きだからと続けている人がいる。バレエ団に入るっていうのはやっぱり一握りの人たちだとそうじゃなくてもそうやって大人になってからでもこれを続けられるっていうことが幸せだなっていう人たちの集まりなのでそういう人が報われる環境が地元の北海道でも整っていければいいなと思っています。
回を重ねるごとに…
桝谷博子さん)
お母さんとお子さん、というだけでなく、お父さんがお子さんを連れてきてくれるケースも少しずつ増えているんです。これはとてもうれしいこと。
海外に滞在していると、クリスマスの時期になれば、きれいにドレスを着せてもらって、子どもたちがお母さんと一緒に舞台を観にやってくるんですよ。その光景をすごく覚えていて。
札幌のマチにはきっとこの光景が似合うなと思って夢見てきたんです。
そうすると、6年目くらいかな、西11丁目の駅から教育文化会館までをたくさんの親子が楽しそうに手をつないで連なってやってきてくれる光景が生まれていて。
その景色が私は本当にいちばんうれしいんです。
「毎年クリスマスの家族の恒例行事」の一つとして、これからも根付いていってほしいと願っています。
Farewell 2024『くるみ割り人形』
今回の「Farewell 2024『くるみ割り人形』」は子どもと一緒でも、初めてでも訪れやすいようにと、チケット価格もかなり良心的に。
2日間の公演で、12月4日の夜と12月5日の昼の公演が「親子鑑賞」の対象になりますが、全席自由。
12月5日は幼稚園などの団体も受け入れる予定で、親子ペアの料金は2500円です。
上演時間は約2時間ですが、間に休憩をはさむので「子どもが座っていられるだろうか…」と心配なかたも少し安心ですね。
札幌の中でも、地下鉄からのアクセスもいい教育文化会館での全幕公演。ここ数年はコロナ禍で開催が難しい時期もあったため、3年ぶりとなります。
ちょっと早めのクリスマスプレゼントに…
親子で一緒に同じ感動を味わってみてはいかがでしょうか。
■Farewell 2024『くるみ割り人形』
場所:札幌市教育文化会館大ホール
日時:12月4日17時~(親子鑑賞)※カンマーフィルハーモニー札幌
12月5日11時~(親子鑑賞)
12月5日18時半~(全席指定)※カンマーフィルハーモニー札幌
料金:12月4日公演 親子ペア4000円 小学生以下1500円 大人3500円 ※4日のチケットは完売しています。
12月5日11時公演 親子ペア2500円 小学生以下1000円 大人1800円
12月5日18時半公演 指定席7000円
チケット販売:
・道新プレイガイド
・道新プレイガイド店頭
・市民交流プラザチケットセンター
・セイコーマートチケットサービス(セコマコードD24120402)
※4日のチケットは完売しています。
文:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は2024年11月の情報に基づきます。