能登半島地震から1年 それぞれの地域で「備える」 多摩・麻生の取り組みは
2024年元日午後4時10分、石川県能登地方を震源とする大きな地震が発生した。新年を迎えた矢先、「自然災害はいつどこで起きてもおかしくない」ということを改めて実感し、「備え」の重要性を再認識した人も多いだろう。能登半島地震から今日で1年。多摩区・麻生区の地域特性や行政の取り組みを紹介する。
市の地震被害想定で、M7・3の川崎市直下型地震が発生した場合、多摩区と麻生区は最大震度6弱の揺れが生じるとされる。人的被害想定は死者・負傷者がそれぞれ多摩区で58人・1463人、麻生区で43人・1148人。市南部と比べて北部は地盤が固く全般的に想定被害は小さいが、急傾斜地の崩壊による建物損壊などが多く発生すると予測されている。
「多摩区は多摩川に近い稲田エリアと多摩丘陵に位置する生田エリアに二分される。地震発生時に想定されるのは生田の土砂災害。傾斜地に建てられている家屋も多い。ハザードマップで自宅が警戒区域であるかどうか確認して対策を」と多摩区危機管理担当は話す。
多摩区では21カ所ある避難所の運営会議が独自に運営訓練を実施している。また、町内会・自治会には全部で140の自主防災組織があり、地震を想定した消火や救命などの訓練を行っている。
登戸の再開発などで新住民の増加が見込まれる中、区の担当者は「若い世代には、自分の住む地域の避難所がどこなのかわからないという人が多い。まずは避難所を確認して」と呼びかける。
加えて、市ではスマホでハザードマップの確認や災害情報、避難所情報の入手などができる「かわさき防災アプリ」を提供している。「こうしたツールも使って知識を得て災害に備えてほしい」と担当者は話す。
一方、麻生区の担当者は、住宅の耐震化はもちろん、家具などが倒れないようにすることや食料などの備蓄をしっかりと行う必要性を強調する。
また、能登半島地震では断水、停電などの影響でトイレが使えない状況が続き、避難所などの衛生問題が浮き彫りになった。市ではマンホールトイレや携帯トイレなど災害用トイレの備蓄に注力しているが、麻生区でも今年度、トイレ問題を特に力を入れて啓発。各地区の避難所運営検討会議の場や防災出前講座で、区職員が携帯トイレの組み立て方など使用方法を説明している。「麻生区は山坂が多く避難所に行くのも大変な場所もある。『在宅避難』ができるよう備えが必要。下水管が壊れ、トイレが使用できない問題が発生する。家で安全に過ごすためにトイレの備えは欠かせない」と区担当者。また同検討会議では話し合うだけでなく実際に避難所運営の手順も確認している。「鍵の保管場所や発電機の動かし方などやってみることが大切」と担当者は語った。