東京都歴史文化財団、コレクションの課題と新たな活用の取組を紹介
東京都美術館で開催中の「出張!江戸東京博物館」
さまざまなミュージアムで収蔵品が増加し、収蔵スペースの確保が課題となるなか、東京都歴史文化財団は、収蔵資料の保管や活用に焦点を当てた記者説明会を開催した。
説明会は「都立博物館・美術館のコレクションのあり方:新たな活用の取組紹介」と題し、2025年2月25日(火)に東京都美術館で開催されたもの。
東京都歴史文化財団は、都立の7つの文化施設(東京都江戸東京博物館、東京都美術館、東京都庭園美術館、東京都写真美術館、東京都現代美術館、東京文化会館、東京芸術劇場)を指定管理者として運営し、これらの施設が所蔵する資料は合計で約40万件にのぼる。館内の収蔵庫だけでは収まりきらず、一部を外部で保存・管理する事例もあり、東京都にとって収蔵スペースの確保は喫緊の課題となっている。
説明会には、佐々木秀彦氏(東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 企画課長・学芸員)、新田太郎氏(東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館 事業企画課長・学芸員)が登壇。
佐々木氏は、収蔵品の管理・活用の課題について言及し、今後の方向性として「各館共通の外部収蔵庫導入」や「資料の除籍・処分の検討」などを説明。従来、一度収蔵された資料の除籍や処分はタブー視されてきたが、英国などの海外事例を参考に、正当な手続きを経たうえでの除籍・処分は国際的な潮流の一つであると解説した。再評価および除籍のプロセスについては、外部の意見も取り入れて透明性を確保しながら、先行事例を参考に進めていく方針を示した。
一方で、国内の多くの公立ミュージアムが新規収集のための予算を確保できないなか、東京都では「今後も必要な資料の収集を継続する」との方針も説明された。
新田氏は、東京都江戸東京博物館における事例として、収蔵資料を「再評価」し、一部を「教育目的資料」として活用する手法を紹介。教育目的資料は体験型の展示に活用され、来館者が直接触れることができる機会を提供する。一方、文化財保存環境で管理すべき資料については、従来通り適切なスペースを確保し、適正に保管する方針を示した。
現在、東京都美術館で開催中の「出張!江戸東京博物館」(2月26日まで、観覧無料)では、江戸東京博物館が所蔵する一部の資料を実際に手に取って楽しむことができる。
佐々木秀彦氏(東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京 企画課長・学芸員)
新田太郎氏(東京都歴史文化財団 東京都江戸東京博物館 事業企画課長・学芸員)