毎日20分だけ1人の子どもの話を100%聞く【親子のクオリティタイム】で親子関係がみるみるよくなる
子どもとのコミュニケーションに問題を感じていませんか? 多くのリーダーを成功に導いてきた経営コンサルタントの赤羽雄二さんが、親子間でのアクティブリスニング法を詳しく解説。アクティブリスニング初心者にオススメの「親子のクオリティタイム」を紹介します。
「強制的な宿題はなし」でも自ら学ぶクラスへ〔子どもの主体性を信じた公立小学校教員の驚きの実践〕ビジネスの最前線で多くのリーダーを成功に導いてきた赤羽雄二さんが実践している「アクティブリスニング」は、相手の気持ちをくみ取りながら、問題解決につなげることができるコミュニケーション方法です。赤羽さんは、このテクニックが家庭でのコミュニケーションにも効果を発揮すると推奨しています。連載第2回は、アクティブリスニング初心者にオススメの「親子のクオリティタイム」を紹介。それを通じて、子どもと信頼関係を深める具体的なコミュニケーション術を紹介します(全3回の2回目)。
初心者にオススメの「親子のクオリティタイム」って何?
アクティブリスニングによって、「無口だった子どもが、幼稚園での様子をたくさん話してくれるようになった」「子どもが自分の考えをきちんと伝えられるようになった」など、うれしい変化が赤羽さんのもとには届いているといいます。 そのアクティブリスニングの最初の一歩、「親子のクオリティタイム」とは、どのようなものなのでしょうか?
アクティブリスニングの実践について、赤羽さんは次のように解説します。
「アクティブリスニングを親御さんに紹介しても、『アクティブリスニングをしたくてもできない!』という悩みをたくさん聞きます。ですが、安心してください。最初はきっかけがつかめず、できない方が大半です」(赤羽さん)
アクティブリスニング初心者やきっかけがつかめない方にオススメなのが、「親子のクオリティタイム」を持つことです。
「『親子のクオリティタイム』とは、どんなに忙しくても、毎日20分だけ、1人の子どもの話を100%聞く、という時間のことをいいます。子どもが3人いたら、順番に1人20分ずつ話を聞きます。
わずか20分ですが、100%集中することで子どもは満足しますし、もしきょうだいがいて順番を待っている子が出ても、1人20分という制限時間があるので、次の子はおとなしく待っていてくれるのであまり問題は起きません。
親御さんから『20分間は、子どもの希望に合わせて一緒にゲームをしながら会話をしてもいいですか?』とよく聞かれるのですが、『親子のクオリティタイム』中はあくまで話を聞くことに集中してください。
一緒にゲームや体を動かして遊ぶことは楽しいし、盛り上がると思いますが、それとは別に考えましょう」(赤羽さん)
「チケット制」で親子のコミュニケーションをさらに深められる
親子間のコミュニケーションの質を向上させるには、前述した「親子のクオリティタイム」を持つことが有効ですが、それに加えて「チケット制」も赤羽さんはオススメしています。
「子どもによっては20分間の会話では足りないときがあります。そこで柔軟に対応できる方法が『チケット制』です。
たとえば、2人きょうだいの場合。最初に『親子のクオリティタイム』が終わってしまった子からまだ話し足りないといわれたときは、〈○○ちゃん(くん)5:40~6:00〉などと書いたメモや付箋を渡して、2人目の子どものあとにもう一度、別の時間を取ることを約束します。
これをすれば、2人目の子どもとの時間を軽んじることなく、もっと話したい子どもとも充実した時間を持つことができます。
また、チケット制は、親御さんがどうしても手が離せないときにも有効です。子どもが『ママ~(パパ~)』と突然、話しかけてきたときに手が離せない場合は、『今はちょっと手が離せないけど、4時から時間をとるから待っていてね』と伝えて〈○○ちゃん(くん)4:00~4:10〉などと書いたメモや付箋を子どもに渡します。
それだけのことですが、子どもはおとなしく待ち、その時間になると目を輝かせて親御さんのところに来る、というものです。いつも慌ただしいママ、パパにとって、大変役立つ方法です」(赤羽さん)
赤羽さんは、「そんなに聞き分けがいいのかと不思議になるくらい、『親子のクオリティタイム』とセットにした『チケット制』は効果的だ」といいます。ぜひ、ご家庭で試してみてください。
「親子のクオリティタイム」は親子で向き合う、かけがえのない時間。 写真:アフロ
「親子のクオリティタイム」の代わりになるものとは?
毎日20分の時間を大切にすることは十分理解できましたが、学年が上がるとお稽古ごとや塾で子どもも忙しくなり、特に共働きのママ、パパにとってはハードルが高く感じられるかもしれません。
では、たとえば「お風呂に一緒に入ったときや寝るときに話す」のは、1対1で向き合って話すという「親子のクオリティタイム」の代わりになるのでしょうか。
「実は、20分間の親子のクオリティタイムの代替にはあまりなりません。子どもも忙しい上にママ、パパも時間に追われているのはわかりますが、最低時間が毎日20分だと考えて、しっかりと時間をとっていただきたいです。
1人の子に『わずか20分』です。親御さんには『親子のクオリティタイム』を始める前は1人20分間は負担に思える時間かもしれませんが、子どもと向き合い、会話を通じて我が子の日常や成長を知ることができます。面倒というよりも、しだいに楽しさを感じられるようになるはずです」(赤羽さん)
「親子のクオリティタイム」は、親御さんが1人の子どもとしっかり向き合って、その子の意見や考えを聞くので、これまできょうだいいじめや余計ないたずらがあったのなら減るメリットもあると赤羽さんはいいます。
「さらに、親御さんが子どもの話をさえぎらずに最後まで聞くことで、子どもは『私(ぼく)のことをママ、パパは受け入れてくれる』という安心感を得ます。
この安心感が自己肯定感へとつながり、『なんでも挑戦してみよう』という前向きな気持ちを育むのです。自主的に勉強を始めるといった効果も期待できるので、20分の投資は十二分におつりがきます。
『親子のクオリティタイム』が効果を発揮するのは、小学6年生くらいまでかもしれません。毎日の20分が長く思える親御さんもいますが、子育て全体で考えるとそれはとても短い時間です。期間限定の特別なときだと思って、どうか20分間を子どもと一緒にすごしてほしいと思います」(赤羽さん)
次回は、アクティブリスニングがどうしてもうまくいかないと感じる親御さんへのアドバイスを紹介します。
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◆赤羽 雄二(あかば ゆうじ)
ブレークスルーパートナーズ株式会社・マネージングディレクター。東京大学工学部を1978年に卒業後、小松製作所で建設現場用ダンプトラックの設計・開発に携わる。1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。経営戦略の立案と実行支援、新組織の設計と導入、マーケティング、新事業立ち上げなど多数のプロジェクトをリードする。1990年にはマッキンゼーソウルオフィスをゼロから立ち上げ、120名強に成長させる原動力となるとともに、韓国企業、特にLGグループの世界的な躍進を支えた。2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。近年は、大企業の経営改革、経営人材育成、新事業創出、オープンイノベーションにも積極的に取り組んでいる。著書に『ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング』『速さは全てを解決する 「ゼロ秒思考」の仕事術』(ダイヤモンド社)、『自己満足ではない「徹底的に聞く」技術』(日本実業出版社)、『マンガでわかる! マッキンゼー式ロジカルシンキング』(宝島社)など国内28冊、海外30冊出版、計138万部。
取材・文 瀧 千登勢