中四国最大「あなぶきアリーナ香川」オープンを祝う、音楽フェス『Hello Arena 2025』にスカパラ、10-FEET、ホルモン、ビーバー、WurtSが豪華饗宴
『Hello Arena 2025』2025.3.8(SAT)あなぶきアリーナ香川
香川・高松に新しくオープンした「あなぶきアリーナ香川」で、2025年3月8日(土)・9日(日)の2日間にわたって、音楽イベント『Hello Arena 2025』が開催された。「あなぶきアリーナ香川」(以下、あなぶきアリーナ)は中四国最大のアリーナとして2月24日にオープン。メインアリーナは最大収容人数1万人、全国でも”駅から最も近いアリーナ“として注目を集めている(詳細についてははこちらをチェック!https://spice.eplus.jp/articles/335757)。本イベントはアリーナの杮落としイベントの一環として開催されたもので、同じ香川・高松で野外ロックフェス『MONSTER baSH』や商店街のライブハウスを回るサーキット型イベント『SANUKI ROCK COLOSSEUM』を手掛ける四国のイベンター・DUKEが主催。
イベント初日にはWurtS、10-FEET、SUPER BEAVER、マキシマム ザ ホルモン、東京スカパラダイスオーケストラが出演。2日目にはDURDN、ヤングスキニー、MONGOL800、Saucy Dog、マカロニえんぴつ、氣志團が出演した。会場には地元・香川はもちろん、四国や中国、関西地方、果ては海外からも観客が集まり、高松の街は大きな賑わいをみせていた。今回、SPICE編集部では2日間に渡って繰り広げられた饗宴の模様をレポート。会場の雰囲気と合わせて、お伝えしたい。
会場に向かうため、JR高松駅を降りるとすでに街の雰囲気が“お祭り”感いっぱいの賑わいを見せていた。以前に掲載された会場レポートでも記したように、アリーナはとにかく駅チカ!! 駅を出て会場へ向かう道中には「え…!? めちゃくちゃ近い!」「駅から会場が見えてる!」と、アクセスの良さに驚く人の声も聞こえるほどで、徒歩5分もかからずにあっという間に会場に到着。メインアリーナの反対側にあるサブアリーナでは、入場パスの交換やグッズ販売などが行われ、ライブ会場となるメインアリーナはすぐ目の前ということもあって、開演まで観客はみな思い思いの時間を過ごしている。
開演前にはイベンター・DUKEのスタッフが「ついに四国にアリーナができました!」と、前説で登壇。『Hello Arena 2025』に懸ける思いはもちろん、アーティストのライブツアーにおいて四国地方は公演に含まれない、いわゆる“四国飛ばし”があることに悔しい思いをしてきたと語る。四国にもっとたくさんのアーティストに、観客に足を運んでもらうために『MONSTER baSH』や『SANUKI ROCK COLOSSEUM』を開催してきたこと。そして今回のあなぶきアリーナがオープンしたことで、さらに新しい音楽、人に出会える場所になればと『Hello Arena』というイベントタイトルを名付けたと、イベントに懸ける思いを語った。
いよいよ開演の時刻を迎え、スクリーンにオープニング映像が映される。映像にはうどんやお遍路さん、瀬戸大橋、オリーブといった香川自慢のコンテンツの数々が映される。そこに今回新たに加わる「駅が近くて便利なフェス」の言葉とイベントロゴに会場から歓声が沸き起こる。
WurtS
記念すべきイベント初日のトップバッターはWurtS。「ライフスタイル」から重低音を効かせたダンサブルなサウンドでフロアを揺さぶっていく。足元からガシガシと音が響くのも心地よくて、初っ端からアリーナの音の響きに驚かされてしまう。真正面からぶつかる音も気持ちよくて、変幻自在なビートに魅せられ、観客はみな思い思いに踊り出す。「高松、良いですね! みんな踊ってくれますか!」と、「SWAM」でさらにご機嫌度合いをアップさせた楽曲でフロアを沸かす。まるでクラブのように、広い会場に光が交錯するレーザー演出もばっちりハマっている。
「みんなまだまだ踊れますか! ついてこれますか!」。軽快なビートがさらにヒートアップしていくのに、ふわりとライトに脱力したボーカルがなんとも言えない中毒性を醸し出していく。完全にクラブ化したアリーナを「もっと!もっと!」と煽りまくるWurtS。「コズミック」「Talking Box(Dirty Pop Remix)」の流れも抜群に気持ちがよくって、踊りながらスタンド席に入ってくる観客の姿も見える。
「アリーナができるって一大事だよね? 楽しみにしてくれてたんだよね。みんなの盛り上がりが初めてじゃないみたいで嬉しかった」と、イベント出演に感謝の気持ちを伝える彼。トップバッターということもあって、『Hello Arena』をもっと呼びやすく、”ハロアリ”で呼び合おうと、観客の気持ちを高めると、「BOY MEETS GIRL」「NERVEs」でアイロニーたっぷりなラップやトキシックなトラックでフロアを心酔させる。「NOISE」「マイティーマイノリティ」と、顔は見えないけれど、多彩なバンドサウンドでいろんな表情を見せていく彼。ぐっと熱を高めるギター、矢継ぎ早に繰り広げられるリリックで、フロアの熱量はさらに上昇。
「分かってないよ」ではおなじみのギターリフであっという間にハンズクラップが沸き起こるなか、バンドメンバーもDJウサギもこれでもかとポップなサウンドを押し出していく。盛大なシンガロングに、スクリーンにちらりと映るWurtSの口元は笑みを浮かべているようにも見える。ラストは「リトルダンサー」で「ハロアリ、歌えますか!最後まで歌って踊って最高の1日にしましょう!」と、とことん“気持ちいい”を追求したサウンドでトッパーを駆け抜けた。
10-FEET
バンドタオルが一面に掲げられる景色がアリーナいっぱいに広がるなか、TAKUMA(Vo.Gt)は「あんたらと心中するような気持ちで来てるから。行けるとこまでいきましょう!(今日は)全員にとって一生に一度のライブなんやから。同じ日は二度とない」、その言葉の後に鳴り響く「RIVER」のギターリフで、一斉にアリーナ中から歓声が沸き起こる。「さぁ、香川。どんな場所? どんな願いをもって今日、どこまでいけるかな? めっちゃ静かなバラードをやるんで、座って観てください。どうぞ!」と言いながら打ち出したのは「goes on」。KOUICHI(Dr.Cho)のドカドカ腹に刺さるような剛毅なビート、NAOKI(Ba.Vo)のご機嫌なベースラインがたまらなく気持ちいい。
「ここでこのまま死んでしまうくらいの勢いでいきます!」、「VIBES BY VIBES」でがなるように歌うTAKUMAの歌声に心を鷲掴みされてしまう。「バンドのツアーやフェスとか関係ない。今日が今までで一番。もうあんなライブできひん!ってなるようなライブを。“あれが一番ヤバかったよな”みたいなライブを! どんどんいくぞ!」、昂る気持ちをそのまま音にぶつけていく3人。
ライブ後半、昨年末にKOUICHIが手術により公演の見送りや延期があったことに触れつつ、「すぐ病院行きや。何回行っても大丈夫。大げさでバカにされても、今生きてる人はそんな人ばっかり。かっこいい人はすぐ死んじゃう。カッコ悪めにいきましょう。長生きしてまたやろう。でも、この瞬間はみんなと一緒に死ぬくらいの気持ちで来てる。心中するくらいの気持ちでいこか」と、「その向こうへ」からさらに熱量を上げていく3人。何度も前のめりになりながら観客を煽り、必死に足掻き、時に泣き叫ぶように歌い、音を鳴らしていく。「第ゼロ感」何度もピークを生み出し、暴発するようなテンションを作り上げていく。
ライブ終盤には予定していた曲を1つ削り、想いを共有すればもっと生きやすい未来があるはずと、思いのたけを叫ぶTAKUMA。「もっと生きてるうちにまたやりたいな、このイベント。どうせ(人は誰しも)骨になるねん!もったいないぞ。恥ずかしがんな。もっと来い!」、とラスト「蜃気楼」へ。涙を浮かべながら共に歌う人、ただ立ち尽くして拳を突き上げる人。全力で”ライブ”するバンドと観客の姿に魅せられたステージだった。
メインアリーナで音楽が鳴り響くなか、お隣のサブアリーナではチケットパスの交換やグッズ販売だけでなく、地元・香川のKBS瀬戸内放送のグルメ情報番組「ヒルペコ」からフードテントが登場。この日のサブアリーナは入場無料ということもあって、イベントの雰囲気を楽しみたい人、グッズを買いにきた人などたくさんの人で終日大賑わい。
フードテントでお目当てのグルメを手にした人はサブアリーナで休憩を取るのはもちろん、会場の目の前は瀬戸内の海が広がっていることから、海を望みながらのんびりとした時間を過ごす人の姿も。また、メインアリーナ内にはカフェもオープン。メインアリーナには音を遮る壁がないことから、休憩しながらも臨場感たっぷりのライブを聴くことができるのもあなぶきアリーナの特徴だ。
SUPER BEAVER
「アリーナ、おめでとうございます! あなたが楽しんでくれたらそれでいい。あなたに言わなきゃいけないことがある」と、1曲目は「アイラヴユー」。1曲目から真っ直ぐな告白で観客の心を鷲掴みしていく4人。盛大なハンズクラップが沸き起こり、アリーナ中に「愛してる!」の声が響き渡るも、まだまだ物足りないと言わんばかりに藤原“36才”広明(Dr)のエネルギッシュなビートが鼓動を高めていく。
「”ちょっとここ、すごいんじゃない?”って言わせたい。オレたちが最高の歌を作るんじゃない。オレたち“で”最高の歌を作るんですよ!」と、「ひたむき」へ。柳沢亮太(Gt)の紡ぐギターがじわじわと心情を熱く高めていく。「記念すべきイベントに呼んでもらえることは光栄。音楽の可能性が増えていくのは素敵なことだと思っています。でも、呼んでもらうのは当たり前じゃない。一瞬々々が、一音々々が勝負。4人で鳴らす音楽はしょうもない。あなたと一緒にド派手に!」。4人+αで無限のライブを作り上げようと、渋谷龍太(Vo)が大きく息を吸い、ひと小節を歌うだけで大合唱が沸き起こったのが「美しい日」だ。この瞬間、この空間で唯一無二の美しい時間を作り上げようとする4人。上杉研太(Ba)の心を鼓舞するようなエネルギッシュなベースラインに魅せられ、拳が高くつきあがる。歌詞の世界を踏襲するような、美しくも生命力に満ちた景色が広がり、サビのピークでは何ともいえない開放感が襲ってくる。
「めちゃくちゃ最高なんですけど、自覚あります?」、嬉しそうにフロアを見渡しながら、改めてライブに懸ける思いを伝える渋谷。「愚直に真っ直ぐに、あなたに刺さる音楽を。いまからやる曲は初めて演る曲。ワンマンまで取っておけばと思ったけど、そうじゃない。せっかく香川であなたと音楽ができる。どこでいつ、じゃない。あなたの前だから」と、3月12日に発売した新シングル「片想い」をいち早く披露。スクリーンに歌詞が映り、観客は言葉をしっかり心に留めようとじっと静かに魅入っている。
ステージ後半、「青い春」「切望」と、シンプルなバンドサウンドを打ち鳴らし、<笑顔の渦を作りたい>という歌詞の言葉まんまの世界を作り上げていく4人。歓声はより大きくなり、この最高の時間を終わらせたくない、そんな気持ちが伝わってくるステージだった。
マキシマム ザ ホルモン
熱いステージの連発で広い会場もじっとりと室温を上げるなか、マキシマム ザ ホルモンが「What's up,people?!」から貪欲な腹ペコたちにトドメを刺していく。ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)が豪快にシャウトを決めると、ナヲ(ドラムと女声と姉)のビシっと脳髄に刺さる重厚なビート、上ちゃん(4弦と歌とDANGER×FUTOSHI)の腹に響くベースラインが襲い掛かる。
ステージを観ているこちらの息が上がりそうなハイスピードな展開だが、重厚なリズムに反し、マキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)のポップでキャッチーなサウンドにのれるのがとにかく楽しくって仕方がない。眩しい閃光が交錯するなか、スクリーンにはメンバーの映像が震えるように映し出されているが、その映像まんま、観客の体を激しく震わせるサウンドが続く。「さぁ、まだまだ行くぞ!」で「『F』」ではアリーナ全体が一斉にヘドバンで大揺れ!
「は~い!アリーーーナーー!!って堂々と言えるじゃん!」と声高々と叫びつつ、ダイスケはんが地元出身ということもあり、バンドにとって高松は第二の故郷だと語るナヲ。杮落としイベントの一環として、あなぶきアリーナでのステージに出演できたことを喜びつつ、「何も染まっていないあなぶきアリーナで首を総とっかえする勢いで楽しんで!高松の中心から天下を取ってやる!」」とおなじみの「三度の飯より飯が好き!」を叫び、「maximum the hormone Ⅱ~これからの麺カタコッテリの話をしよう~」「シミ」を連投。オープンしたばかりのアリーナの耐久性や防音性を試すかのように、地を這うような超ド級の重厚感あるサウンドが響き渡る。
「うまいもん食べるには腹ペコにならなあかん!うまいもん食べる前に、爆音を浴びて帰れ!」と「G'old~en~Guy」「ROLLING1000tOON」など、カロリー消費しまくり、ヘビーでタフ、狂喜乱舞しまくりのナンバーを連投。最後は「アリーナ全員バカになれ!」と、トドメは「恋のスペルマ」! 栄養満点、ハイカロリーなパフォーマンスの連続に拍手喝采が送られた。
東京スカパラダイスオーケストラ
初日のトリを務めるのは東京スカパラダイスオーケストラ。緊張感を煽るいつものSEが鳴るだけでフロアのテンションがぐっと高まるのを肌で感じる。「We Are 東京スカパラダイスオーケストラ! 行くぞ、高松!」と声高々に叫ぶと、「太陽にお願い~Wish Upon the Sun~」から荒々しさの中にも色香たっぷりのスカサウンドを放っていく。沖祐市(Key)のメロ、NARGO(Trumpet)、北原雅彦(Trombone)、GAMO(Tenor sax)、谷中敦(Bariton sax)の4人のホーンもバンドの音を一層ゴージャスに魅せていく。
「まだまだ踊れるか、香川!」の煽りのひと言で加藤隆志(Gt)のギターが心のど真ん中を爽快に突き抜けていく。感情を開放しきった観客の表情はとにかく多幸感いっぱいで、タオルを振り回し、両手を掲げて、全身で音を浴びている。“楽しんだもん勝ち”、そんな気持ちが存分に伝わってくる。その盛り上がりはステージからもよく見えているようで「すごい盛り上がり! これからここで様々な良いことが起きるんだろうね♪ みんなポジティブなエネルギーに、幸せな力で満ち溢れてるよ。戦うように楽しんでくれ!」、谷中があなぶきアリーナがここから大いに盛り上がってほしいと想いを語り、「追い越してく星」では茂木欣一(Dr)がご機嫌に歌い、川上つよし(Ba)も軽快なリズムを弾き出していく。さらに、「天空橋」では大森はじめ(Per)の盆踊り的に躍らせる爽快なパーカッションでフロアは大盛り上がり。
昨年でデビュー35周年を迎えた彼らにとって、初めてのステージでも”気持ちいいポイント”を見つけるのはいとも容易くて「スキャラバン」「DOWN BEAT STOMP」など、極上のスカサウンドで誰も彼もを自由気ままに踊らせてしまう。その楽しさはバンド仲間にも通じていて、ステージ中盤はゲストボーカルを迎えての贅沢なコラボで観客を大いに楽しませてくれた。まずはマキシマム ザ ホルモンからナヲ&ダイスケはんが加わり、”サヌキスカパラダイスオーケストラ”で「恋のメガラバ」を。さらに10-FEETのTAKUMAとともに「第ゼロ感」をコラボ! スカパラといえばゲストボーカルコラボとのコラボ。この日のステージでも期待はしていたけれど、まさかのコラボ相手のオリジナル曲でのパフォーマンスに観客は大喜び。
「帰りたくないね。もっと名残惜しい夜に!」、TAKUMAが名残惜しそうに言葉を漏らし「風に戦ぐブルーズ」へと繋ぎ、いまこの瞬間の気持ち良さをぎゅっと音に詰め込んでいく。ラストは「もうひと盛り上がりしようぜ!」と「Paradice Has No Border」で抜群のスカパラサウンドに魅せられ、観客はもちろん、ダイスケはん&ナヲ&TAKUMAも再登場! アンコールでは「Dale Dale!~ダレ・ダレ!~」で盛大に踊り明かしたあと、「本当に幸せです!ありがとう!帰る時も幸せでいてね。これからも幸せでいてね。また会おうね!」と、その場にいた観客みんなの気持ちを代弁するようなメッセージを残し、『Hello Arena』初日の幕が閉じた。
取材・文=黒田奈保子 写真=『Hello Arena 2025』提供