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劇場サイズの大きな大きな絵巻物を広げていこう~佐藤流司、高橋克典、花總まりら出演の舞台『応天の門』が開幕

SPICE

舞台『応天の門』取材会より

2014年12月4日(水)、東京・明治座にて舞台『応天の門』がその幕を開けた。平安時代を舞台に菅原道真と在原業平がバディを組み怪事件に挑む本作、妖しく雅な京の街が、舞台上に見事に出現した。

ゲネプロレポート

暗くなった場内に大きく鐘の音が響く。その瞬間、気持ちがスッと平安時代へと引き込まれていくような感覚を覚える。さあ、劇場サイズの大きな大きな絵巻物を広げていこう。

始まりは逢瀬の帰りに夜更けの街道を歩く在原業平と、屋根の上に座り込み月明かりの下読書に耽る菅原道真との“運命の出会い”から。業平を演じる高橋克典の身も心もハンサムな佇まいと、道真を演じる佐藤流司の賢いが少し拗ねてもいる少年像、それぞれのキャラクターの個性が一瞬で伝わってくるファーストシーンは印象的だ。そこから華麗なキャストパレード、そして、道真の学友・紀長谷雄が平安京のジオラマを眺めつつ時代背景を解説していく流れもスムーズ。中村莟玉演じる長谷雄は愛すべき問題児、よきスパイスとして業平と道真に絡んでいく存在だ。

菅原道真役:佐藤流司

在原業平役:高橋克典

道真が最初に巻き込まれるのは、近頃世間を騒がせている“下女失踪事件”。成り行きで女主人・昭姫が取り仕切る遊技場に足を踏み入れたことで解決の糸口を見出した道真の大胆な思いつきが、見事事件の真相を暴くのだった。花總まり演じる渡来人の昭姫は麗しさと気風の良さを備えたミステリアスな女性。登場するたびに舞台上が華やかになり、何かと道真たちをサポートしてくれる、謎解きにも欠かせない魅力的なキーパーソンである。

昭姫役:花總まり

物語は4つの章で組み立てられ、それぞれに家族の問題、政に関わる恐ろしい企み、趣味人の欲深さと密やかな悲恋の思い出など、どれも「妖の仕業かと思えば人間の業が生み出したいざこざであった」という事件が語られていく。騒動の匂いがするたび、好奇心と人情を発露に溌剌と行動する業平と、知恵と学びから紐解けない事象はないと頭脳を発揮する道真。まだ若く可能性に満ちた道真を「世の中、机上だけではわからないものがある」と実践の場に誘う業平に反し、実践を経験するほどに「机上だけではわからないものがある。自分はまだまだ青く無力だ」と打ちのめされ、さらに知識を身につけ前に進もうとする道真。導く者と導かれる者が組んだ時に生まれるケミストリー、周囲を巻き込んでいく予想外のドラマティックな展開はとても濃厚で、時代モノでありながら非常に現代的な面白さにも満ちている。

紀長谷雄役:中村莟玉

白梅役:高崎かなみ

藤原基経役:本田礼生

盆を多用し、京の街、屋敷の廊下、遊技場、帝の邸宅、雅な庭先などなど次々に変化していく場面を滑らかに切り替えていく視覚的な面白さと、笙の音色や鳥の声、低く深い祈祷の響きなど、主張しすぎずともしっかりと耳が捉えていく音の効果も心地よく、それらが「全ては見えないけれど確かに何かが存在しているような」“気配”あふれる道真たちの時代にとても似合っている。夜の闇や月明かり、桜が浮き上がるような発光といった光の美しさとともに、こちらのイマジネーションが大いに刺激される。

伴中庸役:白石隼也

小藤役:坂本澪香

藤原良房役:青山良彦

また、平安の人々が醸し出すタイム感から「この時代は腕力でわからせるというよりも、言葉を駆使して事を進めるのが得意なのだろう」という想像もつき、だからこそ道真の推理力が生きる世の中であるのかもしれない、とも思い至る。食えない大人たちや理解に苦しむ世の中のルールを決して無視できない道真と、その在り方に希望を見出している業平。これは新しいタイプのエンターテインメント、幅広い層にも支持される新感覚の時代劇である。ふたりがまだまだこの先出くわすであろう“厄介ごと”とその解決策、もう少し見てみたいと思った。

源融役:篠井英介

伴善男役:西岡德馬

ゲネプロ終了後に行われた取材会には役衣装に身を包んだ佐藤流司(菅原道真)、高橋克典(在原業平)、中村莟玉(紀長谷雄)、高崎かなみ(白梅)、本田礼生(藤原基経)、白石隼也(伴仲庸)、坂本澪香(小藤)、青山良彦(藤原良房)、篠井英介(源融)、西岡德馬(伴善男)、花總まり(昭姫)が出席。一言ずつ挨拶をした後、自身のキャラクターについてや見どころについての質問に答え、「悪そうな顔をしていますが、原作はもっと悪い顔なんですよ(笑)」(西岡)、「この1ヶ月半のお稽古、本当に頑張りました。みなさんとても素敵なキャラクターばかりです」(篠井)、「劇場でご覧になっていろいろ驚いて楽しんでいただきたいので、ここではネタバレはなしで」(花總)といったコメントが。また「見どころはそれはもう全部。平安時代はいつもの時代劇とはムードが違い、どこか色っぽい。事件モノでもありますし、いろんな意味で楽しんでいただける、少し若いお客様にも観てもらえる作品になっています」と高橋が作品全体について語り、佐藤が「見た目の美しさ、高貴で妖艶であることが大事な時代。素晴らしい装束の動きづらさもむしろ風流で、そこも現代の劇とは違う楽しさなのかな。花道や盆、スッポンなど明治座ならではの機構も見どころだと思います。濃厚な作品になっています」と全体を締め括った。

取材・文=横澤由香

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