【コラム】第4回「インバウンド旋風と外国人雇用」 勝島一真(税理士・行政書士)
スキー場には外国人観光客が多く訪れている(写真はイメージ)
ビジネスカツシマの勝島一真です。本年もよろしくお願いいたします。令和の時代も気が付けば7年ととてもはやいものです。今シーズンは例年とくらべるとスキー場には雪がしっかり降っていてスキーを楽しむには十分な積雪量となっています。ゲレンデは当然のことながら、夜になるとスキー場近くの温泉街には食事やお酒を楽しみ陽気になった外国人観光客が道を埋め尽くすように歩いています。外国人観光客は特にスキーシーズンは比較的長期で滞在する傾向があります。滞在中に山をくだり冬の荒れに荒れている日本海の写真をわざわざ撮りに出かける人たちもけっこういるそうです。私たちが当たり前と思う景色も外国の方から見ると、荒れている冬の日本海はいかにも日本らしく、葛飾北斎の描いた大波のように映りとても新鮮なのでしょう。
先日、日本政府観光局が発表した2024年の訪日外国人客数は47.1%増の3,686万9,900人となり、コロナ禍前の2019年の約3,188万人を超えて過去最多を記録したようですが、スキー場、温泉街をみればその数も納得します。
温泉街では12月からの約3か月間は冬季期間限定で営業する飲食店も加わりとても活気に満ち溢れています。私の小さいころの温泉街のイメージは、浴衣姿の人たちが下駄を履きカランコロン音をたてながら歩いている、酒場の中からカラオケを歌っているおじさんの歌声が聞こえてくるといういわゆる日本の古き良き温泉街のイメージでした。いまは看板が英語表記されている飲食店も多く、中からは盛り上がっている笑い声や話し声、そしてドスッドスッと重低音のきいた音が聞こえてきて、まるで外国にいるような気分になります。
妙高では大きなリゾート開発もひかえていることもあり、今後は益々外国人観光客をはじめ妙高市や上越市を居住やビジネスの拠点とする外国人の方が増えていくものと思われます。
パスポートとビザの違いってなに?日本のパスポート最強説!
ビジネスカツシマでは行政書士業務において外国人の「在留資格」支援、いわゆる“ビザの申請支援”をおこなっていることから外国人の方たちから色々な相談を受けることがあります。
ビザって何?パスポートとビザの違いってなに?簡単にいうとパスポートは自分の国で発行された身分証明書、ビザ(在留資格)は渡航先の国で発行される入国許可証といったところでしょうか。
※厳密にいうと「ビザ」と「在留資格」は大きなくくりでは同じですが少しだけ別のものであり、ビザは日本に上陸するために必要なもので、在留資格は日本に滞在するために必要な資格となります。
基本的にはこのパスポートとビザ(在留資格)の両方を取得していないと外国に入ることができません。ただ日本はとても恵まれていて日本人はパスポートさえ取得していれば、2025年現在は193か国にビザなしで入国し90日程度は滞在することができます。このパスポートさえもっていれば、ビザ申請なしでいける国が多いという日本は実はとても恵まれているのです。2024年までは申請なしでいける国の数ランキング世界1位で、日本のパスポートは世界最強のパスポートと言われていましたが、2025年にどうやらシンガポール(195か国)に抜かれて世界2位になってしまったようです。ビザの仕事をするまではパスポートさえ持っていれば、どこの国の人たちも比較的自由に外国へ行けるものだと思っていました。
外国人の雇用について
第4回目となる今回は、外国人の雇用や在留資格についてテーマにしていきたいと思います。今は人手不足を解消するうえで、外国人の雇用を検討している経営者の方たちが増えている傾向があります。ただ現在の日本では外国人を雇用することはそんなに簡単なことではなく一定の手続きや審査を経たうえでないといわゆるビザ(在留資格)がおりず、ビザがおりないと外国人は日本に滞在することができないので働くことはできません。
ビザの仕事をするまでは外国人を雇用することは何らむずかしくなく、会社が採用した外国人であれば比較的簡単にビザがおりるものだとおもっていましたが、実際はそうではありませんでした。
外国人が日本に上陸、滞在する場合はいわゆる「入管法」で定められている29種類ほどある在留資格のいずれかに該当していなければ、日本に上陸、滞在することができません。
人口の多いエリアのコンビニエンスストアなどで買い物をすると外国の方がレジをしているのをよく目にすると思います。かならず皆さん29種類ある中の何かしらの在留資格をもって滞在しています。コンビニエンスストアで働く外国の方で多いのは「留学生」や「家族滞在」という種類の在留資格を持ち、限られた時間内でアルバイトをしているというパターンが比較的多いのではないかと思います。
外国人を雇用する方法の選択肢で主なものとしては、
A.永住者や日本人の配偶者を採用する。
B.技能実習制度や外国人材紹介会社などを活用する。
C.就労系の在留資格の手続きを行い雇用する。
私が感じている難易度は易しい順からABCの順ですが、それぞれメリットデメリットがあります。
Aについて
(メリット)
日本人を雇用する場合とほぼ同じなので雇用しやすい。
(デメリット)
永住者や日本人の配偶者の方でかつ会社で働いてくれる方となると見つけるのが大変かもしれない。
Bについて
(メリット)
雇用する会社と外国人との間に監理団体(組合)や紹介業者が入るので、間に入る団体や業者が煩雑な手続きをおこなってくれるため様々な手続きがとてもスムーズになる。
(デメリット)
間に入る監理団体(組合)や紹介業者に支払う支払手数料などのコストがかかる。
Cについて
(メリット)
コストは比較的おさえられ、定期的な更新をすることによって継続的な雇用が可能になる。またその方の家族を日本に呼び一緒に暮らすことができる可能性もある。
(デメリット)
入国管理局への申請にかなりの時間と労力を費やす。
雇用する側も雇用される側もそれぞれ自分の国の文化や慣習があります。お互いに切磋琢磨し助け合いの精神で尊重しあうことが外国人雇用における何より成功の秘訣といえます。
勝島一真
【プロフィール】
1976年生まれ。高校からアメリカンフットボールを始め、日本大学、株式会社オンワード樫山でアメフト選手として在籍。2002年税理士である父の急逝にともないアメリカンフットボールを引退し、株式会社勝島経営研究所に入社。その後、税理士法人ビジネスカツシマを設立し代表税理士に就任。税務・会計顧問業務のほか、開業支援や海外進出・M&A支援など様々な角度からのサポートを行う。
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