夢の実現へ弾みをつけた河村勇輝、NBAのMVPに肉薄した“たかちゃん” スタッツで振り返るパリ五輪男子バスケの奮闘
世界の強者相手に2部門で3位に食い込んだ河村勇輝
『第33回夏季オリンピック競技大会』が11日に閉幕。男子バスケットボール競技は“絶対王者”アメリカが大会5連覇の偉業を成し遂げた。
“フランスの笛”が話題を集めたように微妙な判定が物議を醸すシーンも多々あったが、地元フランスが決勝まで駒を進めたこともあってか、今大会の男女バスケットボールの観客動員数は計107万8319人を記録。『FIBA』によると、これは1996年アトランタ大会の106万8032人を上回る五輪史上最多の観客動員数となったという。
日本は実に48年ぶりとなる自力出場を果たし、さらに昨年のW杯で奮闘したチームにNBAで活躍する八村塁が加わることから大きな期待を背負って臨んだが、1次リーグは3戦全敗で終了。52年ぶりとなる五輪での勝利を掴むことは叶わなかった。
それでも、後に銀メダルを獲得するフランスに対して残り10秒までリードを奪い苦しめるなど、随所でポテンシャルの高さを発揮。奮闘の跡は個人スタッツランキングにもよく表れている。
今回のパリ五輪で最も世界に名前を売った日本人プレーヤーと言えば、やはり河村勇輝になるだろう。
山口県出身の23歳。パリ五輪直前の7月にはNBAのメンフィス・グリズリーズと「エグジビット10」契約を締結し、今秋のNBA入りを目指すことが決まった日本バスケ界の希望とも言える存在だ。
172センチと小柄な体格ながら、スピードとテクニックを活かしたパスだけでなく、自ら切り込んでの得点や3ポイントシュートも得意な万能型のポイントガード。このパリ五輪でも1試合の平均得点はチームトップの「20.3」を叩き出し、これは全体でも3位という好成績である。
それでいて、アシストでも全体3位タイの「7.7」をマーク。こちらはNBAで3度のMVPを獲得しているニコラ・ヨキッチ、最強軍団アメリカを束ねる“キング”レブロン・ジェームズに次ぐ全体3位タイという大健闘だった。
なかでもフランス戦の29得点・7リバウンド・6アシストは鮮烈なインパクトを残した。21世紀以降の五輪において、1試合で「25得点以上・5リバウンド以上・5アシスト以上」を記録したのは河村が4人目だったという。世界トップクラスのスーパースターたちに混じってこれだけの活躍ができたことは、夢のNBA挑戦に向けて大きな後押しとなるはずだ。
世界No.1と渡り合った“たかちゃん”
今回のパリ五輪でスタッツランキング上位に食い込んだのは河村だけではない。リバウンドランキングでは、ジョシュ・ホーキンソンが2位タイにランクインしている。
上にはNBAのMVPプレイヤーニコラ・ヨキッチ、同じ2位には昨季のNBAで史上6人目となる満票での新人王に輝いたビクター・ウェンバンヤマ。世界のトップ中のトップと並ぶ活躍を見せた。
アメリカ出身の29歳は、昨年2月に日本国籍を取得。昨夏のW杯では各チーム1枠だけ認められた国籍変更選手として日本代表に入り、48年ぶりとなる自力での五輪出場権獲得に大きく貢献した。
日本語も堪能で、明るいキャラクターからバラエティ番組やCMでも活躍。自身の名前に「ホーク(鷹)」が含まれることから、日本国籍取得時の日本名を「鷹大(たかひろ)」とし、“たかちゃん”の愛称で親しまれている。
ただし、コート上では笑顔を封印してゴール下に君臨。屈強な大男たちに負けないパワフルなプレーで日本のインサイドを支えた。
また、ブロックランキングでは渡邊雄太が2位タイにランクインした。
香川県出身の29歳、2018年にNBAデビューを果たした世界を知る男。東京五輪でも日の丸を背負って戦った日本の柱の一人である。
ホーキンソンはBリーグのサンロッカーズ渋谷所属で、渡邊は今季からBリーグの千葉ジェッツでプレーすることが決まっている。世界のトップと渡り合った男たちが日本で見られるとあって、10月開幕のBリーグ新シーズンはより一層大きな注目を集めそうだ。
今まさに世界へ羽ばたこうとしている若き才能と、大舞台の経験を持ち帰って日本で新たな戦いに挑むベテラン。パリで奮闘した男たちの“それぞれの秋”から目が離せない。
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記事:SPAIA編集部