【防犯講演3大ツアー】ベテラン迷惑メール評論家の私が闇バイトやネット犯罪に対する「防犯講演」をやる意味
人気アイドルの「4大ドームツアー」とかではないけど、私の「防犯講演3大ツアー」がようやく終わった。
この道10年を超えるベテラン迷惑メール評論家が、3ヶ月連続で「闇バイトやネット詐欺を軸にした防犯講演」をしていたのだ。
・迷惑メール漫談家
2024年12月は埼玉県立三郷北高等学校。ことし1月は専門スクール「バンタンゲームアカデミー」。そして2月は、静岡県「富士市」(自治体)。
何がウケて、何が滑ったかが、目の前の反応でわかるうえ、皆様がどんな情報を求めているのかも空気から感じるので、回を重ねるごとに完成度が増していく。
最後の講演である富士市では、けっこうウケを取りながら1時間40分ぶっ通しでしゃべりまくるという「迷惑メール漫談」みたいな感じになり、今後の方向性が見えてきた次第。
そのうち「迷惑メール評論家」ではなく「迷惑メール漫談家」になるかもしれない。
・被害者が来ていた
それはさておき、講演後、ご来場者さまと、少しのふれあい。写真を撮ったり、お話をしたり。
そんな中に、ひとりのご年配の女性がいた。わかりやすく言うとおばあちゃん。
そんなおばあちゃんが私に対して「先生、先生、質問させてください」と。
私のことを「先生」と呼ぶおばあちゃんの手には、古ぼけたBitCash(ビットキャッシュ)のカードが握られていた。
ビットキャッシュというのは、ネットで使える電子マネーのことで、懐かしい言い方をすれば、伝説のLINE乗っ取りの「iTunesカード」みたいなもの。
購入時のレシートもセロテープで貼り付けてあり、2万円くらい詐欺られたもよう。
「先生、このお金、帰ってきませんかね。警察にも相談したけど無理だって言われまして。何もやってくれませんでした。先生、なんとかなりませんか?」
私は困った。でも、こう答えた。
「なりません。かなしいけれど、帰ってきません。」
私はそう答えるとともに、おばあちゃんが持っているBitCashカードのデザインを確認。そして、
(BitCashが使われたということは、おそらく “あの頃” の詐欺だろう。その頃メジャーだったSMSメール……いや、彼女の場合は電話のパターンっぽいな。あーだこーだと喋りでコントロールし、BitCashカードををコンビニで買わせてくるパターンだな)
など、瞬時に様々なことをプロファイリングしていた。また、その被害がいつ頃だったのか瞬時に理解していた。これが現場で実際に戦ってきた迷惑メール評論家にしか知り得ない “経験の知” である。
「くやしくて、くやしくて……」
おばあちゃんは、本当に悔しそうだった。
その気持ち、わかる。私も詐欺られたこと、何度もあるから。なので私はこう言った。
「お母さん、たしかに悔しいです。私も詐欺られたことがあります。警察から「どうすることもできない」って言われた時もありました。7万円くらいやられた時もありますし、その時もお母さんと同じように戻ってきませんでした」
「まあ、先生も!」
「でもね。だからこそ、その後、騙されなくなりました。今日の講演で紹介した、“ここ3日間で起きたロマンス詐欺の被害者の金額” を思い出してください。簡単に2000万円とか4000万円とか盗られていました。それに比べたら2万円で済んだのです」
「なるほど」
「それにお母さん、今日の私の講演を最後まで聞いたのだから、そのほかの詐欺にも、そう簡単に騙されなくなりましたよ。何かがあったら、今日の講演を思い出してください」
「よかったです先生。ありがとうございました!」
そんなやりとりだったが、ものすごく意味のある会話だと思った。
・講演の意味
たぶんこのおばあちゃんは、ネットを見ていない生活をしている。
私が10年以上も前から盛んに注意喚起していたネット詐欺に関する情報も、このおばあちゃんには届いていない。
でも今日、ようやく様々な知識を届けられた。
だからこそ、講演した意味があったと思う。
一方、ネットは見ているはずの、埼玉県立三郷北高等学校の3年生たちにも、同じくらいの年代だったバンタンゲームアカデミーの生徒さんたちにも、私が書いた注意喚起の記事は届いていなかったと思う。
同じネットでも、見ているものが違うのだ。実際に皆に聞いたが、悲しいことに、ロケットニュース24を知っている人はごくわずかだったし……。
でも先日、ようやく様々な知識を届けられた。
だからこそ、講演した意味があったと思う。
・詐欺予報
最近は、NHKのニュースなどでも、詐欺の注意喚起ニュースが出るようになった。
とても良いことだと思う。もっともっと、報じるべきだと私は思う。
それこそ「天気予報」と同じくらいのレベルで「詐欺予報」を報じるくらいでちょうど良い時代になっていると感じている。
大切なのは知ること。
皆が、その詐欺の存在や手口を知っていること。今は、どんな詐欺がブームなのかを知っておくこと。何に備えるべきか知っておくこと。
ネットを見ていない人がいるならテレビ。テレビを見ていない人がいるならラジオや新聞。それすら見ていないなら、それこそ今回のような講演でも良い。
とにかく「知の格差」をなくすこと。知らない人を少なくしていくこと。そしたらみんな、騙されにくくなるから。
いずれにしても、今回会ったおばあちゃんは、間違いなく騙されにくくなったと思う。私の講演によって、少なくとも富士市の市民を1人救えた気がする。
あのおばあちゃんと会話して、「防犯講演」をやる意味はあると確信した。私のメッセージが届かない層に、私の「知」を届けるためなのだと。
執筆:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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