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『バーフバリ』『RRR』をベスト映画に挙げる呂布カルマが『モンキーマン』を語る!「インドの“あの臭い”が蘇った」【インタビュー前編】

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『バーフバリ』『RRR』をベスト映画に挙げる呂布カルマが『モンキーマン』を語る!「インドの“あの臭い”が蘇った」【インタビュー前編】

呂布カルマ×『モンキーマン』

あのジョーダン・ピール(『ゲット・アウト』『NOPE/ノープ』)が自ら買い付けてまで劇場公開させた、全米初登場2位の大注目作『モンキーマン』が、8月23日(金)より全国公開中。『スラムドッグ$ミリオネア』などで知られる俳優デヴ・パテルの主演兼“初”監督作(原案&脚本も!)として早くから注目を集めていた本作は「愛」と「復讐」が満載の、全映画ファンが拳を握り涙するであろうバイオレンス・ノワールに仕上がっている。

『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

インドの架空のスラム街を舞台に、「母を殺した悪の権力者たちへのリベンジ」を誓った青年キッドが、文字通り“下から上へ”と這い上がっていく姿を描く『モンキーマン』。混沌としたインドの空気と格差社会の絶望感、血まみれの格闘アクションが満載の本作を一足先に体感したのは、プロのラッパーでありグラビアディガーとしても知られる<呂布カルマ>だ。

呂布カルマ

S.S.ラージャマウリ監督の『バーフバリ』と『RRR』を生涯ベスト映画の一つに挙げる呂布カルマは、そんな本作をどう見たのか? 様々なラッパーが1対1でしのぎを削るMCバトルから音楽フェス、お茶の間に流れる報道番組やCMまで、あらゆる方面で活躍する才人らしい目線が光るインタビューの【前編】をどうぞ。

※物語の内容に触れています。ご注意ください。

「シビれる2時間、でも体力を使う映画」

――写真集の撮影(!)で訪れたというインド旅の感想や、ラージャマウリ監督作品への想いなども気になるところだが、まずはやはり『モンキーマン』への、ズバリ率直な感想について語ってもらうことに。

『モンキーマン』は本当に、“ずっと暴力”です。そしてインドの暑い、生臭い、埃っぽい雰囲気が充満していて、“辛く苦しい映像体験”なんですけど(笑)、直接的な暴力だけでなく、映像自体にも暴力性がすごくあって。シビれる2時間ですが結構、体力を使う映画です。底辺の、日本じゃ想像できないくらいの底辺にいる男が、母の仇を討つために<復讐の化神>になって、とんでもない暴力を繰り広げる。なんかもう、苦しい映画ですね。

主人公のキッドには、最終的な“復讐の相手”がいるじゃないですか。でも、あいつは果たして本当に“悪い奴”だったのか? というのは分からない。もちろん村を焼いたりと悪いことはしてるんですけど、もっと大きなことを成し遂げる、国を変えるために動いている可能性もあったように描かれていて。

『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

本当に、ただの私利私欲のためだけにやってたのか? そういう部分もあったから、キッドの復讐自体に虚しさみたいなものも感じさせられました。お前の目的は果たされたかもしれないけど、国は変わるのか? 良くなるのか? っていう“分からなさ”というか。あいつ(黒幕)に救われている人もいるんだろうなって。

逆に、警察署長のラナは完全な悪なのに、戦いは正々堂々としてましたね。罠とかを仕掛けるわけでもなく、ちゃんと待ってる(笑)。そこにブルース・リー映画っぽさもありましたね、一人ずつ倒していくっていう。あと、売春宿の元締みたいなヤツとかなりねちっこく戦うシーンがありますけど、なぜか鼻を執拗に攻めるカットが何度かあって、「なにこれ」と思いながら観てました(笑)。

呂布カルマ

「オールドデリーのあの臭いが蘇ってきて、“ウグッ”って」

――呂布カルマが初めて訪れて「人生観が変わった」というインド。その凄さ、面白さ、得体のしれないパワーの源は、いったい何なのだろうか? インドという国を実際に体験した後だから感じられるであろう、本作の背景やディテールについて聞いた。

日本とは全部、あまりにも違う。日本で育って、この国の基準が当たり前だと思っていたので、こんなに違うのか! と。僕はオールドデリーに行ったんですけど……道交法も、衛生面もぐちゃぐちゃだし東京より人口過密で、僕からしたら地獄だなと思ったんですけど。でも、そこでみんな力強く生きていて、その感じとかも衝撃的で、日本人ってすごく弱いなって感じたんですよね。とにかく衝撃でした。

キッドがクラブのVIPルームから逃げ出して、汚い市街地を戦いながら逃げていくシーンがあるんですけど、そこが僕らが見慣れていないようなスラム街で。ハリウッド映画とかでも観たことがない景色というか、その中を戦いながら逃げる姿が印象深かった。でも、「ああ~、この感じだ」というか、「汚え~!」みたいな(笑)、ホテルの部屋から一歩も出たくないと思ってしまった、あの気持ちが蘇りました。キッドがあの“終わってる川”に落ちるシーンとか、現地の臭いが漂ってくる感じがして「ウグッ」ってなりましたね。

『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

――本作でパテルが練り上げた「架空の街」には、底辺の混沌やVIPクラブのいかがわしさなどが暗い映像で描写されている。この地における「這い上がれない人生」や「突きつけられるカルマ」には、かなりカルチャーショックを感じたようだ。

僕はあんな感じの店には出入りしなかったんですが、ああいうところは世界中にあると思うんです。そこは想像するしかないですけど、欲というか、業が深いですよね。キッドはあそこで働いているときに発作のようなものに襲われて、外のゴミ溜めみたいなところに一瞬エスケープするんですけど、「ああ、この感じ……」とオールドデリーを思い出しました。

あの世界でド底辺の生活をしている人たちと、超VIPみたいな人たちの落差ってすごいじゃないですか。生活水準も衛生意識も違うのに、それでも共存してるっていうのが結構、信じられなくて。僕が行ったのはオールドデリーの下町みたいなところだったので、「ゴミしか落ちてない」みたいな感じだったんですけど、ああいうギラギラしたところもあるんだろうなと。日本では、あそこまでの落差を感じることはないから。

『モンキーマン』©2024 Universal Studios. All Rights Reserved.

(オールドデリーは)動物もたくさん道にいるし、うんこもめちゃくちゃ落ちてるし。あんなにうんこが落ちてること、今後ないだろうなと思って。そのうんこを踏んだ人が広げたうんこスタンプもめっちゃあるんですよ(笑)。常に下を見てないとうんこ踏むし、でも周囲も見ていないと人にぶつかるし、そこにリキシャが走ってきたりもする。もう本当に「怖っ!」って感じでしたね、大変です。最近は変わってきてるところもあるみたいですけど、世界で一番うんこ落ちてるらしいですよ。

呂布カルマ

「ラージャマウリ作品は“肉体の強さ”が出ている感じが好き」

――オールタイムベスト映画の候補に『マッドマックス 怒りのデスロード』と、S.S.ラージャマウリ監督の『バーフバリ』&『RRR』を挙げる呂布カルマ。かつては後味の悪さで知られる、たとえばギャスパー・ノエ作品などを好んでいたそうだが、『マッドマックス』やラージャマウリ作品によって“カタルシス”方向に好みを変えられたという。『モンキーマン』にも、それらと似たバイブスを感じたのだろうか?

ちょっと違いましたね。ラージャマウリ作品は『バーフバリ』と『RRR』しか観てないんですけど、あまりCGに頼りすぎないというか、肉体の強さが出ている感じが好きです。リアリティを度外視している部分も好きですね。

僕はインド映画マナーに慣れていないので、自分が観ている映画が実際にヘンなのか、インド映画自体がそういうものなのかが分からなくて、どっちだ? と思いながら観る面白さもある。ハリウッド映画や日本映画とはまったく違うセオリーのことをやってきたりするじゃないですか。それがインド映画にとっては当たり前のことなのかな? って。その違和感にも面白さがあって、いま新しい体験してるな、みたいな(笑)。

撮影:町田千秋

▶インタビュー後編<「スカッとする“リベンジ映画”じゃない」呂布カルマが語る『モンキーマン』の“痛みを伴う”魅力とは?>は明日公開!

『モンキーマン』は2024年8月23日(金)より大ヒット公開中

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