小田原地方を記録する会 庶民視点の戦争一冊に 戦後80年に合わせ証言集
「戦時下の小田原地方を記録する会」(飯田耀子代表・井上弘事務局長)が、県西2市8町での戦争体験の聞き取りなどをまとめた証言集「平和をつむぐ小田原の戦争体験」を制作した。4月18日から販売を開始している。
同会は1979年、地域で起きた戦災などの記録を後世に残すことを目的に、当時大学院生で戦時中を専門に研究していた井上事務局長と高校教諭、元中学校教諭の3人で設立。現在は元教諭と現役教諭の5人で活動している。
年に2回ほど、会誌『戦争と民衆』を発行。「庶民の体験や生の声」にスポットを当てていることが特徴で、戦争体験者やその家族から当時の様子や伝え聞いた内容などをインタビュー形式でまとめる手法を中心に編集している。
6冊目の制作となった今回の証言集は戦後80年の節目に合わせ、2018年に発行した会誌第81号から2025年の第94号に掲載した20人の証言を中心にまとめた。新玉国民学校3年生のときに空襲を経験した男性や出征した父のことを語った男性、勤務先で小田原空襲に見舞われた「看護婦」などの証言が紹介されている。
「戦争のない未来語り合って」
井上事務局長は「戦後80年を迎える2025年の発行に向けて昨年4月から準備を進めてきた。戦争体験者が高齢になり、減少するとともに、関心が薄くなっている印象がある」と危惧する。そのため中高生も読みやすいように、証言の中に出てきた用語を説明する「ミニ解説」や写真、図などを多く掲載するように意識して制作した。
また平和への思いを込め、タイトルに「つむぐ」という言葉を入れたといい、「テーマ別に分けてまとめたので、関心のある内容を読んでいただければ。世代を越えて戦争のない未来について語りあってほしい」と話す。証言集はB5サイズで176ページ、価格は2000円。平井書店(小田原市)で販売している。