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琵琶湖にアザラシ?!『琵琶湖博物館』で学ぶ”古代湖”の魅力とは

しがトコ

サムネ

【滋賀県立琵琶湖博物館/滋賀県草津市】

琵琶湖に、アザラシ!?
そんな不思議な光景に出会えるのが、滋賀県立琵琶湖博物館です。

大きな瞳に小さな口――愛らしいバイカルアザラシは、子どもから大人まで大人気。

でも、ちょっと待って。
琵琶湖にアザラシなんているはずがないのに、なぜ博物館で飼育されてるの?

実はこの存在こそが“琵琶湖のすごさ”を知る、大切なカギだったのです。

世界で唯一!淡水で生きるアザラシ

草津市の烏丸半島にある『琵琶湖博物館』。
ここでは琵琶湖の誕生から現代までの歴史、そして琵琶湖にすむ生き物や私たちの暮らしまで、体感しながら学べる“湖と人間”をテーマにした博物館。

そのなかで人気なのが、琵琶湖の魚や水鳥の姿を観察できる「水族展示室」です。

水族展示室を見学してると、ひと際子どもたちがはしゃいで眺めている水槽がありました。
気になって、近寄ってみると……

うわ、びっくりした!

おもむろに顔を出したのはアザラシです!
か、可愛い…!

でもこのアザラシ、いつも見るアザラシとは少し顔つきが異なるような?

「こちらは世界で唯一淡水に棲む、バイカルアザラシです」。
そう教えてくれたのは、主任学芸員で獣医師の松岡由子さんです。

「バイカルアザラシは、ロシアの古代湖『バイカル湖』でのみ生息する固有種なんですよ」。

ロシアの古代湖の生き物がなぜここに?
そもそも、”古代湖”って何でしたっけ??

はるか400万年前から存在する古代湖・琵琶湖

日本で一番大きな湖として知られる琵琶湖。
でも、そのすごさは大きさだけじゃありません。

それは、世界でも数少ない「古代湖」ということ!
琵琶湖が誕生したのは、なんと約400万年前。
日本列島がまだ大陸と地続きで、ツダンスキーゾウという4mにもなる大型のゾウが歩いていたような時代。
琵琶湖は、そんな時代からずっと存在し続けているんです。

これって、すごくないですか?

そんな長い歴史の中で、琵琶湖には「ここでしか生きられない」固有種がたくさん誕生しました。

“琵琶湖の主”と呼ばれるビワコオオナマズもそのひとつ。
まさに古代湖の証といえる存在です。

世界には同じように古代から残る湖が20ほどあり、その一つがロシアのバイカル湖。
そして、バイカル湖にだけ暮らしているのが、琵琶湖博物館の人気者・バイカルアザラシなのです。

“可愛い”にも理由がある!バイカルアザラシの魅力

そうした世界の古代湖に棲む生き物の展示が行われているのが、冒頭で紹介した水族展示室内の「世界の古代湖」エリアです。

ここで飼育されているバイカルアザラシはオスで、博物館のリニューアル工事に合わせて国内の水族館から2016年にやってきました。

バイカルアザラシには、バイカル湖の環境に適応したからこそ見られる独自の特徴があります。

その一つが、この大きな目。

琵琶湖は一番深い所でも100mほどの深さですが、バイカル湖は一番深い所で何と約1,600m!

深く潜った際に、暗い場所でもエサを探しやすくするために瞳が大きく発達し、その分口が小さくなったといわれています。

可愛らしいベビーフェイスにも理由があったんですね!

そしてもう一つの大きな特徴が前足の爪です。

10月末ごろから氷に覆われるバイカル湖で生きるバイカルアザラシは、呼吸のためにこの氷を削って穴を開ける必要があります。
そのため前足の爪が他のアザラシよりも硬く鋭く発達したといわれています。

バイカルアザラシは、バイカル湖で生きるために独自の進化を遂げたまさに”固有種”と呼べる存在だったんです!

バイカルアザラシから学ぶ琵琶湖のこと

「琵琶湖博物館でバイカルアザラシを飼育しているのは、琵琶湖のことを知ってもらうためなんです」

そう話すのは専門学芸員の林竜馬さんです。

2016年に水族展示室のリニューアルを行った際、古代湖について伝える展示が必要だと議論が行われ、そこで古代湖の中でも一番古い歴史を持つバイカル湖の固有種を飼育することになったんです。

約400万年の歴史を持つ琵琶湖に対し、バイカル湖が誕生したのは、なんと約3,000万年前!

大昔は北極海とつながっていたバイカル湖はやがて海から離れて淡水化。
バイカルアザラシはその時に海から一緒に離れてやってきたとされ、長い歳月をかけてバイカル湖に適応した独自の進化を遂げました。

そして歳月の違いはあれど、似たような歴史を歩んできたのが琵琶湖です。
琵琶湖の固有種であるビワコオオナマズがとても大きいのも、琵琶湖の環境に適応した結果なのですね。

しかしこうした古代湖の多くは、長い歳月を経るうちに地殻変動などで埋もれてしまうのがほとんどで、何十万年も残り続けるのはとても稀なのだそう。

そうした中でバイカル湖と同じく、地球の歴史を伝える各年代の堆積物が湖底に残されている琵琶湖はとても貴重な存在です!

現在、世界の湖沼では、人為的な環境の変化により生態系に悪影響を及ぼしたり、水が枯渇して湖そのものがなくなったりといった問題が起こっています。

バイカル湖でも工業排水による環境汚染によって、生態系の頂点に立つバイカルアザラシがその影響をまともに受けているそうです。

「だからこそバイカルアザラシとともに、今の琵琶湖と私たちの暮らしがとても希少で価値あることなんだと、気づくきっかけになってほしい」。
と、松岡さんと林さんは声を揃えて話していました。

琵琶湖から世界の記念日が誕生!

そして、琵琶湖の存在が世界に広がった出来事があります。
それが、今年から国連が定めた新しい記念日「世界湖沼の日(World Lake Day)」です。

じつはその原点は、滋賀県にあるんです。
1984年、琵琶湖の水質悪化が社会問題となっていた時期に、大津で「世界湖沼会議」が開かれました。世界中から研究者や行政が集まり、「湖を守ろう」と議論したその一日が、40年の時を経て“世界の記念日”になったんです。

湖沼(こしょう)と書いて、湖も沼も――どちらも大切に。
世界中の湖にはそれぞれの暮らしや文化があって、そこにしかいない生き物たちがいる。

琵琶湖から始まった小さな一歩が、いまは世界をつなぐ記念日になっている。
そう思うと、なんだか誇らしい気持ちになりませんか?

数百万年の歴史を刻む“古代湖”としてだけでなく、世界の湖沼保全の出発点ともなった琵琶湖。
この湖をいつまでも大切にしていきたいですね。

(文・結城弘/編集・しがトコ編集部)

記事を書いた人結城弘/滋賀県出身。小説家・ライター。滋賀が舞台として登場する小説『二十世紀電氣目録』『モボモガ』を執筆。趣味は旅行、レトロ建築巡り、ご当地マグネット集め、地酒。noteにて旅ブログなどを更新中。各SNS⇒ X(旧Twitter)/ Instagram

『滋賀県立琵琶湖博物館』の詳細

住所 滋賀県草津市下物町1091 観覧料金 常設展示 840円(大人)/470円(大学生)
※小学生・中学生・高校生は無料 開館時間 9時30分~17時00分(最終入館16時00分) 休館日 毎週月曜日(休日の場合は開館) 電話番号 077-568-4811 公式サイト https://www.biwahaku.jp/

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