グループホームで暮らす自閉症娘はPC博士!娘のある「才能」にアナログ母は大助かり
監修:鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
パソコンに精通している娘
26歳の自閉スペクトラム症の娘は現在グループホームで暮らしています。娘は、パソコンの知識が豊富で学生の頃からパソコン関連の資格をいくつも取得していました。
実家にいた頃は、自宅のパソコンの不具合などはいつも娘が解決してくれていました。今でも数か月に一度の帰省の際には、自宅パソコンのバージョンアップや関連サイトの更新などをしてくれています。
最近の出来事
私がモバイル機器に保存しているデータの確認をしようとしたときのことです。しばらく使っていなかった機種ということもあり、対応するケーブルがどこを探しても見つかりませんでした。
娘に電話をすると、もしかしたら使えるケーブルを持っているかもしれないから持ってきてくれる、とのことでした。
娘が持参したものの一部がコチラ
そこには絡まりまくったコードの山が……。(写真は一部です)
絡まったコードを解きほぐし、1つひとつなんのケーブルなのか尋ねると、娘は一瞥しただけで何のコードか即座に答えました。
アナログ派の私は、一瞬見ただけで何のコードなのかを即答する娘の才能をすごいと感じています。
こちらの特性も通常運行(笑)
助かった!
ついでに私が持っているほかのケーブル類を娘に確認してもらうと、やはり娘は一目見て何のパーツかをスラスラと答えました。
そして、私が何に使うのか分からなくて処分しようと思っていた部品を見て「これはモニターとパソコンつなぐときに使う画像変換アダプター。パソコンを買い換えた時のものだよ。最新の機種ではあまり使わないけど、逆に出回ってない型だから、取っておいたほうが良いと思う」と教えてくれました。
パソコン機器の進化スピードは非常に速く、私はなかなか追いつけないのですが、娘は過去の物も、最新の物も把握しています。子どもの頃から変わらない彼女の才能(記憶力の良さやカメラアイとよばれる特性)に今回も助けられました。
結局
探していたケーブルは今回、娘が持参した物の中にはなかったものの、彼女が実家に残しいてた『良く分からないものBOX(校章やキーホルダーなど、娘が学生時代に使っていた雑貨が入っている箱)』の中に入っていました。
もちろんこちらも絡まりまくりではありましたが(笑)
娘よ、ありがとう!
執筆/荒木まち子
(監修:鈴木先生より)
ASD(自閉スペクトラム症)の方の特性の一つに視覚的認知力の高さがあります。娘さんの特性をカメラアイと表現されていますが、まさにカメラのシャッターで撮ったように色や形など一瞬でインプットする特性がある方もいます。
ほかにも道順や過去に行った場所なども正確に記憶しており、カーナビの代わりになるくらい精度が高いのが特徴です。写真にあるような絡まったコードを見ると整理整頓が苦手な方と推測されますが、ASDの方によくあるコレクターの一種でさまざまなコードを収集しているものと思われます。こういう方はパソコンショップなどでの仕事にも適性があるかもしれません。自分の特性に見合った仕事はいろいろとあると思います。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。