上越市の海岸にマッコウクジラの骨漂着 上越科学館で展示へ
新潟県上越市柿崎区の海岸に2025年2月に漂着したマッコウクジラの骨が上越科学館(同市下門前)に展示されることになり、4月21日、漂着した柿崎中央海水浴場から同館への運搬と展示に向けた洗浄作業が行われた。
《画像:クレーンにつるされトラックに載せられるマッコウクジラの後頭骨》
骨は2月1日に市民が発見し、県上越地域振興局に連絡。解剖学が専門の関谷伸一県立看護大名誉教授や海棲哺乳類学を専門とする国立科学博物館の田島木綿子研究主幹、上越科学館などが調査していた。
マッコウクジラはさまざまな海域に分布し、大きく四角張った頭部が特徴で下顎のみに歯があり、成獣の体長は雄が15〜18m、雌は11〜13m。日本近海にも生息するが、骨だけになって日本海側に漂着するのは珍しいという。
《画像:マッコウクジラ》
今回漂着した骨は後頭骨や胸骨、肋骨(ろっこつ)、上顎、下顎の5個で、後頭骨は高さ、幅共に約1.7m、重さは推定で300kg。また下顎は長さが約4m。このほか柏崎市の米山海岸でも、同一個体のものと思われる尾びれに近い部分の骨が体の組織が付着した状態で大小5個見つかった。これまでの調査で、体長10m以上の雄の成獣の骨と推定されている。
《画像:上顎の骨》
この日は骨5個を順番にクレーンでつり上げて5tトラックに載せ、柿崎中央海水浴場から約20km離れた上越科学館まで運び、焼却処分される上顎以外の4個が同館敷地内に降ろされた。関係者が高圧洗浄機で砂や汚れを取り除いた後、カビ予防も兼ねて漂白剤入りの水をかけながら、たわしやブラシで磨いた。
《画像:高圧洗浄機で砂や汚れを取り除いた。後頭骨(左)と下顎の骨》
《画像:漂白剤入りの水をかけながら丁寧に磨いた》
田島研究主幹は「これだけの大きさのマッコウクジラが日本海に生息していることが証明された。展示されることは非常にいいことだと思うので、地元の皆さんにこういうクジラがいることを知ってもらうきっかけになれば」と願った。
クジラの骨には大量の油が含まれているため、展示までには「油抜き」が必要で、時間がかかるという。上越科学館の永井克行館長は「柿崎区の上下浜小には明治時代に海岸に打ち上げられたクジラの肉を売って学校を再建したくじら学校の話があり、上越はクジラに縁がある。なるべく早く展示し、皆さんに見てもらいたい」と話した。
《画像:上越科学館で展示予定のマッコウクジラの骨》