十勝が舞台の短編映画『馬橇の花嫁』、満員の舞台挨拶 札幌・シアターキノで今月18日まで上映期間延長
4月5日(土)、シアターキノ(札幌市中央区南2西6)で短編映画『馬橇の花嫁』(読み:ばそりのはなよめ)が公開されました。この映画は、2023年9月、24年3月に大樹町、幕別町で撮影され、昭和30年代の農村で起きた「家族」と「婚礼」の原風景を描いています。帯広市在住の逢坂芳郎監督(幕別町出身)、そして出演者とスタッフの多くは道産子で制作。初日舞台挨拶には、逢坂芳郎監督、倉本浩平プロデューサー、竹森巧さん(アップダウン)、阿部浩貴さん(アップダウン)、磯貝圭子さん(札幌座)、やすさん(やすと横澤さん)が登壇し、劇場は補助席が必要なぐらい満員になり盛り上がりました。
SASARU movieでは、舞台挨拶の様子をレポートします。
この映画を制作するキッカケは、写真家・荘田喜與志さんが昭和31年に撮影した「馬橇の花嫁」を逢坂監督が地元のパン屋で見つけたことです。「これは映画にしたらいいんじゃないかな」とひと目見て決めたと、振り返ります。逢坂監督は「仕事で海外にも行き、いろいろなことをしていたが、3年前に十勝にUターンをして映画をつくろう」と決意。「(撮影するなら)地元の映画は地元の人間が撮るのが1番いい。できるだけ地元のことをよく知った方、地元出身のスタッフ、キャストの方たちで映画をつくるとより一層説得力が出る」と、思いを語りました。
主人公の兄・剛生役で出演した札幌のお笑い芸人「アップダウン」の阿部浩貴さんは「“橇”が読めなかったです(笑)」と、作品タイトルである『馬“橇”』の漢字表記が難しいと制作陣に訴えかけていました。一方、相方の竹森巧さんは青年団員・阿彦役で出演。気合いをいれて丸坊主にして役づくりをしましたが、(小道具で)頭にタオルを巻くことになり、坊主姿が見えなくなってしまったとエピソードを披露し、コンビで客席を沸かせていました。
また、この作品の魅力の一つは「ロケーションです」と口を揃える共演者のみなさん。
撮影前に「1日農作業」という日があり、撮影はせずにとにかく豆を収穫する作業を行ったとのこと。主人公の母・チヨ役の磯貝圭子さんは「昔の人がどれだけ苦労したか身をもって体験できた」と振り返りました。
客席から「馬が(馬橇に乗るだけで)きちんと家に帰ってくれるリアルな描写があったことに驚いた」と言葉を掛けられ、逢坂監督は「どんなに酔っ払って馬車に乗っても、馬の尻を叩いて寝て起きたらもう自宅」という話を多くの方から聞いていたので、映画の中できちんと描きたかったと、演出の意図を語りました。
『馬橇の花嫁』作品情報
馬と共に汗を流し農業に勤しんだ時代、結婚式は農閑期の冬に行われていた。
北海道・十勝に暮らす一家の長女・一子が同じ集落に住む豊に惹かれ、結婚に至るまでの暮らしを、農村の情景と織り交ぜ描く。馬とどんころによる豆おとし、青年団の酒盛り、相撲大会や盆踊りなど昭和30年代前半の十勝の風景が全編、繊細なモノクロ映像で甦っています。
逢坂芳郎監督はこの映画のために故郷である十勝へ住居を移し撮影・制作。北海道のスタッフ、キャストで作り上げました。主題歌は、紅白歌合戦7回出場を誇る大津美子の名曲「ここに幸あり」。当初は1週間限定公開でしたが、札幌・シアターキノでは4月18日(金)までの上映期間延長が決定。