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三鷹と吉祥寺を結ぶ散歩の止まり木。雑貨・カフェ・スタジオが一体化した『STAYFUL LIFE STORE』はスタイリッシュな縁台も楽しい

さんたつ

R0044003三鷹

三鷹駅周辺は、東西に延びるJRの線路をはさんで南北にざっくり二分されている。飲食店はじめ多くの店が連なる南側がにぎやかだけど、落ち着いた北側も別の味わいがあっていい。ことに八丁商和会という歴史ある渋い商店街が吉祥寺方向に延びている辺りは、年期の入った店がぽつぽつと続いていて、さんぽ的にも雰囲気いいぞ。

STAYFUL LIFE STORE(ステイフル ライフ ストア)

独自の存在感を持ちながら、街に溶け込む

八丁商和会の名の由来となっている八丁通りは、途中で並木道の中山新道(ここもよい)の端と、成蹊通りにつながって五差路を形成。交差点にある三角の敷地には、築50年以上を数えるクリーム色のレトロな雑居ビルがそびえている。かつて1階はスーパーだったそうだが、長く閉鎖されたままだった。2025年春、そこがカフェとしてよみがえった。店名は「STAYFUL LIFE STORE」。以前は吉祥寺・井の頭公園の奥にあった店である。吉祥寺時代も散歩心をくすぐる穴場チックな好ロケーションだった。引っ越し先にも相通じるセンスを感じる。

移転前の店舗は下り階段の先に雑貨コーナー・カフェ・スタジオが連なる高密度の“秘密基地”だった。品揃えなど踏襲している点もあるが、広さが1階+地下1階の2層となり、床面積は以前の5倍、約200平方メートルほどに爆増。その空間に、ブランディングやオリジナル商品を手がけるクリエイティブ集団の経営ならではのアイデアや理念が詰め込まれている。

店造りは電気・水回り以外スタッフ総出で仕上げたという。まず室内の片付けからスタート。最初は廃屋同然で踏み入るのもはばかられる状態だったとか。作業中、1階を覆う外壁はかつてガラス窓仕様だったことが判明。イイネと復活させる一方、天井板は潔く除去。かくして、見回せば壁2面に窓が明るく連なり、見上げれば天井の高い、開放的な贅沢空間が誕生した。

窓以外も、地下へ続く階段の手すりなど、味のあるパーツは残して活用している。この建物は壁面のブロックを重ねたデザインなど、レトロな風貌も魅力。2カ所ある出入り口もそのまま使用した(八丁通り側が正面)。建物の歴史を継承しつつ、自分たちのスタイルを接ぎ木するように仕上げた店構えは、独自の存在感を持ちながら街に溶け込み、居心地のよさにつながっている。

中町新道側。
八丁通り側。

雑貨・カフェ・スタジオが一体化しているからこその“はみ出し方”

1階のスペースを大きく占めるのはカフェ・エリアだ。

人気のドリンクはエスプレッソ・ベースのアメリカーノやカフェラテ600円〜。冷えたエスプレッソのトニック割り、エスプレッソトニック700円も暑い季節にはぴったりだ(夏季限定)。ティラミスコーヒーゼリー600円などスイーツも好評。アルコール類もウイスキーベースのアイリッシュコーヒー800円、絵柄の楽しい淡路島のクラフトビール「NAMINO OTO BREWING」の缶ビール各1200円など一捻りした品を揃える。

ティラミスコーヒーゼリー600円(右)とエスプレッソトニック700円。
クラフトビール各1200円。

朝8時オープンなので朝食メニューも準備されている。がっつり行くならパンケーキにベーコン&目玉焼きをのせ、野菜を添えたブレックファーストプレート1400円、軽くいくならスコーンマーマレード400円など。昼以降なら一押しはカレー。炒め玉ねぎとトマトをふんだんに使い、辛くなくて酸味が特徴の“町カレー”の進化形といった味わいだ。トッピングの葉巻サイズのスモークソーセージがいいアクセントになり、おなかいっぱいになる1600円。

開放的なキッチンの向かい側にあるのが雑貨類の販売コーナー。台湾のステーショナリーブランド「TOOLS to LIVEBY」によるユニークな形で耐久性もいいペーパークリップ各種1430円、インドの老舗ガラスメーカー「BOROSIL GLASS WORKS Ltd.」のシンプルかつ耐熱性に優れたグラス1430円。インテリアブランド「PUEBCO」のインド製木製ビンテージのフラワーポット1万6500円、オリジナルのTシャツ5000円など、機能性重視のこだわりの品々が、ワールドワイドに集められている。

1階の明るい日差しの中でのひとときも心地よいが、地下にも広がるカフェススペースもおすすめだ。上階同様ゆったりした造りだが、照明は抑えめ。1人こもって過ごしたい時などおあつらえ向きである。室内はコンクリむき出しのざっくりした感じだが、物寂しさはない。一角にDJブースも設置、音楽イベントも定期的に開催されている。

さらに奥には白で統一された撮影スタジオも専用メイクルーム付きで設置。ここはギャラリースペースとしても利用できる。取材時にスイス人グラフィックデザイナーのアイリス・ヴェネンシオ+テッサ・トダロ+アートディレクター松永美春による、店舗のディテールを素材にした作品展が、カフェスペースも使って開催されていた(通販で購入可)。こういうはみ出し方ができるのは、雑貨・カフェ・スタジオが一体化する『STAYFUL LIFE STORE』の持ち味のひとつとだろう。

実現したいのは「STAYFULな空間」

そもそも店名のSTAYFULとは、STAY(滞在・とどまる)と -FUL(〜に満ちて)という2つの言葉を合わせた造語なのだそうだ。訪れる人が滞在して満足できる様子を意味している。

オーナーの服部真穂さんは言う。

「ここに来たら心が落ち着く、また遊びに来たいと思ってもらえる、STAYFULな空間を目指しています。さまざまなジャンルの方々が交差することで新たな刺激の場となればうれしいですね」

服部真穂さん。

店があるのはロケーションからして人の集まりやすい五差路の交差点。その理想を追うにはうって付けではあるまいか。だから店には、年齢性別問わずさまざまな人を誘う趣向が盛り込まれている。

朝8時から21時まで通し営業しているし、供するカレーも辛くないのは子供でも食べやすいことを配慮しているから。広いからベビーカーも入れやすいし、ファミリー向けのイベントも開催している。

さらに特筆ものなのが、1階中央に設けた畳敷きの縁台風コーナーだ。座ってみるとちょうどいい目線であたりを見渡せるし、気軽にひと息つけて誠に具合いい。偶然隣り合った人と会話もはずんじゃいそうなゆるい開放感は、普通のテーブル席では味わえない楽しさ。このスタイリッシュな縁台、実は店造りの最中スぺースの空きを活用すべく設けた偶然の産物だとか。好評につき、オープン後に拡張されている。

「社会が時代とともに発展していき、進歩したことが多い反面、いろいろなことに縛られ生きづらい世の中になってきていると日々感じています。そんな日常で、もっと自由にいられる、日々を忘れてゆったりとした時間を過ごせる、そんなお店にしたいと願っています」と服部真穂さん。

ここから五差路を北上すれば間もなく井の頭通りで、道なりに進めば吉祥寺だ。三鷹〜吉祥寺散策の休憩所としてもおあつらえ向きの、見逃せない穴場カフェである。

STAYFUL LIFE STORE(ステイフル ライフ ストア)
住所:東京都武蔵野市中町1-37-5/営業時間:8:00~21:00/定休日:火/アクセス:JR中央線三鷹駅から徒歩8分

取材・文・撮影=奥谷道草

奥谷道草
ライター
東京生まれ。MOOK『散歩の達人 台湾さんぽ』を執筆。都心部の道草散歩歴は半世紀あまり。月刊「散歩の達人」で独特のセンスと経験を駆使し、散歩ライターとして雑貨を中心に、喫茶・エスニックなどの企画を取材執筆。2010 年から台湾に夫婦でハマる。以後二人して中国語を学びつつ、主に首都台北をはみだし、各地方の魅力ある街あるきを模索散策。書籍は15 年『オモシロはみだし台湾さんぽ』、18 年に続編にあたる『もっとオモシロはみだし台湾さんぽ』を上梓。

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