“最強PMO”が指摘する、会社で評価されない人が陥りがちな認識のズレ【連載Vol.9】
エンジニア時代に知りたかった「開発現場の難所」突破のコツ
「こんなに頑張っているのに、なぜか評価されない」
「なんで自分より(仕事ができない)アイツの方が先に昇進するんだ……」
仕事を覚え、次第に多くの仕事を任されてくると気になってくるのがそう、「評価」ではないでしょうか。
実際、私がSEとして正社員で勤務していたときも、周囲からはそうした声が聞こえてきていました。そのたびに、シビアかもしれませんが「会社側の人間に評価されない限り、自分の評価は上がらない」と考えていました。もちろん、その考えは今でも変わってはいません。
そこで今回は、「会社で評価されるためにどうすればいいか?」をPMO的見地からお話してみたいと思います。
株式会社office Root(オフィスルート)
代表取締役社長
甲州 潤(こうしゅうじゅん)
国立高専卒業後、ソフトウェア開発企業でSEとして一連の開発業務を経験し、フリーランスに転身。国内大手SI企業の大規模プロジェクトに多数参画し、優秀な人材がいても開発が失敗することに疑問を抱く。PMOとして活動を開始し、多数プロジェクトを成功へ導く。企業との協業も増加し、2020年に法人化。さまざまな企業課題と向き合う日々。著書『DX時代の最強PMOになる方法』(ビジネス教育出版社)
目次
会社が求める「評価」とは何か?納得できなかったら「自己分析」をしてみようそれでも難しければ「外部」から自分を見つめてみよう自分の中に「鳥の目」をつくれ!書籍紹介
会社が求める「評価」とは何か?
みなさんも普段、自分の貴重な時間を使って仕事に取り組んでいることと思います。それなのにも関わらず「会社から評価されない」のには、必ず原因があります。といっても、それを単に「上司の能力不足だ」とか「会社側の責任だ」と決めつけないでください。
なぜなら、自分と会社側との「認識のズレ」によって評価がされていないことが圧倒的に多いからです。例えば、次のような例がそれにあたります。
事例1:エンジニアでクライアントからの要望を受けている
エンジニア:お客さんの要望は○○ですよね、だから当社としても○○の方向で行くべきだと思います
上司:いや、何度も言ってるじゃない。それはうちの方向とは違うから△△でやろうよ
エンジニア:いやいや、でもお客さんは○○って言っているのですし……
上司:(めんどくせーな、こいつ)うん、そうなんだけどさ……(評価するのやめよう)
事例2:プロジェクト進行中に人員が足りないことがわかり、社内調整が必要になった
エンジニア:人員調整や進行管理を◆◆さんにお願いしていたのに、対応が遅くて進行に問題が出ています
上司:それはもう仕方ないね、そうしたら君が○○さんに声をかけて調整できないかやってみてくれる?
エンジニア:それはそうなのですが、私にも仕事がありそこまでは……。そもそもは◆◆さんの問題であって、管理は私の仕事ではなく……(愚痴が続く)
上司:……(うーん、せっかく業務の幅を広げるためにお願いしたのに、評価できないな)
二つの事例を見て、何か気づいたことはありましたか?
そうです、「上司から求められていること」と「自分が行った行動」にズレがあるのです。
例えば一つ目の事例の場合、「会社からの評価」をもらいたければ、お客さんの要望をうのみにすることが答えではありません。会社も、クライアントも「双方が納得できる答えを探す」こと、そしてそれを実現することが求められていたのです。
評価されないのには必ず理由があります。
その理由を理解し、改善していく。それが、「本当の評価」につながっていくのです。
納得できなかったら「自己分析」をしてみよう
それでもなお、「自分はこんなに頑張っているのに……」と思う場合、もう少し自分を知るフローが必要です。そこでオススメなのが次の4ステップです。
1 自己評価を行う
まず自分が「評価されるべきだ」と思うものを、片っ端から挙げていきましょう。
例)○○というプロジェクトで、七日間12時まで頑張って作業した
Aさんができなかった分の工程を代わりに作業した
お客さまとの交渉で詳しく進捗を伝えた
2 他者からどう見えているかを知る
自己評価を行った項目が、他者からどう見えているかをリサーチしましょう。
自分の行ったことをメンバーに聞くのはなかなか勇気がいりますが、まずは聞きやすいメンバーに評価をしてもらいましょう。
3 外部から来た人に聞いてみる
そして、もう一つのポイントが、自社の人間ではない「外部から来た人」に評価をしてもらうことです。可能なら、私のようなPMOに聞いてみると良いでしょう。社外の人(フリーランスなど)は利害関係がないため、いろいろ聞きやすいメリットがあります。そして、おそらく他の会社も多く見てきているはずなので、より客観的で経験に基づいた意見をくれるはずです。
ちなみに私も、担当している企業の方から雑談の中で「うちの会社ってどう思いますか?」「僕のやり方って一般的には普通なんですか?」など聞かれることがよくあります。きっと忖度なく答えてくれるでしょう。
4 自分の認識をジャッジする
さあ、これで情報はそろいました。改めて自分が頑張ってきたことが「相手からどう見えているか」をジャッジしましょう。「ズレ」があった場合、そこが「あなたがもっと成長するべき部分」ということになります。
他者からの評価を総合し、結果的に「自分は頑張っていたか」あるいは「頑張れていなかったか」が分かります。
「頑張っていた」という場合、会社で評価されないのは、会社側に何か問題があると言わざるを得ません。
逆に「頑張れていなかった」という場合には、「自分側に問題がある」すなわち、自分が変化することが求められます。
それでも難しければ「外部」から自分を見つめてみよう
前項で紹介した自己分析には、「他者からの評価」が必要不可欠でした。ただ、中には環境的に他者からの評価を受けにくい、相手に自分がどう見えているか聞きづらい、ということもあるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、自ら社外に出て「自分の立ち位置を知る」ことです。具体的には二つの方法があります。
1 社会人インターンシップ
今、「大人の職場体験」ともいうべき社会人インターンシップのサービスが生まれています。活用する理由はいろいろあるかと思いますが、私がおすすめする理由は、「他社を少しだけのぞき見するのに適しているから」です。
例えば、副業やアルバイトとして雇用されてしまうと、「ちょっとだけ見る」ことはなかなか難しいものです。その点、社会人インターンシップは期間が短く、それでいて職場の雰囲気や業務の流れ、働く人の姿を見ることができます。
いつもと少し違った環境、違った人たちと働く体験から、「自分の良い点」あるいは「足りない点」を知ることができるでしょう。
例えば、「評価にこだわっていたけれど、好きな仕事ができている自分は幸せだな」とか「あんなに社内で自己PRしていいんだ」という新たな発見にもつながるかもしれません。
実際、評価されないことに悩んでいた二十代後半のエンジニアKさんは、社会人インターンシップに行って、
「甲州さん、ただ決まったことをやればいいと思っていたけれど、実は会社からしたらそんなことは50点の評価で、できて当たり前のことだったんですね。プラスアルファが必要だった、ということに気づけました」
と、何とも晴れやかな顔で話してくれました。後日談ですが、Kさんは行動が変わり、リーダーを任されるまでになったといいます。
2 転職エージェントに相談
「自分を知る」意味で転職エージェントに相談する、という手もあります。今すぐ転職希望ではなくても「将来的に転職したいので、話だけ聞いてみたい」という活用方法もできるからです。
エージェントの方に自分の経験や実績、価値観などを伝えてみると、意外な回答が得られるかもしれません。
実際、「プレ転職」と称してエージェントに登録、面談を受けたエンジニアのAさんは、「そのご経歴で、希望の転職先はなかなか難しいかもしれません。もう少し会社の方で頑張られた方が……」と、やんわり転職の厳しさを教えてもらったといいます。
Aさんのような事例は珍しいかもしれませんが、いずれにしても転職エージェントを通して
自分が市場の中でどれくらいの価値があるのか、どの位置に存在しているのかを知っておくだけでも、行動を変えるきっかけになると思います。
さらには「こんなスキルがあればこういう業界で働けるんだ」という新たな気づきもあるでしょう。そうした情報に触れることで、自己評価はまた違ってくるはずです。
自分の中に「鳥の目」をつくれ!
今回は、「会社で評価されない」というお悩みに対してのアドバイスをお伝えしてきました。
私がみなさんに言いたいのは、「自分の中に”鳥の目”をつくれ」ということです。
よくビジネス書では、「物事を俯瞰して全体を見通しなさい」という意味で「鳥の目」が使われますが、私は自分自身を客観的に見つめるためにも、この「鳥の目」が必要だと思っています。
すなわち、「あの山に登るために今、自分はこの地点にいるんだ」とか「あんなルートで頂上を目指すこともできるんだ」という幅広い視野が、自分を活かすことにつながるのです。
会社で評価されない……と悩むみなさん。
今も十分頑張っていると思いますが、「他社ならもっと……」と転職を考えることもあるでしょう。「あの上司さえいなければ……」と思う時もあるかもしれません。
しかし、そんな風に考えられるあなたなら、今の会社でもっとできることがあるはずです。
例えば、一定の実績をつくってから辞めることもできます。あるいは、自分の行動を振り返り、プロジェクトをスムーズに進めるための新たな施策を提案することもできるでしょう。
転職は、それらをしてみてからでも遅くはありません。しかも、そうした経験をすると、いざ転職するときに、自分だけの「ストーリー」を持つことができます。
例えば、「社内に○○という課題があり、自身は1年間、▲▲といった活動をしました。しかし、受け入れられず結果を出すことができませんでした」
「そのため、御社では◆◆ということに取り組み、成果を出したいと思っています」
という実績や成果までの道筋を提示することができるのです。
今回挙げた取り組みを、いっぺんに行なうことは難しいかもしれません。ぜひ、できそうなポイントから実践し「会社から評価をされない」悩みに向き合い、自己成長の機会にしていただけたら幸いです。
書籍紹介
『DX時代の最強PMOになる方法』
著:甲州潤
▼こんなエンジニアはぜひお読みください。
・今の仕事に不満を持っていて、現状を変えたいと思っている
・給料をアップしたい
・エンジニアとしての将来が不安だ
・キャリアアップをしたいが、何をしたらいいかわからない
・PMOに興味がある
・PMOとして仕事をしたい
【目次】
第1章 一番稼げるIT人材は誰か
第2章 これからはPMOが1プロジェクトに1人必要
第3章 SEとPMOの仕事は何が違うか
第4章 稼ぐPMOになる7つのステップ
第5章 優秀なPMOとダメなPMOの見抜き方
第6章 PMOが最低限押さえておきたいシステム知識とスキル
第7章 システムは言われた通りに作ってはいけない
第8章 どんな時代でも生き残れる実力をつけよう
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