「努力」には3つの種類がある!「頑張り度」は遺伝の影響を受ける?【眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話】
「努力」も遺伝の影響を受けている
そもそも「努力」ってどういうもの?
これまで知能やパーソナリティといった、すべての心の動きに遺伝が影響していることを繰り返し述べてきました。では、「努力」もまた遺伝の影響を受けているのでしょうか。
「努力」という言葉は3つの違う事柄を指し示しています。ひとつめは「一定期間集中して行う努力」で、受験勉強などがこれにあたります。このタイプの努力は、IQや自己制御能力と同じように脳の前頭前野がはたらいていて、もちろんそこには遺伝の影響があります。
ふたつめは「どんなことでもコツコツやり続ける性格としての努力」で「勤勉性」と呼ばれるものです。これは外向性や同調性といったパーソナリティのひとつで、やはり遺伝が作用しています。さらに言うと、共有環境の影響はほとんど受けません(書籍49ページのグラフ参照)。つまり、家庭で教えたり家族の姿を見て習得したりすることができないものなのです。
3つめは「遺伝的素質の現われとしての努力」です。これは、特定のことについてずっと考え、やり続けてしまう行動のことで、本人は努力と思っていないかもしれないのですが、周りの人にはすごい努力に見えてしまうのです。言わば、突出した遺伝的素質が作用したもので、一卵性で片方がこのタイプなら、もう片方も程度の差こそあれ似たタイプになるでしょう。
「努力」には3つのタイプが存在する
①状況適応としての「努力」やりたくないときでも一定期間集中してやり遂げる行動
②性格としての「努力」どんなことでもコツコツとやり続ける、勤勉性といわれるもの
③遺伝の現われとしての「努力」特定のことを意識せずとも四六時中考え、永続的にやり続けてしまう行動(周囲からは努力に見えるが、当人にとっては自然な行動)
能力、学習、努力に関連する概念の相関
意識的であれ無意識であれ、特定の目標に向かって長期にわたる学習(練習、訓練、勉強などを含む)を持続できるかどうかは、遺伝的な個人差が関わっているのです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話』著:安藤 寿康