まちの魅力高め施策推進 横須賀・三浦両市長、新春インタビュー
タウンニュース横須賀・三浦編集室では新年の幕開けにあたり、横須賀市の上地克明市長と三浦市の吉田英男市長に、新春インタビューを行った。両市長は昨年を振り返り、能登半島地震を契機とした災害対策の重要性を改めて認識。市民の防災意識向上や自助・共助の重要性を強調した。観光振興で上地市長は「音楽・スポーツ・エンターテイメント都市」構想を推進し、浦賀地区の再開発などにも意欲を示した。吉田市長は、新海業プロジェクトを推進し、三崎漁港の海業振興を目指す考え。また両市が直面する人口減少対策については、国策としての少子化対策や子育て支援の強化を求めるとともに、三浦半島の利便性向上や子育てしやすい環境づくりに取り組むとした。(聞き手・本紙編集長佐藤弦也)
上地横須賀市長インタビュー続き災害対策、半島ぐるみで備蓄物資、相互補完へ協定「音楽×スポーツ×エンタメ」で好循環
――まず、昨年1年間を振り返っての所感をお願いします。
「やはり能登半島の地震が最も印象に残っています。自然災害の脅威に対してどう向き合うべきか、改めて認識させられる出来事でした。同じ半島という立地を踏まえれば、三浦半島は運命共同体です。防災や安心安全に向けて考えを巡らした1年でもありました」
――半島ぐるみでの防災で具体策は。
「現在横須賀市を含む4市1町は防災に関する相互応援協定を結んでいます。また『ブルーカーボン』(海藻などに吸収されるCO2由来の炭素)を増やす脱炭素の取り組みや太陽光発電導入に向けても共同で進めていますが、これらに加え、防災用の備蓄物資を互いに融通しあえるよう検討を始めました。今後、防災に限らず、幅広い分野で自治体間の連携を強化していきたいと考えています」
――市長が就任来掲げる「音楽・スポーツ・エンターテイメント都市」について。政策としての成熟度を感じる一方で、目に見える効果はどのようにお考えですか。
「音楽・スポーツ・エンターテイメントは、あくまで横須賀復活のツールです。横須賀をかつてのような賑わいのある、人々が楽しんで豊かに暮らせる街にしたいと考えています。その中で人々が幸福感や豊かさを感じ、人が集まり、税収が増え、福祉にお金を回せるようにしたいのです」
――福祉の充実という点で具体的な成果は。
「子育て支援の拡充や保健師の役割強化など、様々な施策を展開しています。妊活から子育て、高齢者介護まで、切れ目ない支援体制を構築することで、市民の生活を支えています」
――人口減少と少子高齢化についての考えは。
「自然減は仕方がない部分もあります。一方で、高度成長期に建てられた住宅、団地で育った方たちが街を出ていくという流れはある程度縮小していると考えています。今後は横須賀の魅力を発信し、移住・定住を促進することで人口減少と高齢化に対応していきます。子育て支援はもちろん、自然環境や都市機能の充実など、多角的な施策を展開していく考えです」
浦賀再開発に意欲「第2の開国」
――久里浜地区の開発については、どのような展望をお持ちですか。
「久里浜地区は、スポーツ・医療・商業が一体となった、横須賀の南の拠点を担う地区です。3月には市立うわまち病院が移転し、市立総合医療センターとして開院する予定です。マリノスや商店街、工業地帯などが連携し、地域全体で自走してくれることを期待しています」
――浦賀ドック周辺の再開発について昨年11月に事業パートナーの公募が発表されました。
「浦賀地区の再開発は、私の悲願です。選挙で公約した『第2の開国』を実現する上で、浦賀は最後の仕上げとなる重要な地区です。住友重機械工業さんとの信頼関係を築くまでに長い年月がかかりましたが、ようやく公募にこぎつけました。歴史と海を中心に、浦賀を魅力的な街にしたいと考えています」
――来年度の予算編成について。今夏には市長選が控えています。4年前は本格予算を発表し、続投への意欲を感じました。編成の方針は。
「2月議会には本格予算を提出する予定です。
選挙に限らず、どういう状況でも市政を止めることがないよう、本格予算を組むべきだと考えています。来年度は、これまで仕掛けてきた施策を確実に実行し、市民の皆さんに成果を味わっていただけるようにしたいと考えています」
――最後に、市民の皆さんへのメッセージをお願いします。
「コロナ禍を乗り越え、ようやく様々な施策が芽吹いてきました。今後はその芽を伸ばし、果実を実らせ、新しい価値を創造する時期です。市民の皆さんには、その成果を楽しんでいただきたいと思います。また、自然災害への備えも重要です。市としても防災体制の強化に努めますが、市民の皆さんも防災意識を高めていただきたいと思います」
吉田三浦市長インタビュー続き市制70周年、市民誇れる町に人口減・防災・交通…課題向き合う
――まずは昨年の振り返りをお願いします。
「元旦に発生した能登半島地震は、半島という地域特性を持つ三浦市にとっても他人事ではありませんでした。市民の防災意識が高まり、改めて日頃からの備えに取り組んだ年となりました。4月からは夜間タクシー不足解消のため、ライドシェアの実証実験を開始しました。6月には、子育て賃貸住宅やコミュニティーセンタ―などが一体となった『チェルSeaみうら』が完成するなど、さまざまな事業が進捗しました。一方、人口減少という課題は依然抱えており、引き続き取り組んでいかなければなりません」
――能登半島地震を受けて講じた防災対策は。
「ハード面の整備はもちろんですが、市民の防災意識向上と自助・共助の取り組みが重要だと考えています。具体的には、消防団の資機材充実、観光客向けの避難経路表示の改善などに取り組んでいます」
――ライドシェアが3月までの「試行」という形で再スタートを切ることになりました。改めて事業の必要性と展望についてお聞かせください。
「タクシー事業者の撤退により、夜間の交通手段確保が課題となっていました。飲食店や観光事業者、市民からの要望もあり、ライドシェアの実証実験を開始しました。当初は、周知不足やアプリの使い勝手など課題もありましたが、徐々に改善され、金・土曜日に利用者が増加しています。本格実施に向けて関係者と調整していましたが、市議会から事業の採算性に対する意見をいただき、試行運行として継続することになりました。今後は利用率向上と広報活動の強化に取り組みます」
――地域公共交通のあり方について、どのようにお考えですか。
「現時点では、日中の交通手段については大きな課題があるとは認識していません。夜間の移動手段不足解消が喫緊の課題です。公共交通全体の維持には多額の費用がかかります。高齢化社会における移動手段の確保などについては、先進事例を参考にしながら慎重に議論を進めていきたいと考えています」
――三崎漁港の海業振興を目指して取り組む「新海業プロジェクト」について。地元の事業者などから興和グループが提案した計画の概要が見えず不安視する声が上がっています。
「事業提案の内容は、変更になる可能性が高い未成熟な情報であり、公表することで、憶測や混乱を招く可能性があるため、事業者と協議の上、当面は非公開としています。3月に予定している基本協定の締結後、具体的な契約内容と合わせて丁寧に説明していく予定です」
――昨夏、開設が見送られた三浦海岸海水浴場の再開に向けて展望は。
「今夏は市が開設者となり、新たなモデルで海水浴場を運営する予定です。民間の事業者とも連携し、砂浜全体の活用方法を検討しています。ビーチスポーツなどを楽しめるような、時代に即した多様なニーズに対応できる海水浴場を目指します」
――深刻な人口減少が続いています。対策についてどう考えますか。
「市としても三浦への移住を考えている方を対象にした講座や婚活イベントを実施するなどの対策に取り組んでいますが、人口減少を食い止めるのは容易ではありません。根本的には国策として、少子化対策や子育て支援を強化していく必要があるでしょう。一方で、三浦半島の利便性向上や、子育てしやすい環境づくりなどに取り組む必要があると考えています」
――きょう1月1日は市制記念日で市政70周年の節目です。市民に向けてのメッセージをお願いします。
「三浦市は『人よし、食よし、気分よし』というフレーズを前面に出していますので、多くの皆さんに三浦市の良さを知ってもらい住んでもらえるよう、様々な取り組みを進めていきます。市民の皆さんが誇れるような町にしていきたいと思います」