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大舞台が「大好き」と言い切る琉球ゴールデンキングスの大型ルーキー”脇 真大”!天皇杯準決勝でも健在だった“大物感”

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試合後の円陣で、先輩の松脇と小野寺の肩に手を回す脇。背中からも大物感が漂う(18番)
試合後、ファンに向けて手を振る脇真大=2月5日、沖縄アリーナ(長嶺真輝撮影)

バスケットボール男子の琉球ゴールデンキングス(Bリーグ西地区首位)は2月5日、沖縄アリーナで第100回天皇杯全日本選手権準決勝に臨み、三遠ネオフェニックス(同中地区首位)に80ー67で勝利した。桶谷大ヘッドコーチ(HC)が体調不良で不在の中、主な指揮は佐々宜央アソシエイトヘッドコーチ(AHC)が執った。 キングスは3年連続の決勝進出となる。決勝は3月15日午後3時から、東京の国立代々木競技場第一体育館で行われる。相手は11年ぶりの決勝進出となるアルバルク東京(同中地区2位)。キングスは2年連続で決勝で千葉ジェッツに敗れており、今年こそ悲願の初優勝に挑む。 三遠との準決勝では、キングスは第3Q中盤でこの試合最大となる13点のリードを奪われた。しかし、そこからキャプテンの一人であるヴィック・ローを中心に得点を重ね、ディフェンスの強度を上げて逆転に成功。最大の強みであるリバウンドで56本対40本と圧倒し、そのまま点差を広げて勝ち切った。現在、Bリーグにおける平均得点が92.8点でリーグトップの三遠を67点に抑えたディフェンスも見事だった。 ローは両軍最多の31得点に加え、11リバウンド2ブロックと攻守で躍動。ケヴェ・アルマが12得点15リバウンド、岸本隆一が8得点7アシスト2スティール、ジャック・クーリーが4得点8リバウンドを記録した。伊藤達哉、小野寺祥太、松脇圭志も高い得点力を誇る三遠のガード陣にプレッシャーをかけ続け、それぞれが自らの役割を果たした。 そんな中、勝負所でたびたび輝きを放った選手がいた。若干22歳のスーパールーキー・脇真大である。Bリーグでは今シーズン、全試合出場を継続中。まだ荒削りな部分こそあれど、強豪やスター選手相手でも物怖じせずに結果を残す“大物感”は、この大一番でも健在だった。

要所の得点、リバウンドで存在感 ターンオーバーは「ゼロ」

ドリブルで攻め込む脇

先発の一人としたコートに立った脇。初めの攻撃で岸本隆一の3Pシュートが外れたところへオフェンスリバウンドに飛び込み、ゴール下シュートで早速先制点を挙げた。チームは勢い付き、第1クオーター(Q)中盤で13ー4とリードを広げた。 しかし、三遠の持ち味であるスピード感のあるオフェンスで一気に追い上げられ、13ー14と逆転されてこのクオーターを終了。流れを変えたい第2Q初めのオフェンスで、またも脇が左45度からドライブで切り裂き、レイアップシュートを決め切った。 第2Qは三遠の流れが続いたが、離されかけた時間帯に脇がリングに弾かれたボールをタップし、ファウルをもらいながらそのままリングにねじ込む場面もあり、チームが我慢を続ける原動力となった。後半に入ってからもディフェンス網の裏に飛び込んでゴール下シュートを決めたり、オフェンスリバウンドをつかんだりして要所でのプレーが光った。 結果、個人スタッツは21分17秒の出場で10得点6リバウンド1アシスト1スティール。相手にボールの所有権が移るミスを指す「ターンオーバー」はゼロだった。 試合後の総括では、「ヘッドコーチがいない中で、『みんなでしっかり戦っていかないといけない』という話をしていました。リバウンドの部分で相手に勝てたということが今日の勝因かなと思います。そこをしっかりチーム全員でできて良かったです」と淡々と振り返った。

「緊張することがない」という鋼のメンタル

ディフェンスで相手ハンドラーにプレッシャーをかける脇

昨シーズン途中に特別指定選手として加入した脇。ただ、怪我の影響もあり、天皇杯の出場はプロ入りして以降で今回が初めてだった。千葉ジェッツに69ー117という歴史的大敗を喫した昨年の決勝も目の当たりにしたからこそ、今回の一戦に懸ける気持ちも強かったようだ。 「レギュラーシーズンとは違って、1試合が終わったらまた次の日に試合ができるということはないので、この試合に懸ける思いは本当に強かったです。大学では一発勝負にたくさんチャレンジしてきて、キングスでは初めてでした。その中で、昨年の天皇杯は怪我をしてて、チームが負けた姿を見てますし、昨日の夜はそのことも考えながら『絶対勝たないといけない』という思いがありました」 試合後の記者会見での受け答えも含め、コート内外で常に堂々としている印象だ。当時、白鴎大学の4年生だった一昨年の全日本大学選手権(インカレ)ではトーナメントを勝ち抜いてチームを優勝に導き、大会MVPと得点王に輝いた経歴を持つ。 一発勝負でも動じない鋼のメンタルは、以下のコメントからも見て取れる。 「僕はあんまり緊張をすることが無いので、いつも通りやっていました。こういう大きな舞台で活躍することは大好きです。こういうチャンスは大学の時も多く巡ってきて、今も巡ってきています。ルーキーシーズンから日本一になれるチャンスがあるのなら、僕は死に物狂いで取りに行きたいと思っています」 なんとも頼もしい新人である。

リバウンド争いで「日本代表」の吉井裕鷹と渡り合う

脇とマッチアップした日本代表主力メンバーの吉井裕鷹

三遠戦では、日本代表として2023年のFIBAワールドカップや昨年のパリオリンピックで主力を張った吉井裕鷹とのマッチアップも見応えがあった。 強靭なフィジカルや高い3Pシュート成功率を武器とする吉井は身長196cmで、脇は193cm。同じような体格をしており、この試合ではリバウンド争いで体を張る場面が多く見られた。吉井は34分45秒の出場で11得点6リバウンド。プレータイムの差こそあれど、個人スタッツはほぼ互角だった。 以下のコメントには、吉井に対するリスペクトとライバル心が垣間見える。 「吉井選手とは代表合宿の時にも一緒にやらせてもらって、リバウンドや体の強さは日本トップクラスだと思っています。そこに対して負けないように、『吉井選手よりリバウンドを取ってやろう』と思っていました。今後も代表活動があるので、吉井選手の良いところを盗んで、チームに持ち帰ってこれたらなと思っています」 勝負を分けたリバウンドについては、自身も高い意識で臨んでいるという。キングスは現在、Bリーグにおける平均リバウンド数が43.9本とトップに位置するが、宇都宮ブレックス、大阪エヴェッサ、アルバルク東京という強豪チームと対戦した直近の5試合では、相手に上回られる試合もあった。 その間に、リバウンドに対する意識が向上したきっかけがあった。 「大阪戦とA東京との1戦目が終わった後に、コーチ陣から『日本人選手のリバウンドをもうちょっと頑張ってほしい』という話がありました。日本人選手の中では僕が一番大きいので、もっとファイトしないといけない。仮にボールが取れなくても、ボックスアウトを剥がしに行くことでチャンスが生まれます。ボールが転がっていたら取りに行ける状態のところまでは行こうと思ってるので、リバウンドでもチャンスはずっと狙っています」 三遠戦でつかんだリバウンド6本のうち、3本はオフェンスリバウンド。それがセカンドチャンスポイントにつながった場面もあり、意識の変化が結果につながっている。

佐々AHC「試合に『もっと出せ』っていう雰囲気を感じた」

体調不良で不在だった桶谷大HCの顔写真が描かれた紙を持ち、試合後の写真撮影に向かう佐々宜央アソシエイトヘッドコーチ

ここ一番の試合でも臆することなく、しっかりと結果を残すルーキーに対し、コーチ陣も当然頼もしさを感じている。桶谷HCに代わり、記者会見に出席した佐々AHCが試合中のエピソードを交えて脇の“大物感”に言及した。 「僕が脇を交代した時に『もっと出せ』という雰囲気がすごい出ていました。こういう特殊な雰囲気がある舞台で、新人が『ちょっと怖いな』ってなるよりは、その気持ちがあるというのは素晴らしいです。やっぱり大物だなと思います」 脇自身は「2ポイントの確率は良かったんですが、2本の3Pシュートを外してしまったので、ここを1本でも決めたかったです」と課題も口にしたが、決して得意ではない3Pシュートを迷いなく“打ち切った”ということも含め、佐々AHCは評価していた。 「3Pシュートも入らなかったですけど、そこを打ち切ってくれたのは良かったです。本当に大事な時間帯でも臆せずにプレーをしてくれました。もっともっと高いレベルでやれる選手だと思っています」 3月15日の決勝で“三度目の正直”に挑むキングス。まだ1カ月以上先ではあるが、脇は既にタイトル奪取を見据えている。 「(A東京は)インサイドが強力なチームですし、一発勝負は何があるか本当に分からないので、気持ちで負けないことが一番大切です。集中を切らさずにしっかりやれば、絶対に勝利できると思っています。僕たちが日本一になれば、沖縄がまた元気になると思っています。絶対に優勝したいです」 第100回の記念大会で、一層価値が高まる今年の天皇杯タイトル。初の戴冠を目指すキングスにとって、脇がキーマンの一人になることは間違いない。

試合後の円陣で、先輩の松脇と小野寺の肩に手を回す脇。背中からも大物感が漂う(18番)

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