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その金融商品の提案は顧客第一主義!?私達はどう対応すべきなのか

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2025年4月から世界中で吹き荒れた「トランプ関税ショック」は、個別国とアメリカの交渉が進み、とりあえず目に見える暴風圏は抜けた印象です。ただ、これから2024年以前のように米株が右肩上がりに元通りになるのか否かは、専門家でも予測が分かれています。まさに「自分が信頼した専門家のもとで資産の再構築をする」タイミングですが、そのアドバイスに「何らかの力」が働いていたら、我々はどのように予防線を張るべきでしょうか。

保険代理店事業の大手に行政処分 

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2025年5月、金融庁は東証プライム上場で「マネードクター」を展開するFPパートナーに対して、保険業法にもとづく行政処分を課す方向で検討に入りました。日本で保険や証券・FPを柱に展開する事業会社が行政処分の対象となるのは、初めてではありません。

保険会社への指導内容は、顧客に優先的に案内する保険商品を決めていた疑いがあります。本来数多くの保険商品から顧客に選択してもらうはずの「相乗り保険会社」で、提携元である保険会社の推奨商品が優先されれば、便宜供与の疑いがあります。

「あなたにあった保険商品」は建前か

これは保険会社に限った話ではありません。証券会社において紹介される投資信託は、それぞれ手数料が異なります。つまり証券会社にとって高い手数料が発生する商品は優先的に案内する理由があり、これまで何度も業界の自浄努力が問われてきました。

かねてより日本ではファイナンシャルプランナー(FP)など、顧客のパーソナルファイナンスを診断する専門職も、アドバイスの結果必要となる保険や証券などの金融商品の売買手数料を収益源としている人が多いのです。収益モデル自体は違法行為ではありませんが、さも顧客の利益を前面に出しながら、「さまざまな力や思惑」が働いている相談業務は、長らく改善が唱えられています。

とはいえ顧客の意志を最優先したアドバイス、もしくは商品案内が何かという問いに、正解はありません。顧客と専門家には知識差、情報差があるのは当然のため、「これがあなたにとって最適解の商品選びです」となれば信じ切ってしまうためです。SNSの発展もあり、あまりに違和感のあるコンサルティングは指摘の対象になりますが、全体数から見れば僅かな事例でしょう。

そもそも、顧客のすべてが「いま金融商品を売買すべきタイミング」かはわかりません。ただ、日本を代表する金融機関ですら、手数料ベースで収益計画を立てているところを見ると、顧客第一主義より優先されるものがある、というのは間違いではないでしょう。

2025年春、トランプ関税ショックから世の中が戻りはじめる中で、再度米株の投資信託を信じようというアドバイスもあれば、BRICS銘柄がこれから主役になるという見解もあります。日本株の再評価組も増えるでしょう。ただ、その背景に見えない力が何も働いていないと証明できるほど、この世界は透明ではありません。その中でライフプランに専門家の見解を求める我々は、どのように情報を受け入れるべきなのでしょうか。

専門家を「信頼する」にはどうすればいいのか

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対照的な模範回答ですが、「信頼できる専門家を1人(数名)見つけること」と同時に「信頼できる専門家を固定しないこと」だと考えます。

まず前者は、これまで模範回答とされてきたものです。専門家と顧客として信頼感が構築できれば、過度な手数料の誘惑が入る余地はありません。専門家にとって顧客ファーストを守れなければ当事者のみならずその人の家族、および紹介される可能性のあった友人知人とのネットワークを失うことになるでしょう。信頼感は優先順位を間違えないためのトレードオフの性格としても機能します。

一方の「信頼できる専門家を固定しないこと」は、時代の変化によって選ぶことができるようになりました。インターネットで専門家と繋がることが容易になり、相談する垣根はとても低くなりました。一方で手数料に限らず「悪意」がある回答には気づきにくくなっています。そのため、さまざまな意見を集めることで、1つだけ方向性の違うアドバイスが目立つようにもなります。

両者を混合させて、軸は1人の専門家を重視しながらも、セカンドオピニオンを積極的に活用していくという方法も推奨できます。

フィデューシャリー・デューティーとは

金融商品を扱う銀行や証券会社などには「フィデューシャリー・デューティー(Fiduciary Duty」という言葉があります。日本語では「受託者責任」と訳します。パーソナルファイナンスにおいて、相手方から信頼され、その信頼のために高品質のサービスを提供すべき、という概念です。

長く日本は、欧米に比べてこの概念が定着していないと指摘されてきました。昨今の是正方向を見て、少しずつ顧客意志の尊重が実現されていっているのも事実です。ただ、この考えが広く行き渡るには、まだ多くの時間を必要とすることも間違いありません。

業界全体が「亀の歩行」で問題提起をする間にも、我々にはそれぞれのライフプランによって金融商品と向き合うタイミングが訪れます。本来金融商品は、相応のリターンとリスクを可視化した上で取り組むべきもの。現状で採用できる専門家への頼り方を今一度確認し、自分達のマネープランに反映していきましょう。

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