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WONKがceroをゲストに迎えた一夜限りのツーマン公演に見た、現代ポップスのフロンティアスピリット

SPICE

WONK

WONK LIVE AT Zepp Shinjuku w/cero
2024.08.12 Zepp Shinjuku

WONKとcero。初共演と聞いて少し意外な気がしたが、その目撃者になれるのはラッキーだ。ceroは昨年、エクスペリメンタルな創造性を詰め込んだアルバム『e o』で、新たなステージへと進んだ。WONKは原点回帰とも言える生音主体のアルバム『artless』から2年を経て、現在新作を制作中。キャリアの長さや音楽性は違えど、現代ポップスにおけるフロンティアスピリットは共通する二組。真夏の新宿・歌舞伎町の地下のライブハウスで、どんな化学反応が起きるだろうか。

cero

先陣を切るのはcero。上手から荒内佑(KeySmpCho)、高城晶平(VoGtFl)、橋本翼(GtCho)が横一列に並び、後方にサポートメンバー5名が控える。オープニングは「Summer Soul」だ。パーカッション、キーボード、トランペットを加えた大所帯のバンドに、精密な電子音が絡み合う豊かなサウンド。涼しげなチルアウト・ミュージックが、心地よいダンス・グルーヴへと発展し、ミラーボールがきらきら回る。高城がマイクを握ってステージを横切り、歯切れのいいラップを聴かせる。「マイ・ロスト・シティー」の5拍子が心地よく、「Elephant Ghost」から「魚の骨 鳥の羽根」へ、アフリカンなビートとコーラスに体が揺れる。8人が同時に音を奏でているのに、どうしてこんなにクリアで繊細に響くのだろう。バランスが絶妙だ。

cero

「WONKのみなさん、誘ってくれてありがとうございます。嬉しいです。気合が入りすぎてしまって、最初に作ったセットリストが15分オーバーしていることがリハーサルで発覚して、急遽縮めました」

「それでもオーバーするかもしれないので、超特急で進めます」。高城のユーモラスなMCに、笑い声と拍手が起きた。次のセクションは『e o』からの3曲で、「Nemesis」はループする電子音のビートの上で、幾重にも重なりあうハーモニーがとても美しい。「Tableaux」もコーラスがよく映える曲で、歌えるメンバーが多いのは、ceroバンドの強みだ。心地よくチルできる曲が続いたあと、「Fdf」はぐっとテンポを上げて溌剌と、心と体をリフトアップするソウルミュージック。生音と電子音の融合も、8人の音の住み分けも、寄木細工のように恐ろしく緻密なのに、伸び伸びとした自然を感じる。ステージから放たれるバイブスがとてもポジティブだ。

cero

あっという間にラスト2曲。「Double Exposure」は、シンセベースやムーグのソロで妖しく盛り上げ、「Poly Life Multi Soul」は、じわじわとテンションを上げてゆくファンキーなリズムの魔法で、フリーダムなダンスをうながす。「ありがとうございました。このあとはWONKです。楽しんでいってください」と、満面の笑顔で高城が挨拶する。音源の精密な芸術性の高さはそのままに、ライブではよりフィジカルでアクティブな側面を見せる。ライブバンドとして成熟を極めるcero、観るなら今だ。

WONK

ステージ上に冂の字を描くように、上手から荒田洸(Dr)、井上幹(Ba)、長塚健斗(Vo)、江﨑文武(Key)と楽器が並ぶ。WONKのステージは挨拶抜き、「Fleeting Fantasy」のタイトなリズムと饒舌なピアノ、長塚のアダルトオリエンテッドなソウルボイスでゆったりと幕を開けた。2曲目には早くも未発表の新曲をプレイ、タイトルはわからないが、歌詞を聴く限りメッセージ色の濃い楽曲のようだ。長塚のエフェクティブなボーカルと口笛が印象的な「Euphoria」から、ベースとギターの両方を操る井上の、繊細なギターの爪弾きが耳に残る「Nothing」へ。曲が終わると長塚が「ありがとう」と言うのみで、MCもアクションもほぼない代わり、音がすべてを物語る。誰もが立ちつくしてステージを見つめる、実にストイックな、しかし居心地よさを感じる空間。

WONK/長塚健斗(Vo)

中盤ではさらなる新曲を。ゴスペルを感じる上品なスローバラードに、長塚の声がよく映える。アルバム『artless』からの「Butterflies」は、生音に加えて音響的なエフェクトを駆使した、彼らが掲げる“エクスペリメンタル・ソウル”にふさわしい1曲。波のように揺れる音の上で、漂うように浮かぶ長塚の声。そこから一気にテンポを上げ、「EYES」では自然発生で手拍子が沸き起こった。打ち込みかと思いきや、複雑なリズムを易々と叩く荒田が凄い。音源ではプログラミングもふんだんに使うWONKだが、ライブだからこそメンバーのスキルの高さがよくわかる。

Jinmenusagi

「スペシャルゲストです。Jinmenusagi!」

長塚に呼び込まれてマイクを握る、JinmenusagiとWONKが揃えば当然やるのはこの曲、8月7日にリリースしたばかりのコラボ曲「Here I am」だ。緊張度の高いヒップホップトラックの、あちこちにメロウなピアノやコーラスを散りばめ、Jinmenusagiのストイックな低音ボイスが響きわたる。時代を撃つ歌詞のメッセージ性の強さも格別だ。ぜひチェックしてほしい。

WONK/江﨑文武(Key)

WONK/井上幹(Ba)

4人に戻った「Passione」では、荒田の叩き出すアッパーなリズムに煽られ、手を挙げ踊りだすオーディエンス。長塚のボーカルも、さっきまでの穏やかなバラードとはまるで違う、危険な香りを放ち始める。極めつけは、この日3曲目の新曲だ。10分に及ぶ壮大な展開の中に、メロウなパートと攻撃的なパートが共存し、後半はピアノ、ベース、ドラムの超絶技巧フリーセッションへと突入。大興奮のオーディエンスが叫び声をあげ、熱気が頂点に達したところで間髪入れずに「FLOWERS」へ。ラストは大らかな明るいソウルミュージックで締めくくる展開が、心憎いほどにばっちりハマった。

WONK/荒田洸(Dr)

「みなさん、今日はどうもありがとう!」

アンコールはなし、二つのバンドの共演もなし。ただひたすらにそれぞれの持ち味を出し切るのみ、実にツーマンらしいツーマンライブ。しかし楽屋裏ではきっと、同じ時代を生きる者同士の、興味深い音楽談議が交わされたと推測する。この日から始まる何かがきっとある、WONKとceroのこれからの活動がさらに楽しみになってきた。

取材・文=宮本英夫 撮影=木原隆裕

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