陸奥湾口の海峡マダイをねらう! 「ジグキャスティングマダイ」の基本と攻略法
弘前城の桜がほころびだすころから本格的なシーズンインとなる、陸奥湾口の「ノッコミマダイ釣り」は、青森に春の訪れを感じさせる人気の釣りです。とくに、早くからライトジギングでのマダイねらいが盛んなエリアだったこともあり、テクニック的にも独自の発展を遂げています。
今回はキャスティングでねらうライトジギングマダイ、すなわち「ジグキャスティングマダイ」についての釣り方の基本と攻略のカギをお届けします。
青森はマダイ天国
私がマダイをねらうようになったのは2006年の春。その当時から青森ではライトジギングでマダイを釣ることが盛んに行われていました。ジグのハリにアオイソメを付けて釣る「ジグエサ」釣りやブラクリ仕掛の変化版「ブラー仕掛」など、ルアーとエサをミックスした釣法が発展した形で、現在のライトジギングマダイにつながっているようです。
全国的にも人気のあるマダイ釣りですが、その魚影の濃さから青森でも人気が高く、とくに春のマダイ釣りは多くのアングラーに親しまれています。「大型がねらえる」「釣りとしてテクニカルで難易度が高い」「比較的近海での釣りで入門しやすい」「食べて美味しい」などの釣りの楽しさと、さらにライトジギングという手軽さとルアー要素がプラスされたことで、より多くのアングラーによって技術面も向上しています。
アングラー目線で見るマダイの習性
陸奥湾でのマダイのシーズナルな動きは、冬の間は日本海側のディープエリアで過ごし、春から湾内に移動します。陸奥湾内ではホタテなどの養殖が盛んで、マダイは養殖施設に付く甲殻類や虫などを食べて産卵します。水温が下がり始める晩秋まで湾内で過ごし、水温低下とともにディープエリアに向けて移動します。多くのマダイを育み、稚魚のゆりかごとなる自然豊かな陸奥湾の環境が、豊富なマダイ資源につながっているのかもしれません。
マダイは潮流に敏感
学術的なマダイの生態はさておき、アングラー目線から見え隠れするマダイの生態を押さえておくことは、マダイ釣りを理解するうえで役に立つことばかりです。マダイ釣りというフィルターを通して見えるマダイの生態はさまざまあります。
「マダイは潮を釣れ」とよくいわれるように、マダイの釣れる時合は潮流にとても左右されます。このことはマダイがエサを食べる行動が潮流に大きく影響を受けるということです。
実際の釣りでも、干満のタイミングが切り替わる前後の時間帯などに時合が集中したり、ピタッとマダイの食いが止まったりと、実にハッキリと釣れ方に違いが出ます。潮が流れないときはマダイの食いつきも悪く、かといって潮流が速すぎる場面では、釣りにくさもあって釣果が伸びません。
季節によってエサが異なる
マダイの骨格はとてもしっかりしています。ウロコや頭の骨も硬く、アゴの噛む力も強いのが特徴。過去に釣り上げたマダイの胃袋の中を確認したところ、ウニを殻ごと噛み砕き食べていたこともありました。このようにマダイの食性は幅広く、小魚や甲殻類、底生生物などを食料としておりさまざまな環境に適合して生活できます。
たとえば陸奥湾では、エサの乏しい春はイワシなどのベイトを食べ、海水温の上昇にともなって活発になる甲殻類、貝類、虫類などを食べるなど、食べやすい食料をその都度選択しながら生きています。春のマダイがジグに対してよく反応するのは、その時期のメインベイトがイワシなどの小魚だからといわれています。
マダイは泳層を変えるのが苦手??
東北では「マダイの仮死状態」がニュース報道されることがよくあります。動けなくなったマダイが海面に浮いてきて、船で網を使ってすくい上げるといったニュースです。これはマダイがオホーツクからの冷水に囲まれて、仮死状態となってしまうことが原因だそうです。
マダイは水温にも敏感であることの表れですが、もう1つ、浮力調整が器用ではないということの表れでもあります。マダイを釣り上げるとよく口から胃袋が出たり、肛門から腸が出たりしますが、これは体の中の空気が、釣り上げられることによって膨張して飛び出ることが原因です。マダイは急激な水深の変化に対応できないので、このように冷水に囲まれても深く潜ったり、海面方向の浅い水深に浮上して逃げることができないのでしょう。
水深10mごとに1気圧変化することを考えれば、マダイがジグを追って海面方向に追尾したとしてもせいぜい垂直方向に5m程度の幅しかないように思います。なので後述するように、ジグを食わせるにはレンジキープの横引きがキモになるのだと考えます。
マダイならではのエサの食い方がある?
さまざまな食料を口にし、環境に合わせた生活ができるマダイですが、対応の幅が広い反面、専門的に発達したほかの魚の採餌行動には遅れをとります。
イワシのナブラやベイトボールに投入したジグでもマダイを釣り上げたことがありますが、こういった場面では、海面には青物などの魚を食うことに長けた魚がいるとマダイは青物の下のポジションとなり、なかなかイワシを優先的に食べることができなくなります。どちらかというと青物の食べこぼしをマダイが拾い食いするような形です。
マダイの歯型が付いたジグ
そもそも魚を食べることに特化したマダイではないので、青物と比較すればイワシを捕食するのは不得手です。しかも、口も大きく開いて吸い込み食いすることはできないので、強靭なアゴの力でイワシにダメージを与えて、動きが鈍くなったところを捕食するというのがマダイの戦法なのでしょう。
こうした習性からか、ジグへのアタックもゴリゴリと何度も噛み付いてきます。マダイはマダイなりの戦略と体の特徴を活かして海で生きているのですね
「ジグキャスティングマダイ」のタックルセッティング
潮を横に釣るのが、マダイの習性に沿った効率のよい釣りなのだということを、経験から知り得たアングラーが試したのが「ジグキャスティングマダイ」の始まりだったのかもしれません。確かに通常のライトジギングよりも広範囲に探れ、春先の産卵行動を意識、あるいは水温の関係やベイトのいる中層にサスペンドする、いわゆる「浮いたマダイ」を効率よく攻略するにはベストな釣法といえるかもしれません。
ここではジグキャスティングマダイのタックルセッティングについて解説しましょう。
ロッド
私がこの釣りを始めた当初は専用のタックルなど存在していませんでした。当時よく用いられたのは、サクラマス用やシーバス用のルアーロッドです。今では数社からジグキャスティングマダイ用にセッティングされたロッドが市販されています。
ジグキャスティングマダイの釣りでは遊漁船からのキャスティングから釣りがスタートします。「キャスティング→ジグをマダイのレンジまで沈める→リトリーブ」といった流れなので、キャスティングしやすく船上でも取り回ししやすい、8ftから7 ft程度のレングス(長さ)が使いやすいロッドになります。基本的に安全のためにアンダーハンドでのキャスティングなので、胴の間の釣座では短めがよいでしょう。
マダイのアタリはガツガツとジグを何度もかじりついてきます。ロッドティップには違和感なく食い込ませるソフトさと、しっかりとフッキングするだけの張りのあるミドルセクション、潮流の中で張り付くようなファイトをみせる大型を浮かせるバットパワーがロッドに求められます。
リール
リールはベイトリールでも可能ですが、ライトジグをキャスティングし、スムーズにラインを送り出すためにはスピニングリールの方が使いやすいです。
リールサイズはシマノ社なら4000番サイズ。3000番でも可能ですが、大型マダイとのやり取りやキャスティングの飛距離、ジグにかかる水圧による巻き抵抗を考慮すれば、ややパワー不足となるはずです。もちろん「三段引き」といわれる大型の引きにも対応できる、ドラグ強度を持ったリールの使用が前提です。
ラインシステム
メインラインはPEラインを使用します。キャスティングすること、同船者とのラインクロスやオマツリが多いこと、複雑な潮の流れや強い潮流の中で釣ることを考えればPEラインは細い方が有利、しかし、トラブルや1mクラスのモンスターマダイとの対峙を考慮するなら、1~1.5号が適切なライン強度だと思います。リーダーは20~30lbを、キャスティングに支障のない範囲で用います。
「ジグキャスティングマダイ」の基本とコツ
ボトムから浮いたマダイを効率よくねらうジグキャスティングマダイは、「キャスト→ジグをフォール→リトリーブ」といった動作でジグをスイミングさせるのが一連の流れです。
通常のライトジギングでマダイをねらう場合、一旦、ジグをボトムまで落とし込んでからリトリーブを開始するのがよくあるパターンですが、ボトムから大きく浮いたマダイを釣るにはムダが多い…。比較的ボトムに近いレンジにマダイがいる場合なら、こうした釣りもアリですが、魚探の不感帯に入るほどの浅いレンジにいるマダイや、中層にいることが分かっている魚に対してムダなく効率よく釣るなら、ファーストフォールで底取りせずにレンジ直撃で攻めるのがベストだと思います。
同じキャスト距離でボトム着底からリトリーブした場合と、レンジ直撃から(中層から)リトリーブした場合ではメインラインの角度が変化するので、直撃した方がヒットレンジを長くトレースすることができチャンスも広がります。
前述したようにマダイは青物よりも小魚の捕食は下手なので、ジグをスイミングさせるときのアクションは控えめで十分です。リトリーブ中はいわゆる「タダ巻き」でレンジをキープします。リトリーブ主体でトゥイッチなどのアクションは付けません。例外として、マダイからのバイトがあっても乗らなかった場合などに軽くロッドをジャークし、ジグのバランスを崩してから再フォールして誘い直すときなどがあります。
基本的にはノーアクションのスローリトリーブですが、上手く潮流に乗せる感覚が大切です。潮が速くジグの浮き上がりやバタつきが強いときは、リトリーブスピードを調整することも必要になります。
レンジコントロールのキモ
ここで問題になるのがジグを通すレンジの把握です。一旦底取りする釣りと圧倒的に違うのは、リトリーブを開始する地点(水深)がマダイの定位するレンジで変化するところです。上手くレンジを横に長く引いてくることで「マダイのバイトチャンスを広げる」「活性が落ちたマダイでもバイトにつなげることができる」などメリットが広がる反面、今、ジグが何mのレンジにあるか把握できない、いわゆる「タナボケ」状態では意味がありません。まさしくこのジグのレンジコントロールがこの釣りのキモになっています。
私が実践している方法は、まずキャストせずに船から足下にジグを投入します。そしてジグが着底するまでの時間をカウントします。たとえば水深70mで60gのジグを投入、着底までのカウントが50カウントだったとすれば、水深35mなら25カウントというようにまず押さえておくわけです。
キャスティングしてジグをフォールするときに同じようにカウントを取り、ジグのレンジを推測します。
こうして大まかにジグのレンジを押さえ、実際に釣りをしながらレンジをコントロールしていきます。リトリーブを開始したものの、巻き上げによってレンジを外れてしまったらジグをまたフォールして、リトリーブを足下まで繰り返します。フォール速度はメインラインの抵抗や潮の流れの強弱、キャストの方向やジグの形状でも違ってきますので、注意が必要です。
ジグセレクトとアシストフック
船の立ち位置でもキャスト方向は制限されるので、潮流に対して上手く流せない立ち位置のときもあります。キャストしてもラインがすぐに船下に入るなど難しい状況もありますので、海中へのラインの入水角度に注意しておきましょう。ジグの重さを変えたり、アシストフックにラバーやスピナーブレードを取り付けて水流抵抗を増減させるなどして、レンジをコントロールするのもある程度は可能です。
潮流の中でジグをレンジキープしながらスイミングさせるのですから、ジグのタイプはセンター重心のタイプがオススメです。潮の抵抗を軽減する意味でタングステンジグも効果的。基本的にはジグは小型の60g前後が使いやすいと思います。
センター重心でヒラヒラと長くレンジにとどまるタイプのジグが鉄板ですが、ベイトサイズが大きい場合などに、大きめのジグで爆釣を経験したというアングラーもいたことから、実際の釣行では臨機応変な対応ができるように40~150gまで幅広く用意した方がよさそうです。
複雑な潮流の中でレンジキープしながらジグを横にスイミングさせるためには、ジグにはある程度のウェイトが必要になってきます。かといって狭いバイトレンジに長くジグをスイミングさせるには軽いウェイトが有効になる場面もあります。とくに潮が効いていない状況で釣れそうなメインラインの入水角度を得るためには、ジグのウェイトを軽くして潮に乗せやすくするのも有効です。
カラーの定番は赤金、緑金などですが、これは好みもありますから自分が釣れそうと思えるカラーがよいでしょう。
アシストフックのセッティングはアングラーそれぞれの考え方があると思います。
私なりのセッティングは、これまでのマダイのジグへのアタックの仕方から前後シングルアシストで通しています。マダイの口周りは硬い部分が多く、ハリがしっかりと掛かる部分はそう多くありません。カンヌキや歯の生え際の狭い場所にしっかりとフックポイントを刺すには、シングルアシストでフッキングパワーが1点に集中した方がいいと考えるからです。
フッキングはしっかりと
アシストフックは自作していますが、使用するハリはエサ釣りで用いられる「チヌバリ」です。サイズはチヌ9~11号を使っています。マダイはジグをしつこく噛んできますので、口の中にハリがあるときに効果的なエサ釣り用のハリをアシストフックに使います。ヒネリが入っていますが、そのまま使用しています。
マダイのアタリがあってからのフッキングのタイミングですが、ロッドティップに重みが乗ったら素早くリールを巻き込みながらの「巻きアワセ」です。リールドラグはキツく締め込んでおきます。そして、ラインの伸びやアシストフックを滑らせてフックポイントをハリの掛かる部位まで移動させるには、強いフッキングの動作が必要です。
ロッドの長さが長い場合、フッキングの動作でもティップが大きく動くので問題ありませんが、短めのロッドを使う場合はしっかりとロッドティップを横移動させることを意識してフッキングした方がいいでしょう。また、大型のマダイはハリ掛かりのあとに一気に走り出します。すぐさま腕を上手く使って凌げば、あとはドラグ調整をしてやり取りしてください。
ランカーマダイをねらうには?
なかなか手強いターゲットのマダイですから、ランカーサイズとなると釣れる確率はグッと下がってしまいます。大型の個体は単独での行動も多く、群れからやや距離をおいたポジションにいることが多いので、マダイの群れを釣るのではなくレンジを意図的にずらすことも効果があります。確実に言えることは、潮流に張り付いてなかなか浮いてこない大型マダイを仕留めるにはラインの傷などに常に気を遣い、掛かったら必ず獲ることです。
陸奥湾口の「ノッコミマダイ釣り」では毎年のようにランカーサイズが出ています。過去に確認されている大型個体は90cmオーバーのマダイです。1m超えも必ずいるといわれる熱いフィールド、それが陸奥湾口の海峡マダイ! 実に魅力的で夢のあるエリアなのです。
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レポーター
プロフィール:堀籠 賢志
フライフィッシング、バス、シーバス、ロックフィッシュ、フラットフィッシュ、エギング、鮎釣りまで、さまざまなジャンルを釣りこなすマルチアングラー。現在はスーパーライトからヘビークラスまでジギング全般と、メタルスッテを中心としたイカ釣りに取り組む。
東北エリアの面白い釣りを発信することで、震災復興に繋げていきたいという熱い想いのもと活動中。
GOMEXUS社フィールドテスター /tamaTV社フィールドモニター /キーストン社フィールドサポーター などを務める。
ブログ:Anglershighごめのブログ