【個性的な神】悪い神か善い神かよくわからない神「スサノオ」【眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話】
スサノオは悪い神か善い神か
『古事記』に登場する神の中で、ひときわ個性的な神といえばスサノオでしょう。
イザナキから海原の統治を命じられたにもかかわらず、それを嫌がり、「亡き母のところへ行きたい」と、鬚が胸に届くまで成長しても赤ん坊のように泣きわめき続けました。その涙で山や海を枯らしてしまうほど。その結果、イザナキに葦原の中つ国を追放されます。その後に高天原で大暴れし、いよいよ高天原も追放され、出雲の鳥髪山へと降り立ち、その後、出雲の須賀へ。このように各地を移動し続け、最後は、根の堅州国へと入り、大神となります。
スサノオは各地を移動しながら、破壊をもたらし、一方で新たな恵みを与えていきます。高天原でのアマテラスとの誓約で身の潔白が証明されたと思ったとたん調子に乗って暴れまわり、アマテラスが石屋に籠ってしまい、世界は暗闇に包まれます。出雲に降りる中では、オオゲツヒメを殺してしまいます。しかしその結果、この世に五穀と蚕をもたらしました。また国つ神を困らせていた八岐大蛇も退治します。
このように「何を考えているか分からない」スサノオですが、その実「何も考えていない」というのが正解でしょう。スサノオの行為が、場合によってはプラスに作用し、場合によってはマイナスに作用する、ということなのです。
スサノオは、京都の祇園祭の祭神である牛頭(ごず)天王と同一視されています。この神は正しく祀れば疫病を鎮めますが、間違えれば疫病を流行させます。恐ろしい神でもある一方で、善き神でもあるのです。これがスサノオだといえるのではないでしょうか。
「悪い神」でも「善い神」でもなく、「ただスサノオである」ということなのです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話』監修:谷口雅博