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現代につながる表現の冒険 ― 「HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展」(レポート)

アイエム[インターネットミュージアム]

“画狂人”を名乗り、生涯で3万点を超える作品を手がけたといわれる葛飾北斎(1760–1849)。『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』に代表される大胆な構図や、人物・動物・自然をあらゆる角度から描こうとする飽くなき探求心は、世界の美術に大きな影響を与えました。

今回ご紹介する展覧会は、そんな北斎の魅力を「線」「動き」「語り」といった視点から再発見できる構成です。伝統的な浮世絵の魅力に触れるだけでなく、現代のマンガやアニメーションへとつながる表現の源流を体感できるのも特徴。北斎を“今”の視点で楽しむことができます。


CREATIVE MUSEUM TOKYO「HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展」会場入口


展覧会は第1章「読本」から始まります。江戸時代に流行した物語本「読本」には、浮世絵師が挿絵を描き、物語を視覚的に伝える役割を果たしました。北斎も多数を手がけ、その幅広い創作や高度な技術が実感できます。


第1章「読本」


第2章は「波」。北斎といえば《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》が有名ですが、波を描いた作品は他にも多く残されています。会場では多彩な波の表現を比較でき、北斎の自然観察の鋭さや豊かな描写力が浮かび上がります。


第2章「波」


第3章は「表現力」。北斎の画技は現在のマンガやアニメにも通じます。たとえば『唐詩選画本 七言律』では、鯉に乗る仙人の周囲に効果線を描き、スピード感を巧みに表現。北斎ならではのダイナミックな描写が楽しめます。


第3章「表現力」


第4章は「北斎漫画」。今回の展覧会には、世界一のコレクターとして知られる浦上満氏(浦上蒼穹堂)が全面協力。『北斎漫画』は1814年の初編刊行から没後にかけて全15編が出版されました。会場には全編が並び、その迫力に圧倒されます。


第4章「北斎漫画」


第5章は「色彩」。墨摺だけでなく、鮮やかな彩色本も展示されます。狂歌絵本『男踏歌』『画本狂歌山満多山』では江戸の名所を訪れる女性たちが華やかに描かれ、艶本『喜能会之故真通』『万福和合神』では妖艶な美人像が濃密な色で表現されています。


第5章「色彩」


最後の第6章は「富嶽百景」。富士山をテーマにした墨一色の作品集で、歴史や風俗、風景を自由な発想で描いています。跋文(ばつぶん:あとがき)では北斎自身が「年を重ねれば、ひと筆ひと筆が生き物のように動き出す」と語り、晩年まで尽きることのない創作意欲を伝えています。


第6章「富嶽百景」


北斎の多彩な表現に触れることで、その革新性が今もなお新鮮に響くことを実感できます。過去の巨匠としてだけでなく、現代に生きる表現者としての北斎を体感できる展覧会です。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2025年9月12日 ]

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