【高知グルメPro】フードジャーナリストがカツオ茶漬けを食べに東京から通う昭和ノスタルジーな居酒屋「お茶漬けの店 たに志」食いしんぼおじさんマッキー牧元の高知満腹日記
僕は東京の人間だが、この居酒屋は常連である。
いや、ずっと常連でありたいと願う店である。
店に入ると、昭和の匂いがして、心がほっこりと温まる。
初めて来た時も、なぜか懐かしい気分となった。
それゆえにいつしか、高知ハシゴ酒の終着駅となっていった。
高知市内のあちらこちらで飲んだ後に,1人でぶらりと寄ったりもする。
そうして何回も来たのに、名物だというカツオ茶漬けは食べたことがなかった。
これまでは、卵の白身と黄身が少し分離した部分とニラの香りにハマる、名物の「ニラ入り玉子焼き」を食べ、
心が和む「マカロニサラダ」や「カボチャの煮付」、
「焼き茄子」などを食べ、締めには小さいおにぎりをいただく。
それが常例化していたが,実はここ、お茶漬けの店なのである。
よく見れば、店名に「お茶漬けの店 たに志」とあるではないか。
お茶漬けは、現店主・大ちゃんのお父さんとお母さんが店を始められた58年前からやられているという。
茶漬けには、しらす、こんぶ、たらこ、ウメ、サケ、海苔という定番に加え、高知ならではの「カツオ茶漬け」がある。
この「カツオ茶漬け」、常連客の中には、必ず食べる人がいるという。
今回、初めて頼んでみた。
茶漬けが運ばれる。
蓋付き丼なのがいい。
蓋を開けると、湯気が顔を包み、その向こうにカツオがいた。
カツオの刺身がご飯にのり、熱々の出汁のをかけられて、恥ずかしそうにしている。
そのカツオを、ミツバや海苔、胡麻が色を添える。
出汁つゆに濡れて輝くカツオが、色っぽい。
出汁の熱で、火が通ったカツオと半生のカツオがある。
だが、うかうかしていると、すべてに火が通ってしまうので、出されたらすぐに食べよう。
食べれば、火が通っているカツオはうま味が強く感じられ、半生からは鉄分の酸味が伝わってくる。
このうま味と酸味に加え、出汁のしみじみとしたうま味とご飯の甘みが渾然一体となって、舌を過ぎていく。
お茶漬けというものは、塩気が強い具が主流のものが多いが、酸味とうま味を兼ねる具が参加すると、なぜか裕福な気分になる。
普通のお茶漬けより、出汁のうま味を感じるせいだろうか。
さあ、後は一気に掻き込もう。
ザブサブザブ。
ザブザブザブ。
脇目を振らずに掻き込めば、瞬く間になくなり、後口はあっさりとして品がいい。
これは、家でもやってみよう。
いや、実は「たに志」しかない秘訣が潜んでいるのかもしれない。
高知らしいお茶漬けを楽しんでもらおうとお母さんが考えた味付けが、忍んでいるのかもしれない。
そう思っているうちに、また食べたくなってきた。
こりゃあ次回に来た時にも、頼んじゃうな。
高知県高知市帯屋町1丁目9-19「お茶漬けの店 たに志」にて