Yahoo! JAPAN

小4自閉症息子のモーニングルーティンを守る!必死の先回り、謎の儀式も受け入れサポートに徹する母の気持ち

LITALICO発達ナビ

小4自閉症息子のモーニングルーティンを守る!必死の先回り、謎の儀式も受け入れサポートに徹する母の気持ち

監修:森 しほ

ゆうメンタル・スキンクリニック理事

朝の準備は忍びのものでスタート

朝、家の中がまだ静寂に包まれている時間に、私は息子ハジュのための準備を始めます。ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如多動症)のハジュは、時間や予定をきっちり守るのが大好きな性格です。そんな彼が落ち着いて一日を始められるように、私もできる範囲でサポートしています。

私の朝は、アラームが鳴る前に起きるところから始まります。長年の経験で、アラームが鳴る直前になぜか目が覚める能力を身につけました。ハジュがまだ眠っている間に、忍びのごとく、できるだけ静かに起きてキッチンに向かい、彼の好きな朝ごはんを用意します。目玉焼きと野菜ジュースがハジュの定番メニューです。

ハジュが起きると、テレビの星座占いを見るのが日課なので、チャンネルを合わせて準備しておきます。彼はこれを楽しみにしていて、欠かしたくない大切な時間です。その後、タブレットで今日の気温や日の入り時間を確認します。ただし、タブレットの充電が100%でないと不安になるので、前日にきちんと充電しておくのが大事です。もし忘れると、「充電が足りない!」と泣き出してしまうこともあります。

ルーティンの試練

朝食が終わると、ハジュは身支度を始めます。トイレ、歯磨き、着替え、水筒をランドセルに入れる、髪を結ぶ、そして7:55きっかりに玄関で靴を履く。これがハジュにとっての"完璧な順番"です。この流れを崩すと不安になってしまうので、私はできるだけ彼がスムーズに準備できるように手伝っています。トイレを促したり、着替えを用意したり、水筒をキッチンの所定の場所に置いたりと、先回りして動くことが多いです。

とはいえ、ルーティンが崩れるとひと騒動です。ある朝、うっかりアラームをかけ忘れ、そんな時に限ってアラーム前に目覚める能力も発動せず……。私は寝坊をしてしまい、目を覚ますとハジュがすでに起きていて、「星座占いを見逃した!」と大慌て。私が「大丈夫、1時間後にまたあるから、ほらご飯食べよう?」と提案しても、「何位だったのか分からないと困る!」と泣いてしまい、結局スマホで急いで検索しました。起きて数分で、私はゲームで言うHP(体力)が削られました。とほほ。

突然のルーティン変更と謎の儀式(笑)

さらに、ハジュは時々、突然ルーティンを変えることがあります。新しいルーティンを覚えるのも一苦労です。最近追加された"水筒をランドセルに入れる前に振って泡を確認する"という工程を忘れた時、「泡見てないよ?」と、キッチンからやり直しになります。それ以来、 (泡を見るって何なんだ……?)と思いつつ私は毎朝「泡よし!」と確認する謎の儀式を取り入れました。

ハジュの成長と親としての喜び

しかし、そんなハジュも少しずつ変わってきています。以前は、準備が間に合わないと感情を爆発させることが多かったのですが、最近では「水筒をお願いします」と頼んだり、「着替えがないから自分で選ぶの?」と言えたりと、柔軟に対応できるようになりました。私自身も、ハジュができることが増えたおかげで、気持ちに余裕が持てるようになりました。朝の準備がスムーズに進むことで、私のHP(体力)も削られずに済んでいます(笑)。ハジュが少しずつ自立に向かって進んでいる姿に親としての喜びを感じます。

ちなみに、長女や次女は…

長女も実は自分のルーティンをしっかり持っています。順番が狂うと、その日はスイッチOFFになってしまうこともありましたが、成長する中で、自分のペースを守るコツや、崩されないための秘技(?)を自分なりに編み出したようです。最近では、もし順番が崩れても「まあ、なんとかなるか……」と自分で気持ちを立て直せるように。成長したなぁ、と感心しています。

それでも体調不良などの“イレギュラーイベント”が発生する時は、私が「今日はいつもとちょっと違うから、これを先にやるね」と事前にアナウンスを入れておきます。すると「うん。いいよ」と落ち着いて対処できるので、事前の見通しって大事だなぁと実感します。

一方、次女はと言えば……そういう順番とかルールとか、まったく気にしません!(笑)。とても自由にやってくれるので、その気ままさにたまに振り回されることもありますが、それが彼女の個性なんだなと微笑ましく見守っています。

ハジュの朝のルーティンは、単なる習慣ではありません。それは彼が安心して一日をスタートするための大切な基盤であり、私たち親子の絆を深める時間でもあります。これからも彼のペースに合わせながら、一緒に成長していきたいと思っています。

執筆/スパ山

(監修:森先生より)
スパ山さん、お子さんのルーティンについての体験談をありがとうございます。 ルーティンを日々こなす中でも、ルーティンが変化していったり、思わぬアクシデントが起きることで、かえってお子さんの成長が感じられてうれしいですね。
さて、「ルーティンをこなすと安心する」というのは、誰しもあることかと思います。 たとえば「野球選手が試合前に素振りをして精神を統一する」とか、「受験生が毎回テスト前に深呼吸する」というようなことですね。 落ち着くための、いわばおまじないのようなルーティンを持っている方は多いのではないでしょうか。
特に発達障害の傾向のあるお子さんでは、日々のルーティンが決まっていることも多いですね。学校に行って小さな社会に触れることは、お子さんにとっては大冒険です。外の世界では何が起きるか分かりませんから、安心して過ごせる家庭の中で「決まった手順」を踏むことで、外の世界に出る心の準備をしているのかもしれません。
お子さんのルーティンを尊重することは、お子さんの気持ちを尊重することです。できる限りルーティンを守ってあげると結果的に準備がスムーズに進むことが多いでしょう。 とはいえ、保護者の方の生活もありますし、時間や体力、天候などもろもろの状況がルーティンを許さないこともあり得ます。 お子さんの求めに必ず毎回応えられるわけではないですよね。「ルーティンが崩れても大丈夫だった」という成功体験を積むと、お子さんはさらに自信を持って成長します。ルーティンをうまく使いながら、無理なく子育てをしていきましょう。
これからもスパ山さんとお子さんが一緒に成長していけることを願っております。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

【関連記事】

おすすめの記事