ダイアナ妃と事故死した恋人の父親、20人以上の元女性従業員に性的暴行か
英高級百貨店「ハロッズ」の元経営者モハメド・アルファイド氏が、複数の女性従業員に性的暴行を加えたとして告発された。英国放送協会『BBC』によるドキュメンタリー番組では、被害に遭ったと主張する女性達が当時の生々しい経験を回想した。アルファイド氏はエジプト出身の実業家で、ダイアナ妃とパリで事故死した恋人ドディ・アルファイド氏の父親だ。昨年94歳で死去した。
【写真】1997年8月、恋人ドディ・アルファイド氏とパリで事故死したダイアナ妃
英国放送協会『BBC』が19日(以下、現地時間)、英ロンドンの老舗高級百貨店の元経営者モハメド・アルファイド氏による性的暴行疑惑を取り上げたドキュメンタリー『Al-Fayed: Predator at Harrods(アルファイド:ハロッズの捕食者)』を放送した。
エジプトで生まれ育ったアルファイド氏は海運会社を設立した後、英国に移住。仏パリの高級ホテル「リッツ」を購入し、1985年にはロンドンの高級百貨店「ハロッズ」の経営権を握った。英国市民権を2度申請したが却下されており、94歳だった2023年8月30日、老衰のためロンドンで亡くなった。
彼の息子ドディ・アルファイド氏はダイアナ妃と恋愛関係にあったが、1997年8月にパリでともに事故死した。
今回放送された番組では、モハメド・アルファイド氏がハロッズのオーナーだった頃の元女性従業員達が登場し、アルファイド氏から受けた性的暴行の被害を生々しく告白した。
『BBC』の調査によると、アルファイド氏がハロッズを経営していた25年間にわたり、20人以上の元女性従業員が同氏から性的暴力を受けていた。
当時10代だった女性は、アルファイド氏がロンドンのメイフェア地区に所有する高級アパートメントでレイプの被害を受けたと証言した。
この女性は、アルファイド氏について「従業員全員をおもちゃのようにしていました。彼はモンスターで、道徳観念を全く持たない性犯罪者だった」と述べ、次のように説明した。
「私達はみんな怖がっていて、彼は積極的に恐怖心を煽っていました。彼が『ジャンプしろ!』と言えば、従業員は『どれだけ高く?』と尋ねたほどです。」
この掛け合いは、「ジャンプ!」と言う人物が絶対的な主導権を握り、問答無用で従わなければならないことを意味している。
別の女性の証言によると、アルファイド氏は気に入った女性従業員をスカウトし、自分の個人秘書に任命していたという。女性達は医師による性病検査を含む健康診断を受けさせられたが、多くは自分の検査結果を知らされなかった。
アルファイド氏の個人オフィスは若い女性達で溢れており、まるでモデル事務所だった。当時の女性従業員達は、同氏について「地位を悪用してスタッフを搾取し、権力を使用して声を上げることを阻止したプレデターだった」と語った。
アルファイド氏による暴行は、ハロッズの上階にある個人オフィス、ロンドンの高級アパートメント、さらにパリ、サントロペ、アブダビなどで行われた。
元従業員の女性は「私達はみんな、お互いがドアから入っていくのを見ながら、『かわいそうに、今日はあなたの番よ』と思いながら、それを止める力が全くないと感じていました」と振り返った。
レイプ被害に遭ったという元女性従業員は、仕事を辞めて弁護士に相談すると、この問題を「迅速かつ内密に処理するように」とアドバイスを受けた。ハロッズはこの女性に対し、証拠の破棄と秘密保持契約への署名と引き換えに退職することが許されると伝え、一定の金額を支払うと申し出たという。
メラニーさんという元従業員は2023年1月、アルファイド氏による性的暴行について警察に通報することを決意した。その後、ロンドン警視庁から「2度にわたり同氏を逮捕しようとした」と伝えられたという。当時94歳だった同氏は、尋問を受けるほどの体力がなく、同年8月に亡くなった。
なおハロッズは、元経営者の行動を「最も強い言葉で非難する」と述べ、『BBC』に対する声明では「企業として、彼の犠牲となった従業員を失望させたことを認め、心からお詫び申し上げます」と謝罪した。
アルファイド氏に対する性的暴行疑惑は、1995年、1997年、2017年にも報じられてきた。しかし同氏が死去したことで、より多くの被害者が名乗り出ることができたとみられている。
(TechinsightJapan編集部 寺前郁美)