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ヒュー・グラントがサイコな異説者演じる密室ホラー『Heretic』で信仰心がジリジリ試される【レビュー】

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(カナダ・トロントから現地レポート)かつて「ロマンティック・コメディの帝王」と呼ばれ、最近はでウンパルンパを演じたことで話題を呼んだ名優が、一転して恐ろしい役に挑戦。2024年11月8日に北米劇場公開を迎えた新作ホラー『Heretic(原題)』は、トロント国際映画祭にてプレミア上映されて注目を浴びていた一昨だ。

本作は、『クワイエット・プレイス』シリーズや『ブギーマン』(2023年)の原案を担当したコンビ、スコット・ベックとブライアン・ウッズが脚本・監督を務めた“宗教ホラー”だ。通常、北米でよく公開される“宗教ホラー”といえばエクソシシストを題材とした作品が多いが、本作は宗教の「信念」に訴えかける会話劇となっている。ジャンプスケアやグロテスクなシーンは少なく、主に宣教師のシスターたちと「Heretic(異説者)」であるヒュー・グラント演じるミスター・リードの駆け引きが中心に描かれている。

物語は、末日聖徒イエス・キリスト教会の宣教師であるシスター・バーンズ(ソフィー・サッチャー)とシスター・パクストン(クロエ・イースト)が、ある家を戸別訪問するところから始まる。そこで中年男性のミスター・リード(ヒュー・グラント)が笑顔で玄関扉を開いた。豪雨の中、シスターたちはモルモン教についての説明を続けるが、ミスター・リードはシスターたちを気遣い家の中へと招き入れる。

シスターたちは「女性がいる家でなければ入れない」と伝えるが、ミスター・リードは妻が台所でブルーベリーパイを焼いていると話し、彼女たちは家の中に入ることに。ブルーベリーパイの香りが漂う中、モルモン教についてミスター・リードとの和やかな会話が続いていくが、次第に彼は「ポリガミー(複婚)についてどう思う?」など、シスターたちの信仰について執拗に質問をするようになり、不穏な空気が漂い始める。その後、ミスター・リードが席を外したとき、シスター・バーンズは、テーブルの上に置いてあるキャンドルがブルーベリーパイの香りのものであることに気づく。「本当は奥さんなんていないのではないか?」と疑問を持ちながら玄関のドアを確かめると、内側から開かないようになっており、2人は身の危険を感じ始める。

ミスター・リードは、玄関ドアがタイマー式で朝になるまで開かないこと、帰りたいのであれば裏口から「いつでも帰っていい」ということを伝える。その間もミスター・リードは、これまで研究を重ねた神学についての知識などを使いながら、シスター2人に「信仰心」に疑いを持つように仕向けていく。ミスター・リードが持つ不信仰とシスター2人が持つ信仰のあいだで、手に汗握る駆け引きが行われていく。

宗教や神学について詳しくない場合、ミスター・リードの鋭い会話についていくのが難しく感じるかもしれない。しかし、彼が指摘するポイントはどれも興味深いもので、これまで一切自分の信仰心を疑わなかったシスターたちを惑わせるのがとてつもなく上手なのだ。ミスター・リードは愛想がありチャーミングさも兼ね備えているからこそ、一風変わった恐ろしいキャラクターに仕上がっている。

米Varietyのインタビューで監督のスコット・ベックとブライアン・ウッズは、ヒュー・グラントを「リスクを冒すことを恐れない俳優」と言い表した。インタビューでは、「彼はリサーチに細心の注意を払って、台本の一行一行に目を通します。彼が理解できないこと、よく知らないことがあれば、それについて話し合い、議論し、最終的に私たちは同じページにたどり着きました」と語っており、ミスター・リードの複雑な役作りには数百にもおよぶメールのやり取りもあったと明かしている。

ミスター・リードについて徹底的に理解するためのヒューの“人並外れた”努力によって作り上げられた恐ろしい魅力を持つミスター・リードは、新たにホラー映画史にその名を刻むキャラクターとなりそう。米Rotten Tomatoesでは、「ヒュー・グラントは温厚さを怪物的で脅威的なものに変えた」と高評価のレビューも多く、批評家スコアは93%に達している。(11月13日現地時点)

『Heretic』の日本公開は未定。

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