兵庫のインディペンデントフェス7つが集結し神戸で前代未聞の新たなフェスがこの秋爆誕ーー『MASHUP FESTIVAL kobe』オーガナイザー座談会
2025年10月4日(土)、5日(日)の2日間、神戸メリケンパークや波止場緑地、TOTTEIPARKなど神戸ベイエリア一帯の複数会場で開催される『MASHUP FESTIVAL kobe』が話題だ。この新フェスティバルが注目を集めるのは、再開発が進む神戸ベイエリア(ウォーターフロントエリア)が舞台であることがひとつ、そして兵庫県を代表する7つのフェスティバルがそれぞれの特色を生かした独自のエリアを展開するというふたつの大きな理由がある。来場者はリストバンドを装着し、複数の会場を自由に巡るという神戸の中心部で行われるフェスとして前代未聞の設計、かつ会場の規模、県内7つのフェスティバルが集結するスペシャルコラボレーションであるという点から兵庫最大のフェスが爆誕する。某日夜、主催に名を連ねる7つのフェスティバルそれぞれの代表者/オーガナイザーが三宮の「洋食パリス」に集結。この日は彼らがさまざまな取材を受けたメディアデーだったのだが、その最終地点でお疲れ様会と称しつつ座談会を敢行。このフェスの立ち上げから、それぞれのフェスの代表者が考えていること、これから組み立てられていく企画のアイデアの種まで、 「オモロい話」がバンバン飛び出した。取材時間が想定をかなり超えたのは、彼らひとりひとり自身がこの新たなフェスを楽しみたい、来場者にも楽しんで欲しい、さらには神戸を盛り上げたいという想いから。ぜひその情熱を受け取ってもらいたい。
参加者
『ITAMI GREENJAM』大原智さん/『ARIFUJI WEEKENDERS』・『ONE MUSIC CAMP』佐藤大地さん/PINEFIELDS『COMIG KOBE』上田佑吏さん/『爆発メルヘンシティ』川村真純さん/『六感音祭』増田智穂さん
『ブジウギ音楽祭』飲食部門:小林元気さん、音楽部門:ダイゴロウさん
⚫️自分たちの街は自分たちで面白くしたらいい
――今日はよろしくお願いします! ゆるっとお話を聞かせてください。そもそもこのフェスの話はどこから生まれたのでしょうか。
大原:それは僕からです。2025年春のGLION ARENA KOBE開業にあたって、今回会場になるウォーターフロントエリアのマネジメント会社がエリアの賑わいを創出するイベントの企画を募集したのが2023年末でした。そこに僕ら『ITAMI GREENJAM』チームが今回の元になる企画でエントリーしたのが始まりです。結果、選定事業者に選ばれたけど最終的な折り合いがつかずに話が見送りになって。でも僕の中でその企画への思いも大きくなっていたので、なんとか自分たちで実現に向かえないかと。その時点で企画に参加表明してくれていた今のメンバーに思いを伝えたら「やりましょう」と言ってくれて今に至ります。
――アイデアの時点で兵庫の複数のフェスとタッグを組むのは決まっていたんですね。
大原:むしろそれありきでしたね。
――大原さんから話を聞いた時のみなさんの反応は……?
ダイゴロウ:めちゃくちゃおもろいこと言ってきたなと思いました。仲間だけど少しライバル意識というか同業他社でもあるし、お互いのイベントに客として行くけど一緒にやる発想はなかったから。
大原: 『ONE』のフェスの中でヅカデン(川村さんが夫婦で行っている電子工作グループ)が1コンテンツを作ったり、僕らのフェスで『爆発メルヘンシティ』が制作を手伝ってくれたりはありましたけど。
佐藤:うちも大原くんのチームにステージの装飾を手伝ってもらいました。
大原:僕らが『COMIG KOBE』を手伝ったこともあります。ただあくまで手伝うスタンスなので、一緒にというのはなかなか。
佐藤:この話を聞いてみんなは「すげえ!」と盛り上がってたけど、僕は「……大丈夫?」と。
――それはどういう意味の大丈夫? なんですか。
佐藤:大きな企画な分、お金もかかるし人も巻き込むわけで、責任の重さが桁違いです。友達として「大丈夫?」と。本当に大変なことも多いから。
ダイゴロウ:ホンマに大原さん、今寝れてないと思いますけどねぇ……。
――背負っているものが大きくて。
佐藤:でも信頼して声をかけてくれたんだから、応えたいんですよ。
――みなさんの「やろう!」となった理由としては、大原さんが声をかけてくれたからですか?
ダイゴロウ:うん、そうですね。
小林:僕、『ブジウギ音楽祭』をやめようと思っていたんです。本当にやるのが大変で。僕はご飯屋なので、店に注力してフェスはもうやめよ……と思っていた時に話をもらって、自分がフェスを続けなきゃいけない理由になりました。今は感謝してます。
大原:僕が『ブジウギ音楽祭』を守ったわけです!(笑)
――ファインプレーですね(笑)。ちなみに大原さんが7つのフェスとイベントをやろうと思いついたのは?
大原:うちは2014年から『ITAMI GREENJAM』をやっていて、「街の文化祭」をテーマにしてきました。「自分たちの街は自分たちで面白くしよう」 と。今となっては巷に溢れたおしているフレーズですが、実際にそれを実現する難しさと価値を経験してきたつもりだし、それに徹底的にこだわってきたので今回の会場になるウォーターフロントエリアの賑わい創出に対しても今までの延長線上の思考で、自分たちでやらないと意味ないやろうと。『ITAMI GREENJAM』でもエリアを作ってくれる団体やコンテンツを作ってくれる人達がいるのと同じ発想で、いろんなフェスと一緒にやったら価値あるなと思ったんです。それと調べたら兵庫県は全国で4番目にフェスが多いらしくて、ますます自分たちでやるべき街やなと。
――ただ、声かけ相手が同業他社だからこそ断られる懸念もありますよね。
大原:もちろんありました。そこは怖かったですがガツっと。こっちはヤル気なんで!
川村:私はお話をもらって、開口一番「やります!」と答えました。『爆発メルヘンシティ』は『ONE MUSIC CAMP』や『ITAMI GREENJAM』『六感音祭』に制作で入らせてもらってきて、それぞれのフェスで「こんなことやってるんや!」という感動を肌で感じてきました。そのすごいフェスを作ってきた方々が横並びで新しいフェスを作るなんて思いつくのは、大原さんしかいないと思いました。本当に前代未聞だし、楽しみだなと。
――前代未聞の試みなだけに、「何をどうやってやるんですか?」というのが純粋な疑問なのですが……。
増田:お話をいただいた時、コンセプトもなかったですよねぇ。
大原:そーっすねぇ。
佐藤:でもすごくいいなと思ったのが場所でしたよ。今回、再開発が進んでいる神戸のベイエリアで、次々と新しい会場や施設ができているので、お客さんに街ごと新鮮な体験を提供できると思います。やっぱりイベントって場所ありきなんです。広くて人が集まれる場所、デカい音を出してもOKな場所って国内にそんなにたくさんですし、特に都会の中でというのはハードルが高くて難しいことなんですけど、大原さんが声をかけてくれた時点でそのハードルはすでに越えていたわけだから、それは圧倒的なアドバンテージだと思いました。神戸のベイエリアという魅力的な場所があるから、アーティストにはこんな場所で演奏できますという交渉ができる。それは大きいですよね。
⚫️前代未聞のフェスだからこそ新しい空気感を!
――ちなみに先ほどコンセプトがなかったとおっしゃっていたのは印象的でした。
大原:まぁそこはそれぞれの考え方があっていいと思っているんですけど、実は当初から僕の中でコンセプトは変わっていなくて。企画が進む中で自分の想いを端的に表現する『MUSHUP』というタイトルが浮かんだんですね。マッシュアップって既存の曲と既存の曲を複数結びつけて新しい曲を作り出すことですけど、つまり今回のフェスの中でも集まってもらう7つのフェス1つ1つがそもそもきちんと独立していないといけないと思っていて。完成されているフェスが複数集まることで新しい価値が生まれると思うので、そういう意味でこういうコンセプトでこういうエリアを作ってほしいみたいな指針があってはならないと思っていたんですよ。なのでコンセプトがないというより、この考えを表現するのが難しかったというのが正しいです。
ダイゴロウ:大原さんからはこういうふうにやってくれではなく、この場所を『ブジウギ』に預けたいと言われました。コンセプト的なことを伝えてこないということは、それぞれが好き勝手にやればやるほど面白くなるってことなんだろうなと理解しました。
――でもそこに『MASHUP』という言葉が出てきて、明確になりましたね。
川村:私は『MASHUP FESTIVAL』という名前になってくれて、すごくありがたいなと思いました。最初に大原さんから「全員横並びでのサーキットスタイル」と聞いたので、じゃあ『爆発メルヘンシティ』と『六感音祭』が一緒になってアーティスト×アーティストのストーリー性あるコラボ、マッシュアップするステージ縛りでステージを作ってみようと思いつきました。1ステージで2アーティストにコラボしてもらう分、ブッキングの労力は倍になるっていうプレッシャーを自分たちにかけたんです。ただその後に大原さんから『MASHUP FASTIVAL』という言葉が出た時に、自分が作るステージとハマって伝わりやすさが段違いになりましたから。
――つまりフェスの作り方としては会場のそれぞれのエリアをオーガナイザーに振り分けてお任せしますというスタイルで、それぞれが企画をあげるということですか?
大原:そうですね。『MASHUP』という言葉を共通認識として持つくらいの感じですね。
ダイゴロウ:めちゃくちゃ今年っぽい例えをしますけど、やっていることは万博に近いなと思います。パビリオンを任されている感覚というか。音楽もフードもその他のカルチャーもあって、ひとつのフェスの中でやっていることはみんなバラバラ。でもそれくらい預けてもらっていると思います。
――万博という表現はすごくどんなフェスになるのか想像しやすいです! ちなみに会場はベイエリア一帯となっていますが、詳しくはどのあたりになるのでしょう?
大原:GLIONがここだから…この辺ですね。屋外のみを使う予定です。
――ここにそれぞれのエリアができて、そこで同時多発的にいろいろなことが起こっていて、お客さんはそこを巡っていくと。そして今、第1弾、第2弾のアーティストが発表になっていますね。
大原:それぞれフェスのオーガナイザーからアーティストに声をかけてもらって、出演が決まっていっています。
佐藤:ライブ自体もマッシュアップできたら面白いよね。
大原:そうなんですよ! だからまだやり方はいろいろあるかな。全会場を含めて、6ステージができる予定です。ストリート的なパフォーマンスも入れたらもっとかも。
――アーティストは最終第何弾発表くらいまで?
大原:第3弾か4弾くらいまでで考えてます。おそらく1ステージ1日4〜5枠になると思うんです。6ステージあるので1日30組として2日間で60組、さらにDJとか会場内の移動動線でパフォーマンスやってよという話もしているので、そこも混ぜるともっとですね。
――みなさんがそれぞれ独立した存在だからこそ、7人揃ってミーティングするのも大変ですよね。
佐藤:それもありますけど、そもそも『COMING KOBE』……上田くんとは絡んだこともかなったんですよ。
上田:ホンマそうですよね。
佐藤:だけど、『COMING KOBE』は20年以上続いていることもあって、本当にリスペクトしていて。自分が知っているイベントに関わっていた人たちと、こうして初めて一緒にフェスを作り上げる面白さが、うまく伝わったら良いなと思います。
上田:僕は今まで『ITAMI GREENJAM』さんとは行き来があったけど、他のみなさんはほぼ初めましてで。正直こんなイケてる人たちと交わりたかったんですよ! みなさんめちゃくちゃすごいイベントをされてるので!
大原:ホンマに思ってんのか!?
上田:思ってます! 父(『COMING KOBE』を立ち上げた故・松原裕氏)がイベントをやってきて、僕も跡を継いでやってるけど、まだまだ素人なところも多くて。ここに参加させてもらって感じるんですけど、みなさんすごい内容の企画をあげはるんすよ。それにすごく刺激をもらっているんです。今回、僕らは『COMING KOBE』ではなくて会社名の『PINEFIELDS』で参加していて。「太陽と虎」というライブハウスも運営しているのでそれも武器にしたいと思ってます。
――というと?
上田:ライブハウスの空気感をフェスの中に作り込みたいんです。来てくれる人たちがライブハウスを体験できるような……例えばドラムセットやギターアンプを置いてみんながジャムれる空気感を作るとか。体験型の前代未聞のフェスだからこそ、今までのフェスとは違う空気感を作っていきたい。……今日のみなさんの話を聞きながら思ったことですけど!
――7人が顔を揃えて話をするからこそ、生まれるアイデアもありますしね。
大原:ホンマにそうですね。普段は僕が一方的に「これに関して考えて欲しいんですが〜」と投げるとそれに対してみんながアイデアを送ってきてくれて、それええなあ! と企画ができる感じなので、直で話ができたらまた違うものが生まれますよね。
⚫️『MUSHUP FESTIVAL』から新しいゲームを始めたい
――今回名を連ねる7フェス全てが兵庫の街に根差して運営をされていますけど、今回の『MUSH UP FESTIVAL』も含めて兵庫でイベントをやる意味を言葉にすることはできますか。
佐藤:兵庫県ってちょうどいいんですよ。うちは三田市や淡路島でフェスを開催していますけど、大阪からも神戸からも行くのにちょうどいい距離で、美しくて自由な自然がある。そんな中で今回は神戸市という全国的にも有名な都市で開催できるのはすごく楽しみだし……僕らに神戸で大型フェス開催をさせてもらえるというのは、兵庫県自体が何か変わろうとしているんだろうなというのは感じますね。クリエイティブな人たちに何かやらせようという度量を感じるというか。それならばお客さんをたくさん集めて、兵庫ってすごく面白いよというのをちゃんと伝えたいですよね。僕、長野出身だし兵庫に縁もないんですけど!
川村:縁で言うと、私は淡路島出身なんです。学生時代に一生懸命バイトしてお金貯めて、どこへ買い物しに行くかと言ったらやっぱり三宮や元町で。今回の会場が青春時代に過ごした場所であることは大きいし……私が学生時代は『RUSH BALL』も神戸でやってたんですよ。なんかそういうこと全て思い出すキッカケになったし、40歳超えてこういうことで街に携われるんだと。今まで楽しませてもらった街でフェスをやれるのはすごくうれしいです。
上田:『RUSH BALL』が神戸で!?
大原:『RUSH BALL』が神戸からなくなると言うのも1つの理由として、お父さんが『COMNG KOBE』を考えはってんで。
上田:ああああ!
佐藤:めちゃめちゃいいストーリーできてるじゃん。『RUSH BALL』から『COMING KOBE』、そしてこれからの『MUSHUP FESTIVAL』へ。
――本当ですね。今、大阪と京都が万博開催中であることも含めてオーバーツーリズムに陥っているので、個人的には休日に神戸っていいなぁと感じています。
大原:感覚的にすごくわかります。
佐藤:それで言うと、外国の方にも来て欲しいですね。あ、そうそう、オーガナイザー的にイベントを成り立たせるために面倒臭い奴がいて欲しいなと思います。
川村:急!
佐藤:掻き乱す奴、異質な奴がいると面白くなるんですけど、神戸にはそれが足りないなと思うことがあるんですよ。
――神戸の人は真面目ですか?
佐藤:真面目で上品で、ちょっとプライドが高いかなと感じることもあります。
(みんなが上田さんを見る)
大原:御社がおふざけの先頭走ってるよね。
上田:僕!? まあそういう神戸の気質が嫌やから、うちの会社の真面目にふざけるというスタンスができあがったと思うんですよ。そういうカウンターカルチャーから始まって、『COMING KOBE』はもちろんちゃんと意義がありますけど、その中でもやっぱり僕ららしさを出しながらやってきたつもりで。そんな中で『MUSHUP FESTIVAL』という奇想天外な……この人ら何を考えてはんねやろみたいなことも神戸の街に落とし込めたら、より街としても魅力ある場所になるんじゃないかなと思うんですよ。
小林:神戸はもともと海外カルチャーの街だしね。
上田:なんか勿体無いと思ってたんです。サンバのカルチャーもジャズのカルチャーもあって、これだけ文化が入り乱れているのは神戸くらいじゃないですか。中華街だってあるし。
増田:確かに!
上田:もっと街も文化もうまく使いこなせたらいいのにと思っている中で、先にやられました。大原さんに。
大原:うそやん! そんな思ってないやん!!
上田:こういうのやりたかったんですって! 本当ですって〜!
――ハハハ! 神戸の音楽やカルチャーに関して伺いましたが小林さん、食に関してはどうでしょうか? 神戸でフェスをやることで何が発信できるのかというか。
大原:当事者中の当事者ですもんね。
小林:やっぱり神戸には山があって海があって、食材が豊富なのは大きいです。豊富だからこそいい食材が安価で手に入る。食材のポテンシャルが高い分、料理人のポテンシャルも高いと思います。だからそういう人たちを集めて、知らなかったお店を知るキッカケにしたいんです。食もそれ以外も、さっき言っていたみたいに他ジャンルでコンテンツが多いのは神戸のいいところでもあり、悪いところでもあると思っていて。それでいうと食はすごく選びやすいコンテンツだと思うんです。食の面でも『MASHUP』で新しいものが生まれれば、意義があるなと。
増田:シンプルにフェスで美味しいご飯が食べられるってうれしくないですか?
――めちゃうれしいです! 飲食店はどれくらいの数が出店する予定ですか?
小林:まだ決まっていなくて、僕らが今までやってきたフェスでいうと1000人弱のお客さんに対して256店舗、そこが全部売り切れになります。
大原:それすごくないですか? ありえます?
小林:みんなめっちゃ食うんですよ(笑)。
ダイゴロウ:そもそも名前が立つ有名店ばっかりが出てくれるので。
佐藤:美味いんだよなぁ。
小林:「美味い」って、人に言われて気がついたんですよ。僕がやったこととしては自分が本当に好きなご飯屋さんにお願いしただけで……。「やったことがないからできない」と言われたりしたけど、「ある程度用意できるものはこちらでやるので!」と言って。僕は飲食店側の人間だから、じゃあこうしてあげようとか思いつきますしね。最初はお客さんが来るかわからなかったし、飲食店の出店料無料で始めて(笑)。それくらい『ブジウギ』は食で特色を出したいと思っていたんです。
大原:それを『MASHUP』にも持ってきてもらう感じで、ガッツリと食のエリアができる予定です。
――なるほど。食以外、物販系の店なども出てきます?
大原:もちろんです!
川村:音楽、グルメ、マーケットを楽しんでもらいたいですね。私、物販の出店のお声がけをしているんですけど、きちんとお店をやりながら自分たちのものをちゃんと持っている方々をお誘いさせていただいて、他だったら出ないという方々も含めて巻き込んでやりたいと思ってます。
小林:あの、「上勝ビール」って知ってます? 実は一緒にやってくれる予定なんです。徳島の上勝町って日本で初めてゼロ・ウェイスト(ものづくりの段階からゴミを出さない仕組みをつくっていこうという考え方)宣言をした町から参加してくれるんですけど。ゴミエリアでは20種類以上の分別になる予定です。
(全員がザワァ)20!? すごっ…。
小林:その他アイデアで出ているのは、物々交換ができる場所があったらいいよねとか。
大原:上勝町って確かゴミ収集がないんですよね。
小林:そうそう。街全体がゼロ・ウェイストなので。
佐藤:『バーニングマン』もそうだよね。金のやりとりが存在しないというか。
小林:その感覚でいらないものを持ち寄って交換する場があればって。
ダイゴロウ:それ、面白いね。
(ここからいろんなアイデアの話がポンポンと出てくる)
大原:『MASHUP』って言葉に紐づけて、いろいろやりたいなという感じですね。
●終わった時に自分がどう思うのかなというのが一番楽しみ
――まだまだ話は大きくなっていきそうですね。では最後にひとりずつ今回の『MASHUP FESTIVAL』、当日に楽しみにしていることをお伺いできたらと思います。
大原:いいですねえ!
小林:僕いいですか? 実はいつもなんですけど、当日は誰より自分が一番楽しむということを決めているんです。一番お酒を飲んで、ワイン抱えて配るように販売したいですね。
川村:実は今まで自分が携わってきたイベントって120%で楽しめたことがないんです。でも今回のステージは今まで絶対にあり得なかったような2組がライブしてくれるんですよ。別のイベンターさんが企画するなら出ないけど、今回は出ますと言ってくれた方々の気持ちを噛み締めながら、120%楽しみたいと思います。あと……トロッコのステージを作りたいんですよね。
佐藤:どういうこと?
川村:あの、京セラドームのライブで見るような移動式のトロッコステージです。
大原:すごい!
増田:ふたりで手押しできたらと思っていて。
川村:私たち女性ふたりで手押ししてるように見えたら面白いなと。街に馴染むようなステージ作りをしつつ、その中にちょっとした違和感を与えたくて。遠目で「あ、あそこなんか光って動いてるやん!」みたいな。どこまでできるのかこれから検討していくつもりです。
上田:思いつきなんですけど船とかもいいですよね。
川村:ホンマや! いいやん!
上田:第一突堤から誰かが船上ライブするみたいな。
ダイゴロウ:途中で音聴こえんくなってもそれはそれでおもろいな。
川村:コンチェルトさん巻き込まれへんかなぁ。
佐藤:ええやん、コンチェルト!
――いろいろアイデア出てきましたねぇ(笑)。引き続き当日の楽しみのお話も聞かせてください!
ダイゴロウ:ずっと神戸で音楽関係に携わっている身として感じているのは、この街はずっとみんなに期待されながら諦められてきた街だと思っているんです。数々のフェスがここで開催されて別の都市での開催に変わって行ったり、数々のレコードショップも生まれたけど閉店したりして。でも今回のこのフェスは、集合力で戦うから、今こそやってる側の期待に街がついてくるような形で結果がバンと出るのでは? と思っているんです。それが叶ったら……感情が動かなくなって泣けなくなっている僕も、泣くと思います。過去、フェスをやってきたいろんな人たちが成し遂げられなかったことを少しでも近づけられる気がしているし、そこに携われるのは嬉しいなと思います。
上田:なんかわかります。その「諦められた」というニュアンスになるのは震災があったという事実も関わっていると思っていて。阪神淡路大震災から30年が経って、僕もそうですが震災を経験していないし、街に震災があった影ももうほとんどなくて、若い人はここが震災のあった街だなんてわからないんです。それだけ復興したということなんでしょうけど、一度傷ついた街が今こんな魅力を持っていてこれだけの人が集まって発信できることは純粋に楽しみです。
佐藤:関西でも指折りの面白いクリエイターが集まっているので、神戸に来るお客さんがひっくり返るくらい楽しませたいですねぇ。自分たちが面白いことをやっているという自負はすごくあるんです。そういう人たちが力を合わせて新しいことをやる、本気でここまでやれるということを見せてヤバい、と思わせたいですね。
増田:わかります。こうやって喋っているだけでもいろんなアイデアが出てくる人たちなので、自分の中だけで考えているだけでなく意見を交わすことで新しいことが生まれてくる面白さがあるんです。ここに参加しているひとりとしても楽しみなので、まだまだ開催に向けて新しいことが生まれてくると思います。
――この取材中にもいろいろとアイデアが出てくるくらいですから! では最後、大原さんお願いします。
大原:まぁ、このイベント……かなりプレッシャーを感じながら進めている中で、それでもやるという決断をするくらい自分自身がこの企画に魅了されています。今まで経験したことのないスケールだし、未だに出来るイメージが湧いていませんが、終わった時に自分がどう思うのかなというのが一番楽しみです。それと同時に、この自分の熱量はどっから来てんねやろ? と思いつつ、自分の思いも解像度を上げていっています。個人的には、2010年初頭くらいから色々なフェスが立ち上がって、今、世の中にフェスが本当に増えに増えている中で、フェスを開催する側としても正直ずっと閉塞感というか、もうよくね?みたいな感覚があるんですよ。皆ずっと同じゲームをやり続けている感覚から抜け出せないような。でもこの『MUSHUP FESTIVAL』をやり遂げることで、ゲームチェンジが起こせると思ってるんです。ちょっとでも自分の心持ちが変わるんちゃうかというか。個人のフェスが集まってこんなことできるんや! と自分にも誰かにも影響を与えられたらうれしいですね。
取材・文=桃井麻依子 写真=福家信哉
取材場所:洋食パリス
住所:兵庫県神戸市中央区布引町2-2-12 MAISON ROSE1F
https://www.instagram.com/paris_boozys/