この世の秩序を維持する神「ヴィシュヌ」その役割とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々】
この世の秩序を維持する神ヴィシュヌ
古代からさまざまな神を取り込み、多彩で複雑な姿に
シヴァと並ぶ人気者の神ヴィシュヌは、3柱の神のうち「維持」を司る神。ヴィシュヌという言葉は「広くいき渡る」という意味。温厚で慈悲深い性格で、激しく荒々しい性格のシヴァとは対比的です。
リグ・ヴェーダでは、雷神インドラに協力する太陽神として登場します。世界の隅々まで照らし出す光の化身として、人間に対し慈悲深く接する存在でした。しかし、このときは、さほど重要な神ではありませんでした。
その後、ヴィシュヌはさまざまな神々と習合することで、熱烈な崇拝を集めていきます。このことこそが、ヴィシュヌを強力化した最大の理由とも考えられています。そのため、ヴィシュヌは別の姿と名前を持っています。それについては、次項で詳しく述べますが、まず基本の姿について紹介しましょう。
仏像でいう半跏で座ります。よく一緒に描かれるのは、アナンタという名の竜王。アナンタは「永遠」という意味で、これもまた、ヴィシュヌの属性を表しているといわれます。乗り物はガルダという怪鳥です。
右上手の人差し指上で回転しているのが、武器の円盤(チャクラ)。敵に向かってプーメランのように飛んでいき、必中必殺です。また、これは太陽の象徴でもあります。
※ガルダ:ヴィシュヌの乗り物とされる鳥の神ガルダ。日と太陽を神格化した巨大な鳥で、赤い翼を持つ。仏教では、釈迦の眷属のという神に。
人類を救う慈悲深いヴィシュヌ
4本の手には、武器である回転する円盤(チャクラ)、棍棒、ほら貝、蓮華を持っている。たくさんの頭を持つ竜王アナンタの上に、片足を組み、片足を下げる半跏の姿。乗り物はガルダという名の鳥の神。ヴィシュヌは仏教では那羅延天、日本では金剛力士と混同されることが多い。
神が修行して人間をつくる
あるとき、神のマヌは魚から洪水が起きると聞き、洪水から生き延びた。その後、修行を重ね、はじめての人類を創出した。最初の人間はヤマとヤミーの兄妹で、ヤマは妹のプロポーズを断り、冥界の神となった(諸説あり)。
ヤマは仏教に取り入れられ、閻魔となった。マヌに洪水を教えた魚マツヤはヴィシュヌの化身とされる。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』監修:鈴木悠介