『キングダム』麃公(ひょうこう)とは? 人気の火が絶えない「本能型」! 史実との違いも解説
『キングダム』は、中国 戦国時代末期(紀元前245年頃から)を舞台にした、週刊ヤングジャンプ連載中の原泰久先生の漫画作品です。主人公は、中華統一をめざす秦(しん)王 嬴 政(えいせい、後の始皇帝)と、大将軍を目指す信(しん、後に李信)の二人。
彼らを取り巻くたくさんのキャラクターたちも魅力的です。
※ここからネタバレを含みます。
ここでは、死後も人気が絶えない秦の将軍 麃公(ひょうこう)の人物像をまとめつつ、その魅力を皆さんと一緒に楽しみたいと思います。
【写真】『キングダム』麃公(ひょうこう)とは?史実との違いを解説
『キングダム』麃公の魅力とは?
麃公は、オールバックの髪に大きく見開いた目、ギザギザに尖った歯と、迫力ある風貌の秦の将軍です。龐煖(ほうけん)との一騎討ちに敗れ死亡しているので、作品の前半に活躍した人物と言えます。しかしながら、その人気は今なお高いまま!
その理由は、彼が「本能型」の武将であり、それがよく現れているキャラクターだからではないでしょうか。
『キングダム』での「本能型」とは、戦場の状況を直感的にとらえることができ、その才能で多くの戦いを勝利に導ける武将のことを指します。これに対して「知略型」は、知能戦を得意として戦略で攻め上げるタイプです。
また、麃公は「戦場が家。戦いとは生きること」と語るほどの戦好き。
直感で戦の絶頂を感じるやいなや、自らが前に出て敵の大将首を獲りにいきます。これは、山場で自分が勝ちをもぎとる、ということ。これは、確かに気持ちいいでしょう(現在の倫理観は別として)と想像できます。
彼は言葉遣いも「本能型」、直感的です。
「戦い」を「燃え盛る大炎」、「戦いが佳境に入った」を「燃え盛る炎が最大となった時」と表現しています。特に、最期の「火を絶やすでないぞォ」は必見! これがわかれば、あなたもキングダム玄人です。
『キングダム』麃公の実力は?
麃公の実力は、秦国の六大将軍(ろくだいしょうぐん)に匹敵するとされ、前線で戦い続けた叩き上げの猛者として登場。実際に、信が初陣を経験する「蛇甘平原(だかんへいげん)の戦い」では総大将を務め、魏(ぎ)の大将 呉慶(ごけい)を討ち取るという実力を見せつけます。
では彼はなぜ六大将軍に選ばれなかったのでしょうか?
六大将軍に選ばれなかった理由
麃公が六大将軍に選ばれなかったのは、昭王(しょうおう、政の曽祖父)からの度々の咸陽(かんよう)への招聘を無視して、常に前線を離れなかったことが原因のようです。
信が麃公に、「王騎と同じくらい強いのになぜ六大将軍に入れなかったのか」を聞くシーンがあります。そこで麃公は、「興味が無かっただけ」で「自分は戦場がすべてで、勝利してその夜美味い酒を飲めれば満足だったから」と答えています。
出世や地位よりも、戦いの現場が好きだったのですね。
合従軍編(函谷関攻防戦)、「火を絶やすでないぞォ」
本戦開始前、魏の軍が配置に就けないように足止めを掛けに。ところが、持ち前の直感で、魏の大将軍・呉鳳明(ご ほうめい)が仕掛けた罠に気付き、退きます。
本戦では、序盤に趙(ちょう)とぶつかり、三倍もの兵力差をものともしない戦いぶりを見せます。
終盤は趙の李牧(りぼく)軍の暗躍を感知、本陣に引き上げるような動きを見せる李牧を追い、趙の本陣へ迫ります。ところが、突然現れた趙将 龐煖(ほうけん)との一騎討ちで致命傷を受けてしまいます。
助けにこようとする信に、構わず咸陽へ行くように言う麃公。最期は「火を絶やすでないぞォ」と、目をかっ開いての迫力の笑みでした。
信の呆然とした表情と一拍置いてからの涙に、読者も「麃公将軍ン!!」と叫ぶ熱い場面です。
実在の麃公
さて、ここまで『キングダム』の麃公を見てきましたが、今度は史実の麃公を見ていきましょう。
『史記』の麃公
中国 戦国時代のことを知ろうと思ったら、頼るべきは『史記』です。
『史記』は、前漢 武帝の時代に司馬遷が編纂した約53万字の紀伝体(年代順ではなく人物や国ごとに出来事をまとめた形式)ものです。武帝の時代というのは、前141年から前87年。つまり、秦が滅んでから100年ほどのちに書かれた歴史書ということになります。
『史記』「秦始皇本紀」には、始皇元年(紀元前246年)、秦王政が即位して将軍に任じられたとして、麃公の名が見えます。この時、蒙驚(もうごう)、王齮(おうき)も一緒に将軍になっています。
翌年の始皇二年(紀元前245年)には、
「麃公が兵を率いて巻を攻め、首を斬ること三万であった」(『史記1 本紀』小竹文夫・小竹武夫訳、筑摩書房、1995)
とあるので、武将としての活躍は確かです。
麃公が攻めた地である「巻」というのは、現在の河南省平頂山市付近だそうです。当時は魏の領土でした。
麃公が登場するのはこの2箇所だけで、生年や出身などは不明。当然、性格や戦い方がわかる記録もありません。『キングダム』の麃公が魅力的なだけに、史実ももっと知りたいところですが、これ以上はわかりませんでした。
アニメで麃公を演じていらっしゃるのは斎藤志郎さん
さて、次はアニメ版の『キングダム』を見ていきましょう。
アニメ版で麃公を演じていらっしゃるのは、斎藤志郎さんです。
斎藤志郎さんのプロフィール
斎藤志郎さんは、山形県にて8月31日のお生まれです。
声優さんとしての活躍に加えて、文学座に所属していらっしゃる俳優さんでもあります。
アニメ作品での代表作は、『メガロボクス』南部贋作役、『アンゴルモア 元寇合戦記』張明福役、『錆喰いビスコ』ジャビ役など。
『キングダム』では、豪快で明るく大きな麃公を見せて下さっています。信に対して、密かに親のような愛情を抱いている感じもすてきで、麃公ファン増加の一因を担われたのではないでしょうか。
映画で麃公を演じていらっしゃるのは豊川悦司さん
さて、次は実写映画版の『キングダム』を見ていきましょう。
映画版で麃公を演じていらっしゃるのは、豊川悦司さんです。
豊川悦史さんのプロフィール
豊川悦司さんは、大阪府て3月18日のお生まれです。
映画代表作は、『仕掛人・藤枝梅安』藤枝梅安役、『命』東由多加役、テレビドラマ代表作は、連続テレビ小説『半分、青い。』秋風羽織役など。
実写映画は4本ありますが、豊川さんは『キングダム2 遥かなる大地へ』にご出演されています。豊川さんは、麃公役へのキャスティングが決まった時、こんなコメントをされています。
〈キングダムが、強者役者をキャスティングしまくってるという噂が走った。なんかドキドキした。
俺に声がかかるのか、かからないのか。強がりしててもなんか気になる。
で、この大役をいただきました。就職試験に受かった気分。
トヨエツじゃねー!という声もあるでしょうが、佐藤監督のもと、キングダムの世界にどっぷりと浸ってきた。
大感謝。大満足。
想像以上に1を超えた2が、あなたの目の前に繰り広げられるでしょう。
キングダム、恐るべし!〉
アニメ!アニメ! 2022.3.8 Tue 17:00 #ttps://animeanime.jp/article/2022/03/08/68033.#tml
クールな大俳優のイメージがある豊川さんですが、このようなことを言ってくださると、実はおもしろい方なのかなと親しみが湧きますよね。
演技も、ほんとうに熱演! コミカルな部分も見える大満足な麃公です。
まとめ
麃公の死は、コミックスだと30巻になります。2025年5月現在最新刊は75巻まで出ているので、麃公の活躍は作品全体の中では前半も前半だけです。にもかかわらず、いまだに「火を絶やすでないぞォ」という言葉とともに、キャラクター人気が衰えないのは、「本能型」という個性が筋を通しているからではないでしょうか。
豪快で痛快な麃公将軍、気持ちのいい格好よさ。やはり、いいですね〜