犬に『氷』を与えすぎると起こる危険な症状とは?暑さ対策としてあげてもいい量はどのくらい?
犬は氷が好き?
そもそも犬は氷が好きなのでしょうか?答えは「個体差」です。こう言ってしまうと元も子もないですが、ガリガリという食感やヒンヤリとした口当たりが好きな犬もいれば、全く興味を示さない犬もいます。
散歩の後や暑い夏に氷を与える習慣がついたことで、好んで食べるようになることが多いようです。つまるところ飼い主さんが与えるから、という理由に集約されるでしょう。
犬に氷を与えすぎると起こる危険な症状とは?
氷は水を固めただけなので犬に与えても問題はありません。しかし私たちも冷たいものを食べ過ぎるとお腹を壊す人もいるように、犬も体調不良になる場合があります。氷の与えすぎで引き起こされる危険な症状について解説します。
1.下痢や嘔吐
犬にとって氷は、暑さを和らげて水分補給ができるというメリットがあり、1日に1~2個与える程度であれば、具合が悪くなる可能性はほぼないでしょう。
しかし、一度に大量に与えてしまうとお腹を壊す犬も。消化器官が冷えるので下痢や軟便、嘔吐といった症状が引き起こされます。胃腸の弱い犬や寒がりの犬は、氷を与えることはあまり推奨できません。
2.喉につまらせる
氷は時間が経つと表面がツルツルしてきますよね。口の中に入れて溶けた氷を何かの拍子に丸のみしてしまう危険性があります。氷をおもちゃのように捉えて口から出し入れしたり、口内で舐め続けて遊ぶ犬もいます。そんな子はより危険性が高まります。
氷は体温で溶けるのでそのまま窒息する可能性は低いですが、愛犬が苦しむ姿は見たくないですよね。小さく砕いて与えるなどの工夫が必要です。
また、体の器官が未発達な子犬や、嚥下機能が低下しているシニア犬には与えないほうが良いでしょう。
3.舌に張り付く
みなさんも氷やアイスなどの冷たいものが舌に張り付いた経験があると思います。冷凍庫から出したばかりだと起こりやすい現象ですよね。
犬の舌に張り付いてしまうと、焦って丸呑みしてしまうかもしれません。事故防止のためにも、事前に水で少し濡らして表面が溶けた状態で与えると良いでしょう。
4.氷食症
『氷食症(ひょうしょくしょう)』という疾患をご存知でしょうか。一言でいうと異常なほど氷を食べたがる疾患を指します。人間の氷食症の場合は鉄不足や貧血、ストレスなどが大きな原因ではないかと考えられています。
そんな氷食症ですが、犬もかかることがあると言われています。犬の氷食症の原因は明確にはなっていませんが、最も多いのは飼い主さんが与えすぎてしまったことによる依存性です。
基本的に犬は自分から氷をねだることは少ないため、飼い主さんが与えなければ欲しがることはありません。
もうひとつの原因は鉄分不足や貧血といわれており、この場合は治療が行われる場合があります。
では、犬の氷食症を疑うサインを以下にご紹介します。
✔氷を与えないと落ち着かない
✔季節を問わず欲しがる
✔1日に何度も催促する
要は『異常に欲しがる』という一言に尽きるのですが、氷食症ではなく散歩やごはんの後の習慣になっているだけというパターンもあり、飼い主さんが見分けることは難しいでしょう。
愛犬がどうしても氷を食べたがるようになってしまったら、一度かかりつけの動物病院で相談してみてくださいね。
毎日暑い!暑さ対策としての適量とは?
こうも毎日暑いと愛犬に少しでも涼んでもらいたいものです。暑さ対策として氷を与える際の適量はあるのでしょうか?
実は明確な適量基準はありません。犬の胃腸状態の良し悪しや、年齢、室温や外気温などによって適量は変わります。
あくまで目安ですが一般的な製氷機の氷を例にとると、小型犬なら1~2個、中型犬なら2~3個、大型犬なら4~5個程度であれば、食べ過ぎとはなりません。
個体差があるので初めて与える際は半分~1個を与え、その日は注意深く様子を見ましょう。吐き戻しや下痢などの症状がある場合は体質に合っていない可能性があります。大切なことは愛犬の適量を把握することです。
まとめ
氷を愛犬にあげること自体は決して悪いことではないのですが、体調不良や氷食症などのリスクがあることも理解しておく必要があります。
暑さ対策は氷だけに頼らず、水分補給や室温調整などをしっかり行いましょう。氷=水分摂取ではありませんので、いつでも飲めるように新鮮で十分な量のお水を用意してあげることが基本です。愛犬と一緒に暑い夏を元気に乗り切りましょうね。
(獣医師監修:寺脇寛子)