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【体験記】同じ特別支援学級でも違いが!?小4自閉症息子、転校で大きく変わった「学びのかたち」

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【体験記】同じ特別支援学級でも違いが!?小4自閉症息子、転校で大きく変わった「学びのかたち」

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

交流学級で授業を受けることがあった転校前

長男けんとは、3歳のときにASD(自閉スペクトラム症)の診断を受け、現在は小学4年生。構音障害があり、集団行動が苦手、数字が大好きな男の子です。小学4年の春、夫の転勤に伴い転校しました。

転校前の特別支援学級は、情緒クラスと知的クラスに分かれており、情緒クラスでは交流学級と同じ学習内容・スピードで授業が行われていました。そして知的クラスでは、それぞれのお子さんのペースに合わせた学習が進められていました。

けんとは情緒クラスに在籍しており、国語と算数の授業は特別支援学級で、理科・社会・体育などは交流学級で授業を受けていたようです。交流学級での授業の際には、担任の先生またはサポートの先生が付き添ってくださいました。

けんとは感覚過敏があり、大きな音が苦手です。そのため、音楽の授業はその日の体調や内容に応じて、交流学級または特別支援学級のどちらに参加するかを選ぶこともあったようです。

特別支援学級の在籍人数が少なく、サポートの先生がいたこともあり、年度によって多少の違いはありましたが、交流学級と行ったりきたりしながらも、一人ひとりの特性に合わせた学びを比較的しやすい環境だったように感じます。

交流学級での学習はなくなった転校後

「新しい学校ではどんな学びをするのだろう」とドキドキしながら転校した私たち。

新しい小学校はマンモス校で、特別支援学級にも多くの児童が在籍していました。基本的には特別支援学級で学習します。交流学級で授業を受けるには「立ち歩かないこと」「授業のペースを乱さないこと」「時間になったら自分で教室を行き来すること」など、いくつかのルールがあります。

けんとは学ぶことが大好きで、興味のある授業には集中して取り組みますが、気になることがあると衝動的に動いてしまったり、予定の変更に戸惑ったりすることもあります。そのため、現状では交流学級での学習に参加する機会はほとんどありません。

新しい学校の特別支援学級は、情緒クラスと知的クラスが一緒になっていて、国語や算数は個々のペースに合わせたプリント学習が中心です。図工の授業が多く、指先を使う活動を重視し、体育とは別に体を動かす「トレーニング」の時間もあります。さらに、休日の出来事を発表する授業もあり、転校前にはなかった新しい学びがあります。社会や理科の授業は少なく、ルールを守れるお子さんは交流学級で学習することもあるようです。

同じ「特別支援学級」でも、学校や地域によって支援の形が大きく違っていたので、けんとだけでなく私自身も最初は戸惑いました。

学習の理解度は?不安に思い相談……

プリント学習中心の授業を見て、「交流学級のペースと同じ内容を、同じスピードで理解できているのだろうか?」と、ふと不安になりました。

特に、わが家は転勤族です。いつ転校するかは正直分かりません。もし、単元ごとの勉強を理解していないまま転校することになったら、勉強についていけなかったり、やり逃している範囲があったりするのではないかと心配になりました。

そこで春の懇談の時に、思い切って担任の先生に相談してみました。すると、「けんとくんの場合は、教科書とプリント学習を中心に進めながら、交流学級と同じ単元ごとのテストを受けましょう」と提案してくださいました。テストを通して理解度を確認しながら、学習を進めてくださるとのこと。

「その子のペースで学ぶ」というのは、人数が多いほどとても難しい問題だと思います。新しい学校の特別支援学級には多くの子どもたちが在籍している中で、1人ひとりに合わせた学び方を考えてくださる先生の対応に、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

新たな学びで感じた成長 そしてこれから……

転校当初のけんとは新しい環境に慣れず、落ち着かない様子もありましたが、2学期に入り穏やかに過ごせる時間が増えてきました。衝動的に行動してしまう場面もありますが、「行動する前に先生に確認する」という目標を、けんとと先生で共有し取り組むうちに、少しずつできることも増えているようです。

トレーニングの授業で筋力もつき、引っ越ししてきた当初は難しかった、よく行く公園のアスレチック遊具を、今では難なくこなせるようになり、身体の成長を感じます。

休日の出来事を発表する授業を通して、「伝える・答える・聞く」といったやりとりが、以前よりできるようになってきているからなのか、コミュニケーション面でも成長が見られます。

心配していた学習面も、単元ごとのテストを通して理解度を確認しながら、交流学級と同じペースで学びを進められているようです。

転校前と今の学校にはそれぞれ良さや課題があるのかもしれませんし、お子さんによって合う・合わないはあるのかもしれません。けんとは自分なりに新しい環境を受け入れ、ゆっくりですが確かな成長を見せてくれています。

これから高学年に向かう中で、学校という小さな社会で何を感じ、どう学んでいくのか……正直不安なことはたくさんありますが、その時々のけんとに合った学び方を探しながら温かく見守っていきたいと思います。

執筆/ゆきみ

(監修:初川先生より)
けんとくんの在籍する特別支援学級について転校前後での違いをシェアしてくださりありがとうございます。自治体により、また地域や在籍するお子さんの数によっても、特別支援学級の特色や大事にしていることは違いますね。どれがいい、どれがダメというものでもなく、その地域で、子どもたちにどういった学びや経験ができることを重視するかの違いなのだと感じます。けんとくんはASD(自閉スペクトラム症)があり、特性としても変化へ対応することはなかなか大変なのではと想像しますが、転校という環境ががらりと変わる経験をよくぞ乗り越え、徐々に順応し、そして筋力がついたり、スピーチできるようになったりと成長が見られるようで何よりです。転勤族とのことで、今後もまたそうした変化に見舞われるときもあるかと思いますが、「この間も、夏ごろにはだんだん慣れてきたよね」といった今回の経験が、次回の引っ越しでの心の支えになると思います。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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