「安定なのに不満」――正社員の半数が現職に不満、見えてきた“働く満足”の条件とは|求人ボックス 「仕事と暮らしの実態白書2025」
景気回復や賃上げの動きが見られる一方で、「今の仕事に満足していますか?」という問いに自信を持って「はい」と答えられる人は多くない。
月間1,200万人が利用する求人情報の一括検索サービス【求人ボックス】では、全国の働く人を対象に「仕事と暮らしの実態調査」を実施。本調査では、 働く人々の職場満足度や仕事選びの動機、今後の働き方への意識 を多角的に分析。
結果から見えてきたのは、 「安定」よりも「納得感」や「自分らしさ」を重視する価値観の広がり だった。
本稿では、データから読み解く“働く満足”の構造と、今後のキャリア選択のヒントを探る。
正社員ほど“現職に不満”を感じている
現在働いている人の「職場・仕事に対する満足度」を見ると、「不満」(42.3%)が最多となった。
次いで「どちらでもない」(32.1%)、「やや満足」(19.0%)、「満足」(6.7%)と続き、「やや満足・満足」を合わせた“満足層”は25.7%。不満層を下回る結果となった。
雇用形態別に見ると、 正社員は「不満」が52.2% と半数を占め、「満足層」(21.2%)を大きく上回った。
一方、アルバイト・パートでは「満足層」が32.4%で「不満」(30.8%)をやや上回り、非正規雇用層の方が相対的に満足度が高い傾向が見られた。
自ら柔軟な働き方を選択している点や、仕事に対する期待値の差が、満足度の違いを生んでいる可能性がある。
フリーランス・個人事業主では「不満」が46.2%と高く、自由度の高さと引き換えに、収入の不安定さや社会保障の不足といった構造的リスクが影響していると考えられる。
年代が上がるほど「満足度」は低下傾向
年代別に見ると、「満足層」は若年層ほど高く、年齢が上がるにつれて低下する傾向が見られた。
「満足層」が最も多いのは「20〜24歳」(43.6%)、次いで「25〜29歳」(34.2%)。
一方で 「45〜54歳」では49.6%が「不満」 と回答し、ほぼ半数に達している。
この結果から、「生活のために仕事を続けているが、満足ではない」という “惰性型労働” の傾向が見て取れる。
また、「35〜44歳」では「満足層」(19.3%)が全世代の中で最低、「どちらでもない」(36.5%)は高い傾向にあり、 “あきらめの中間層” が形成されていることも特徴的だ。
管理職やリーダー職に差しかかるこの世代は、 キャリアの中盤で成長の壁に直面している層 とも言える。
働く満足度を高める主要因は“仕事内容・働きやすさ・人”
「職場・仕事のどの点に満足しているか」を見ると、「仕事内容・やりがい」(316票)、「働きやすさ(リモート・柔軟性)」(280票)、「人間関係・社風」(259票)が上位を占めた。
職場・仕事の満足度別で見ると、「満足層」で、最も多い回答が「仕事内容・やりがい」。
仕事そのものへの納得感や自己成長の実感が、“働く満足”のベースとなっている ことが分かる。
さらに、「人間関係・社風」「働きやすさ(リモート・柔軟性)」が続き、 心理的安全性と快適な職場環境が満足度を支えている ことがうかがえる。
一方で「福利厚生」は相対的に低く、 “日々の働きやすさ”や“人との関係性”が満足感を左右 していることが明らかになった。
不満層では“人・待遇・やりがい”が三大課題
「職場・仕事のどの点に不満を感じているか」では、「給与・待遇」(476票)が群を抜いて1位だった。次いで、「人間関係・社風」(309票)、「仕事内容・やりがい」(279票)が上位に挙がった。
職場・仕事の満足度別で見ると、どの層でも「給与・待遇」が最も多く挙げられており、給与満足層にも共通して存在する 普遍的課題 となっている。
また、「人間関係・社風」は「満足」(7.3%)から「不満」(21.3%)へと3倍に増加。
同様に、「仕事内容・やりがい」も「満足」(15.9%)から「不満」(18.1%)へ上昇しており、 人間関係とやりがいの欠如が不満層の離職リスクを高めている と言える。
満足層は「成長・評価」など 自己実現面 に課題を感じる一方、不満層は「待遇・人間関係・やりがい」といった 基本的な労働環境環境面 で不満を抱いている。
つまり、 “満足度が高い=不満がない”ではなく、働く人の関心や問題意識がレベルごとに変化している ことが読み取れる。
「今の仕事を選んだ理由」に見る“満足の分岐点”
「今の仕事を選んだ理由」では、「やりたい仕事内容・専門分野だったから」(260票)が最も多く、次いで「勤務地・リモート可など条件が合っていた」(236票)、「スキル・資格を活かせる」(187票)が続いた。
一方、「給与・報酬」(129票)や「成長・キャリアアップ」(62票)、「企業理念・ビジョンへの共感」(18票)は低く、5人に1人近くが「特に理由はない/たまたま採用された」と回答している。
職場・仕事の満足度別で見ると、満足層は、「やりたい仕事」「勤務地条件」「ワークライフバランス」など、 自分の価値観に基づいて仕事を選んでいる傾向 が強く、また「スキルを活かせる」「人間関係に魅力を感じた」など、“自己理解”と“環境適合”を意識した選択が特徴的。
反対に、不満層では 「特に理由はない」 が顕著に高く、「仕事内容」や「ワークライフバランス」で選んだ割合は満足層より低い。不満層ほど“選んだ”より“選ばれた”傾向が見られる。
つまり、「今の仕事に満足している人」は、単に待遇や条件が良いからではなく、 自分の希望に沿った職場選びができたかどうかが満足度を大きく左右する ということが分かる。
近い将来の働き方:「今と同じ」を望む人は1割未満
今後3年以内に転職・職場を変えることを考えている人は、全体の8割にのぼった。
現職に「不満」がある人の約95%が転職を検討 しており、満足度が低いほど転職意向が高かった。
3年後の働き方としては、「定年を意識せず長く緩やかに働きたい」(194票)、「フルタイム勤務」(172票)が多く、続いて「短時間・短日数勤務」「フルリモート勤務」「家庭・子育て・介護との両立」などが上位に挙がった。
年代別に見ると、世代ごとに特徴的な傾向が浮かび上がった。
まず、「55〜64歳」では「定年を意識せず長く緩やかに働きたい」(26.0%)が最も多く、「45〜54歳」(17.2%)から上の世代で顕著に増加する傾向が見られた。
この層では、 “無理をせず社会とつながり続けたい”という現実的な働き方志向 が中心となっている。
中堅世代では、「家庭・子育て・介護と両立できる柔軟な働き方」を望む割合が高い。
特に「30〜34歳」(14.2%)で最も多く、前後の世代でも同様の傾向が見られた。
「短時間勤務」や「フルリモート勤務」も上位に挙がっており、 ライフイベントとキャリア形成の両立 を重視し、“効率性×柔軟性”のバランスを求める姿勢がうかがえる。
一方で、「35〜44歳」で「フリーランス」(9.0%)や「起業」(4.3%)といった項目が高まることから、 キャリアの“第二フェーズ”に向けた自立・独立志向 も存在する。
若年層では、「フルリモート勤務」(約15%)が最も多く、「ノマド型」「ハイブリッド型」も一定数を占めた。
この層では、「どこでも働ける」柔軟な環境がモチベーションと直結しており、 “働く場所=自由度”が満足度を左右する時代 が到来していることを示している。
転職意向別で見ると、転職を考えていない層では「今と変わらない働き方を続けたい」(27.3%)が突出している。
対して転職志向層では、 柔軟性やライフバランスを重視する働き方 が目立つ。
結果として、「今と変わらない働き方を望む」と答えた人は全体の1割に満たず、多くの人が何らかの形で “今と違う働き方” を望んでいることが分かった。
次に選ぶ職場で最も重視されるのは「報酬」──仕事内容・働きやすさも依然上位
「次の仕事や会社を選ぶ際に重視する点」については、 「給与・賞与など報酬が良い」 (521票)が最多で、他の項目を大きく引き離した。「今の仕事を選んだ理由」では5位にとどまっていた一方で、「現職で不満を感じる点」では1位となっており、 報酬面への意識の高まり が明確に表れている。
2位には「やりたい仕事内容・専門分野」(358票)、3位に「勤務時間・ワークライフバランスの条件が良い」(267票)が続いた。報酬だけでなく、自分の専門性を発揮できる環境や、生活と仕事の両立を意識した働き方を求める意識も高い。
また、「スキル・資格を活かせる」(233票)、「福利厚生・休暇制度が充実している」(228票)、「働く場所(勤務地・リモート可など)の条件が合っている」(220票)など、“自分らしい働き方を選びたい”という個人最適志向が顕著に見られた。
年代別に見ると、 「給与・賞与など報酬が良い」 はすべての世代で最も多いものの、若年層ほど割合が低く、高年層ほど比率が高い傾向が見られた。特に「45〜54歳」(25.6%)、「35〜44歳」(24.5%)では他項目を大きく上回り、 経済的安定を軸にした職業選択志向 が際立つ。
一方、若年層では 「やりたい仕事内容・専門分野」 が高く、「20〜24歳」(20.1%)は1位となった。キャリアの初期段階においては、 報酬よりも“自己実現”や“成長実感”を優先する姿勢 が明確である。
また、「勤務時間・ワークライフバランス」や「勤務地・リモート可」など 働き方の柔軟性を重視する回答 は30〜40代で高く、 「仕事と生活の両立」 を求める層の厚みが見て取れる。特に「35〜44歳」では「ワークライフバランス」(14.0%)、「福利厚生」(12.0%)が相対的に高く、家庭・子育て・キャリアのバランスを意識した選択が特徴的だ。
さらに、 「成長・キャリアアップの機会」 を挙げる割合は30代前半で最も高く(8.8%)、その後年齢とともに減少傾向にある。これは、キャリアの中盤に差しかかる世代が、スキルの拡張や次のステップへの移行を意識していることを示唆している。
総じて、 年齢が上がるほど安定・待遇志向が強まり、若年層ほど自己実現・成長志向が際立つ という構図が浮かび上がった。働く価値観は一律ではなく、ライフステージごとに「仕事を選ぶ軸」が明確に変化していることがわかる。
「働く満足」と「キャリアの選択」が再定義される時代へ
今回の調査から見えてきたのは、「安定して働く」から「納得して働く」への価値転換だ。
正社員は安定を得ながらも不満が多く、非正規やフリーランスは自由度の高さが満足に直結している。満足度を左右するのは「仕事内容」「人間関係」「働きやすさ」であり、給与や福利厚生よりも、心理的安全性や自己成長の実感が幸福度を決めている。
「給与・待遇」や「人間関係」への不満は依然として強く、報酬格差や評価不信が離職の要因となっている。
また、満足層ほど「自ら選んだ仕事」に就いており、成長や働きやすさに価値を見出している一方、不満層は“選択の余地がなかった”経験や、“閉塞感の中で働く現実”に直面している。
世代別には、シニアは「長く穏やかに働きたい」、中堅は「両立」、若手は「自由と柔軟性」を重視しており、働き方の価値観は多様化している。
働く人々は今、より自分らしく、柔軟で納得感のあるキャリアを求めて動き出している。
“働く満足”は、与えられるものではなく、自ら選び取る時代に入った。
「仕事と暮らしの実態白書2025」概要
■調査主体:株式会社カカクコム
■調査対象:求人ボックス会員のうち、「正社員」に関する検索履歴がある人に調査を実施。現在、「正社員」「契約社員」「派遣社員」「パート・アルバイト」として働く20歳〜64歳の男女829名の回答を抽出。
■調査方法:インターネット調査
■調査期間:2025年10月1日(水)~10月19日(日)
※構成比(%)、差分(pt)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合や、少数第1位までの計算とは数値が異なる場合があります。
