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え、ちょっと怖い…! 白塗りで虚空を見つめるスーパースター「宮古島まもる君」に出会った日

ロケットニュース24

遅めの夏休み、筆者は沖縄県宮古島市をドライブしていた。天気はあいにくだったが、紅葉の知らせも聞こえる本州とは段違いの温暖な気候。道端にわさわさと茂る木々はジャングルのようで、非日常のバカンス気分を盛り上げる。そんなときに「彼」は現れた。

全国には「ご当地ヒーロー」や「ゆるキャラ」のような地域密着キャラクターがたくさんいるけれど、彼ほどインパクトのある人を見たことがない。白塗りの肌に、真っ赤な唇、見開かれた瞳……一度見たら忘れられない強烈なビジュアルにもかかわらず、シーサーよりもジンベイザメよりも人気を誇るスーパースターなのだ。

・あれ、この道さっきも通ったっけ?

何か月も前からオープンカーのレンタルを予約していたのに雨に降られた。「こんなことなら一番安い軽自動車クラスにしときゃよかった……」と嘆きながらも、南国ムード満点の県道をぶいぶい言わせる筆者の前に現れた一体の人形。

最初は「ああ、よくある交通安全人形か」と思った。実物の人間と同じくらいの等身大ボディに、警察官の衣装をまとっている。台座には「ズミ」と書かれているが、「交通安全対策済み」って意味だろうか?

棒立ちの姿勢と、どこを見ているのかわからない視線がちょっと怖い。決してリアル系の人形ではないのだが、なんとなく魂を感じる迫力がある。夜中には会いたくないタイプだ。

まぁ、パトカーに見えるだまし絵とか、警官マネキンとか全国にあるしな。滋賀の「とび太くん」こと「飛び出し坊や」も有名だ。というわけで、筆者はその場を立ち去った。

あれ、またいる!? デジャヴュ? いくら走っても同じところに戻ってきてしまう『世にも奇妙な物語』の神回「峠の茶屋」!?

っていうか島中にいる……!! 一体一体、微妙に表情が違うがやけに顔色が青白いことと、棒立ちなことは共通している。誰なの、この人ぉぉぉぉ!

あまつさえ、お土産屋さんでは棚を2台も3台も占拠して、ずらりと顔が並んでいる。それも特定の店舗じゃなく、行く先々に専用コーナーが設けられているのだ。

お菓子、お酒、キーホルダー、布小物、ステッカー、アパレル、文房具……なんならシーサーグッズよりも多い(冨樫調べ)といっても過言ではない。

・現地では知らぬ人はない「宮古島まもる君」

筆者は有力な情報をつかんだ。「本体」ともいえる人形が、宮古島警察署にいるらしい。まさか旅先で警察署に来ることになるとは思わなかった。別に悪いことしてないけどちょっとドキドキするな。

彼の名は宮古島まもる君! 宮古地区交通安全協会により設置され、全20体が島内の安全を守っているという。

隣にいるのは妹の宮古島まる子ちゃん。ヘルメットがかっこよく、表情もキリリとして兄よりも有能そうに見える。しっかり者の妹キャラと見た。

二人は市長から住民票を交付された、れっきとした宮古島市民だ。この住民票、200円で買えるらしい。

「島中にいる」と思ったのは間違いで、これまで筆者が出会ってきたのは兄弟たち。まもる君は一人しかいない。最初に出会ったのがすすむ君(たぶん)で、あとはこうじ君、ひとし君、まさお君か? いや違う、きよし君? あつし君?

それぞれ人事異動があったり昇進したり行方不明歴があったりと波瀾万丈の人生だ。福島県「リカちゃんキャッスル」で見たリカちゃんの家系図を思い出す。

リカちゃんはフランス貴族の血を引く高貴な生まれで、生き別れのお姉さんがいるなど、なかなか複雑な家族背景をもつのだ。タカラトミーのオープンファクトリーである同館は、自分が遊んだ歴代ハウスを発見できたり、オリジナルリカちゃんをコーディネートできたり、かなり楽しいのでオススメ。

……話がずれたが、宮古島まもる君は「近年のゆるキャラブームにのりました」みたいな生半可なキャリアではない。歴史は1990年代にまでさかのぼる。最初は数体の人形から始まったらしいが、手づくりのペイントによる独特の表情がじわじわと人気に。

後に歌がリリースされるわ、キャラクターグッズが展開されるわ、今では島のシンボルとなっている。マップを見ながらコンプリートを目指すのが、島内観光の定番になっているとかいないとか。

・買ったとも

ご当地マグネットやミニチュア土産収集が趣味の筆者。島の名所と一緒にまもる君が刻まれたレリーフは、か・な・りお気に入りだと言わざるを得ない。最初は不気味だと思ったが、何度も見ているうちになんか好きになっちゃう。これが心理学でいうザイオンス効果(単純接触効果)……!

お菓子もめちゃくちゃたくさんあったのだが、筆者はナッツを買った。酒のつまみ系かと思いきや、黒糖味の甘いおやつだった。さすが交通安全人形、職務に抜かりはない。

勝手に漢字変換していた「ずみ」とは、宮古島の方言で「いいね!」「最高!」という意味らしい。帰宅後、飼い猫の顔を見ては「ずみぃ!」と叫ぶマイブームがしばらく筆者宅に訪れていた。

執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

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