日本は<小型サンショウウオ>の聖地! 日本の水辺・湿地でいま起きていることとは?
日本はサンショウウオの聖地。
日本にはオオサンショウウオを除き、2018年に31種類が報告されていましたが、2025年には50種類まで増加しています。
一方、生存できる環境が年々減少してしまい、かなりの種が絶滅の危機に瀕する状況にあります。私たちにできることはあるのでしょうか?
日本にサンショウウオが多い理由
日本は島国であるうえ、多くの山々や水系が存在するため、他の場所との隔離が起こりやすかったと考えられます。
サンショウウオは手足が短く、歩いたり泳いだりすることが苦手なため、他の水系に移動することは難しく、それぞれの場所で独自の進化を遂げてきたのでしょう。
さらに島国であるが故、日本固有のサンショウウオもたくさん生息しています。
サンショウウオはどんな生き物
ずんぐりむっくりの愛くるしい姿で、見るものを虜にするサンショウウオは水族館でも人気です。
サンショウウオ科には、キタサンショウウオ属(Salamandrella)、サンショウウオ属(Hynobiusi)、ハコネサンショウウオ属(Onychodactylus)の3つの属があります。なお、オオサンショウウオはオオサンショウウオ科オオサンショウウオ属(Andrias)なので別種です。
サンショウウオは両生類に分類され、大人になっても長い尾を持つので有尾目(ゆうびもく)がという目に分類されるイモリの仲間。カエルは大人になると尻尾がなくなるので、無尾目に分類されます。
サンショウウオは全国の水辺周辺に生息し、ミミズや昆虫をエサにする10センチ前後の小さな生きもの。沢などの水の流れがある場所で産卵するものを流水性サンショウウオ、水の流れがほとんどない場所で産卵するものを止水性サンショウウオと呼びます。
手足の長さや斑点の有無、卵嚢の形状などで分類される
どのサンショウウオも見た目がよく似ているので、手足の長さや斑点の有無、卵嚢(らんのう)の形状などで分類されてきました。
実は種類によって卵嚢の形はかなり違うため、分かりやすい分類方法といえます。
サンショウウオの種類がどんどん増えている!
現在、世界に生息するサンショウウオ科に分類される小型サンショウウオ類は約100種類。そのうち日本に生息する小型サンショウウオは50種類とされています。
研究により種数はどんどん増えており、2010年代に入ってからはDNA分析方法の進歩などによってこれまで同種と思われていたものが別種とされてきています。
2018年の報告では日本に生息する小型サンショウウオは31種とされていましたが、2025年4月現在では50種類まで増加しています。
カスミサンショウウオが9種類に分けられる
特にすごかったのは、2019年にカスミサンショウウオが9種類(見解の違いもあり10種とも考えられるそう)にも分けられたことです。
また、ハコネサンショウウオも7種類に分類されています。
これらのサンショウウオについては、これまで広域に分布する普通種であり、地域性の変異による小さな違いがあるだけと考えられていました。しかし、ミトコンドリアDNA分析などの最新研究や長年のフィールド研究の蓄積から、実は地域限定の別種であったことが明らかとなったのです。
そのほか、高知県土佐清水市ではオオイタサンショウウオと思われていたものが新種のトサシミズサンショウウオだったり、福島県ではトウキョウサンショウウオがイワキサンショウウオだったりと、枚挙にいとまがありません。
身体にある斑点の有無や斑点の微妙な色の違い、卵が入っている卵嚢(らんのう)の形状の違いなど、フィールドではいくつかの違いが知られていたのですが、まさか新種だとは思わなかったのでしょう。
サンショウウオはプロでも見分けが難しいのです。これらの成果は、本当に研究者の情熱が生んだ奇跡といえますね。
サンショウウオの絶滅危惧種が増えている
サンショウウオは適度に整備された水辺付近にすむ両生類なので、このような水場が減少すると生息数が減ってしまいます。また、温暖化による水温上昇や水場の減少などの影響も近年著しいそうです。
日本では古くから米栽培が行われており、水田や水路の管理が適切に行われていたので、サンショウウオも多く生息していました。しかし、気温上昇、農薬の使用や水質汚染、水田の荒廃、外来生物の影響などにより、生息環境が一気に悪化したため、多くの固有種が絶滅の危機に瀕するようになったのです。
オオサンショウウオを含めず、45種類ものサンショウウオが複数の地域で絶滅危惧種(CR~NT)に指定されています。
これらのうち「絶滅危惧の恐れが高いもの(CR)」に指定されているものは、「アベサンショウウオ」「アマクササンショウウオ」「ミカワサンショウウオ」「トサシミズサンショウウオ」「ツクバハコネサンショウウオ」が挙げられます。
サンショウウオに会える場所
サンショウウオは山深い場所の湿地や水辺だけでなく山間部の水田付近にも生息していますが、なかなか出会うことはできません。これは、体長が10センチ程度と小さいうえに体色が保護色となっていることや警戒心が強いためです。
そのため、サンショウウオを見るなら、近くの水族館などで観察するのがおすすめ! 山に行って、ハチやヒル、マダニ、毒蛇などに襲われると命の危険があります。
アクアマリンふくしま、サンシャイン水族館、アクア・トトぎふ、びわこベース、赤目滝水族館、京都水族館、四国水族館、海響館など、淡水系の生き物を飼育している水族館などで展示されています。なお、サンショウウオの展示については、展示が終了する場合もあるので、あらかじめ問い合わせましょう。
筆者のおすすめは、高知にある「和の森わんぱーくこうちアニマルランド」。
こちらは入場無料の動物園ですが、高知県土佐清水市の天然記念物に指定されている「トサシミズサンショウウオ」を展示しています。また、色々なかわいい動物たちも飼育展示されているので、家族連れにはぴったりのスポットですよ!
サンショウウオを守ろう!
日本固有のサンショウウオのほとんどが絶滅の危機に瀕しています。そのため、サンショウウオを採取したり、殺傷したりすることは絶対にやめましょう。
また、水を汚したり、不法投棄をしたりすることは生育環境の破壊につながってしまいます。
近年、全国的に様々な不法投棄やゴミのポイ捨てが水質汚染を引き起こしています。サンショウウオに限らず、水辺の生き物たちの生息場所を維持するために、水場を守る保全活動が全国的に広がることを願います。
環境省が発行する『止水性サンショウウオ類保全の手引き』には、どのようにサンショウウオを守っていくべきかが書かれており、参考になります。
水辺で遊ぶときは、「ゴミを捨てない、水辺は汚さない」を忘れず、小さな生き物にも配慮して楽しみましょう。
(サカナトライター:額田善之)
参考文献
日本爬虫類両生類学会-日本産爬虫類両生類標準和名リスト2025年4月28日版