「プラダ」が「ヴェルサーチェ」、ZOZOは「LYST」 動き出したラグジュアリーM&A戦線 2025年上半期のファッション業界M&Aを振り返る
2025年上半期、ファッション業界では構造改革や新規事業への参入を目的とした企業買収(M&A)が相次いだ。各社の戦略的な動きが、業界の再編と成長シナリオを浮き彫りにしている。
ZOZOが英「LYST」買収 海外展開に再挑戦
最も注目を集めたのは、ZOZOによるファッション検索プラットフォーム「LYST(リスト)」の買収だ。ZOZOは4月9日、英国に設立した子会社を通じて、LYST社(LYST LTD)の全株式を取得。買収額は約231億円(当時の為替レート換算)に上る。
ZOZOは過去に中国市場への進出を図ったが、現在は撤退しており、海外展開は限定的な状況にある。今回の買収は、グローバル市場への再進出に向けた足がかりと見られる。今後は、LYSTの既存ネットワークを活用し、日本ブランドの海外進出支援にもつなげたい考えだ。
ジェイドグループは『サンキュ!』買収でメディア事業へ進出
靴やアパレルのECを展開するジェイドグループも、新規分野への挑戦を進めている。3月には、ベネッセコーポレーションが発行する生活情報誌『サンキュ!』を買収し、新会社のARIGATOを設立。これにより、インターネット中心の事業モデルから、メディア・エンタメ領域への進出を本格化させる。
『サンキュ!』は出版不況下にありながら、毎号約9万部を発行。主に30〜50代の主婦層に支持されており、2023年度の売上高は約9億9700万円を記録している。
ANAPは森川マサノリ氏の「ベイシックス」を買収
アパレルブランド「アナップ(ANAP)」を手がけるANAPホールディングスは、独自色のある買収を実施。2021年に森川マサノリ氏が立ち上げたブランド「ベイシックス(BASICKS)」を、AtoZ社から1億5000万円で取得した。
森川氏は、活動休止中の「クリスチャンダダ(CHRISTIAN DADA)」の元デザイナーとしても知られ、「ベイシックス」はアート性の高いストリートウェアとして、一部の感度の高い層から注目を集めている。
個性的なブランドの買収としては、2月にYutoriがスタイリストの熊谷隆志のブランド「GDC(ジーディーシー)」を買収している。運営はYutoriが新たに設立した新会社のGDC社が担う。Yutoriは今後も積極的なM&Aを実施していく方針だ。
プラダが「ヴェルサーチェ」買収 海外でも大型再編
海外でも大型M&Aが進行中だ。「プラダ(PRADA)」や「ミュウミュウ(MIU MIU)」を展開するプラダグループ(PRADA GROUP)は、カプリ・ホールディングス(Capri Holdings Limited)傘下の「ヴェルサーチェ(VERSACE)」を買収。買収額は約2000億円とされる。
2025年上半期のM&Aは、既存の事業構造にとどまらず、新たな市場や領域を見据えた動きが目立った。今後、買収各社がどのようにシナジーを発揮し、次なる成長戦略へつなげていくのか注目される。