野口五郎インタビュー「改めて野口五郎としての夢を考えた時、やっぱり歌が全てで、歌が僕の人生の課題でもあるんです」
デビュー55周年イヤーに突入した野口五郎が、billboard classicsに初登場。『billboard classics 野口五郎 PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2025 KEEP ON DREAMING』は、数々の名曲を世に送り出しただけではなく、ミュージカル『レ・ミゼラブル』の初代マリウス役をはじめ俳優、ギタリスト、研究者とマルチな活躍で、エンタメシーンの第一線を走り続けてきた野口が、フルオーケストラをバックに自身の人生を彩ってきた様々な歌で魅了する。オーケストラアレンジ・指揮の渡辺俊幸と共に6月5日東京文化会館大ホールを皮切りに、兵庫、愛知、札幌で、各地のオーケストラと共に豊かな音と歌を響かせる。本人にインタビューしコンサートへの意気込みを聞いた。
――野口さんのキャリアの中で、単独でのフルオーケストラは今回が初めてというのが意外でした。
2021年と22年に岩崎宏美さんと二人でのフルオーケストラコンサート(『プレミアムオーケストラコンサート~Eternal Voices~』)を行って、その時も今回お世話になる渡辺俊幸先生の指揮でした。今年2月には東京オペラシティで、NHK交響楽団のメンバー9人と僕のバンド5人という編成でコンサートをやらせていただきました(『GORO NOGUCHI CONCERT TOUR 2025 「THE SONGS ~通り過ぎた者たち~」~N響ソリストたちとの饗演~ with G’s BAND』)。今回、いよいよ満を持してと自分で言ってしまいますが(笑)、billboard classicsのステージ立たせていただきます。もうワクワクしかないです。
――フルオーケストラとの音を介しての“会話”が楽しみですね。
みなさんとの信頼関係が何より大切で、それはリハーサルの時から始まると思うので、リハーサルから拍手をもらえるくらい全力で向き合って、“息を合わせて”いきたい。全幅の信頼を置く渡辺先生の存在も心強いです。
――コンサートタイトルの『KEEP ON DREAMING』にはどんな思いが込められているのでしょうか?
改めて野口五郎としての夢ってなんだろうって考えた時、やっぱり歌が全てで、歌が僕の人生の課題でもあるんです。その歌を今回は生で鳴る音、デジタルでは感じることができない“豊かな音”に乗せて歌って、みなさんに“何か”を感じていただきたいです。オーケストラの皆さんの力をお借りして、ボーカリスト、ギタリストの野口五郎を表現したいです。
――オーケストラをバックに野口さんがギターを弾きまくっている姿が想像できますが、具体的にはどんな内容になりそうでしょうか?
渡辺先生とアレンジについて「この曲とこの曲をマッチアップさせてみましょう」とか、「僕が弾くギターとオーケストラがバトルしているようなアレンジも面白そう」とか、色々お話をさせていただいています。55周年なので、これまでの歌手人生の軌跡を辿るような内容になると思います。「私鉄沿線」や「甘い生活」といった僕の曲はもちろん、好きな映画音楽や洋楽のカバーも歌いたい、弾きたいと思っています。今回フルオーケストラと一緒にできるということで、僕の人生の中の大きな存在になっているミュージカル『レ・ミゼラブル』の曲達もたっぷりとお届けします。今回はレミゼといえばの「On My Own」をやるか、今まで歌ったことがない「夢やぶれて」に挑戦するか迷いました。「On My Own」を歌う自分は想像できたけど、ファンテーヌ、女性が歌う「夢やぶれて」を歌っている自分の姿を全く想像できなかった。だからあえて想像できないほうをせっかくの機会なので挑戦してみようと思いました。息が続くか心配ですけど…(笑)。
――野口さんは『レ・ミゼラブル』の日本版初演に、マリウス役で出演しましたが、やはり忘れられない時間と経験になっていますか?
あの作品と、何よりも演出家のジョン・ケアードとの出会いが本当に大きかった。色々なことを教えてもらって、当時自信を失いかけていた僕と、一方でちょっと自信過剰になっていたバランスが悪い僕がいて、それを変えてくれたのが彼でした。岩崎宏美ちゃんとのコンサートでは『レ・ミゼラブル』ソングを披露しているのですが、それが僕の糧になっていますが、そのコンサートにジョン・ケアード夫妻が観に来てくれて、感激しました。
――昨年10月には佐藤隆紀(LE VELVETS)さんのオーケストラコンサートのステージで、初代マリウス役を演じた野口さんと、『レ・ミゼラブル』の現ジャン・バルジャン役の佐藤さんとのコラボが実現し、話題になりました。
そうなんです、去年佐藤さんのコンサートにゲストで呼んでいただいて、39年前苦しみ抜いた「カフェソング」を歌わせていただいて感無量でした。その思いのまま、現在のジャン・バルジャン役を演じる佐藤さんと、初代マリウス役の僕が、時空を超えて「彼を帰して」を一緒に歌わせていただきました。ジャン・バルジャン=佐藤君を愛おしみながら、途中一音半転調して「彼を帰して」を歌えて、本当に幸せで、涙が出るほど愛おしい時間でした。今回のコンサートでも『レ・ミゼラブル』の曲達を大切に歌い、みなさんに届けたいと思っています。
――今回のコンサートは愛娘の文音さんもピアノで参加しています。
ピアニストとして成長してきた彼女と、音を一緒に響かせるのはとても楽しみです。彼女は音楽大学でクラシックを勉強してきて、でもジャズやポップスを始め色々な音楽に興味があるみたいなので、色々な音楽に触れて勉強し、吸収して欲しいです。
――娘さんとの共演ということも含めて、野口五郎という表現者の生き様を感じることができるコンサートになりそうですね。
お客さんにはオーケストラの素晴らしい音と、色々な野口五郎を楽しんでいただきと思っていますが、今できること、やりたいことを全てやらせていただき、僕自身もめいっぱい楽しみたいと思っています。僕がこれまで色々なことをやってきたのは、常にその先の自分が見たいという好奇心が強いからです。歌一本ではなく、映画もドラマもミュージカルも舞台も、コメディもやってきて、それは一か所に止まって横に広がっていくのではなく、常にその先の自分を見たいんです。振り返ってみると、常に先を知りたい人生だったなって思います。今回もこのコンサートを終えた先には何があるのか、それが楽しみですが、55周年を迎えて、個人的には最終章のスタートとして、今の僕の歌を是非聴いていただきたいと思っています。