高齢者の免許返納|メリット・デメリットや相談された際の介護職の対応方法についても解説!
高齢者の免許返納に悩むご家族…対応方法は?
本日のお悩み
デイサービスで働いています。利用者さんの娘さんから
「父に免許返納をしてほしいと伝えてみたが、足が不自由な母(デイサービス利用者)を買い物に連れていくには車が必要だと私のお願いを聞いてくれません。職員さんから声かけをしてみてもらえませんか。」
と言われました。
娘さんの気持ちもお父様の気持ちもわかるため、私も即答することができませんでした。
どのように声かけを行うべきかアドバイスをいただきたいです。
ご家族とご本人、両方の気持ちに寄り添いつつアドバイスをしましょう!
執筆者/専門家
羽吹 さゆり
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/7
高齢の方の免許返納の判断については、私も数多くのご家族様やご本人様から相談を受けてきました。暮らしの中での交通手段として車が必要かどうかには個人差があり、非常に悩むところだと思います。
さらに、勤務しているデイサービスのご利用者の方のご家族様からのご相談ということになると、ご利用者とご家族様のどちらとも近しく、娘さん側に加担しているように思われることは不本意ですよね。
ー免許返納のタイミングは個人の環境や気持ちによって差がある
免許返納に対しての世間の意識を見てみると、65~70歳前後で免許の自主返納を行う人が多いです。※
しかし、個々の生活環境も違いますし、心身機能の個人差もあるので、こちらだけでは判断しかねるかと思います。お父様はお母様の買い物の同伴で車が必要だとおっしゃっていますので、本人の気持ちよりお母様のためにという気持ちが強いかもしれませんし、逆に返納したくないというお父様の気持ちが先立っており、お母様の買い物を口実にしている可能性もあるかもしれません。
出典:警察庁交通局運転免許課警察庁交通局運転免許課
ーどちらの気持ちにも寄り添い、自身の意志で決定できるようにしましょう
そのため、まずは娘さん、そしてお父様の両者に寄り添い、返納に対する本当の気持ちを聞き出してみてはいかがでしょうか。そして、お父様とご家族様がご自身たちの意思によって自主返納できるようにアドバイスをすることが良いのではないでしょうか。
運転免許を返納するメリット・デメリットを伝えましょう!
ご利用者やお父様、ご家族に自分たちの意思で決定をしてもらうためには、返納に関する大切な情報を伝えていきましょう。
ここでいう大切な情報とは、運転免許を自主返納するメリットとデメリットです。
運転免許を自主返納するデメリット
まず、今回質問者さんは返納を推奨したいとお考えだと思いますので、返納した場合に考えられるデメリットからあえて紹介します。
・外出機会が減り生活が不便になる
・社会との繋がりが減ってしまう
これらのデメリットを理解したうえで、代替できる支援やサービスを伝えていくと、安心感をもって返納できるのではないでしょうか。
運転免許を自主返納するメリット
また、自主返納した時のメリットを伝えることも大切です。運転免許を返納することで考えられるメリットは以下の通りです。
・自動車事故の加害者となるリスクをなくせる
・自主返納支援制度を受けることができる
ー自主返納支援制度とは
自主返納支援制度は、免許証の自主返納により、高齢者が自身の車を利用しなくても生活ができるよう、公共交通機関の利用促進や、生活のサポートをすることを目的としています。
病院や買い物の足として免許証を手放したくない高齢者ドライバーも少なくありませんので、そのような高齢者ドライバーの交通手段を確保し、自主返納を促すことも背景にあります。
また、高齢者ドライバーの相次ぐ交通事故に対し、本人よりも家族が不安を感じる方が多いようです。日常的に運転していた高齢者ドライバーほど、家族が自主返納を説得しても応じないケースも少なくないと聞きますので、この制度を理解すると安心して自己決定を行ってくださりそうです。
ー自主返納に関する制度の認知はまだ低い
警察庁の調査において、「自主返納の特典を知らない」と回答した高齢者ドライバーは約6割いました。※
警視庁のホームページや地域のホームページでは、自主返納を行った際に受けられる各企業のサービスについて閲覧できるようになっています。これらを見ながら、自主返納に後ろ向きな方に伝えてみると喜ばれ、安心して決断いただけるようになるかもしれません。
出典:警察庁運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果
ー特典を受けるには「運転経歴証明書」が必要!
自主返納の特典を受けるには、「運転経歴証明書」の申請が必要になります。
運転経歴証明書は、免許証の返納手続きと同時に申請すると取得可能で、免許証代わりの身分証明書にも使うことができます。運転履歴証明書の申請には、証明写真(縦3cm×横2.4cm・撮影6ヵ月以内)と1000円程度の交付手数料が必要です。証明写真は警察署で申請する場合で、運転免許センターはその場で写真撮影が可能です。
返納手続きと別日に運転経歴証明書を申請する場合、住所と生年月日を確認できる住民票の写しや健康保険証などの書類が必要になります。運転経歴証明書が交付されない場合もあります。
例えば、自主返納後、または免許失効から5年以上経過すると、運転経歴証明書の交付は受けられなくなり、交通違反で免許取り消しになった場合は年数を問わず運転経歴証明書は交付されないので注意が必要です。この支援は原則65歳以上の高齢者の方が対象です。
ー実際に受けられるサービスの例
・路線バスやタクシーの乗車運賃割引、回数券交付
・宿泊施設や観光スポット、レジャー施設の割引
・デパートや小売店の販売価格割引
・人間ドックの割引
・墓石や仏壇の割引
・引っ越し費用の割引
・信用金庫や銀行の金利上乗せ
※特典等は都道府県によって異なりますので、ご確認ください
最後に:自主返納のメリットを伝え、自己決定を促しましょう!
ここまで説明してきたように、自主返納を行うことで、メリットや受けられる特典があるということがわかれば、自ら、自主返納を検討してくれるかもしれません。
また、免許の返納の方法がめんどくさそう、大変そうと考えている方もいらっしゃるかと思いますが、免許返納は、警察署か運転免許センターの受付で免許を返納することを伝え、「運転免許取り消し申請書」を記入し、 免許証とあわせて提出すれば返納完了となります。意外と簡単であるとわかれば、返却へのハードルも下がるのではないでしょうか。
運転免許を返納しても暮らしに困らない体制が整っているということを伝え、あくまでご本人、ご家族どちらにも寄り添った声かけができるよう心がけましょう。
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